「モヤモヤしたら要注意!」とはいっても、脳内の血管の話。日本で発見された病気で、別名「ウイリス動脈輪閉塞症」。過去に歌手の徳永英明が罹患して広く知れ渡るようになった脳血管障害だ。
【なぜか日本人に多発】
発症頻度は高いとはいえないが、欧米人に比べてアジア系の人に約10倍も多く、とくに日本人が圧倒的。2003年調査の患者数でみると10年前の倍増で推定7700人。年間約400人(10万人に3人)が新たに発症しているといわれる。
病名にも由来する一番の特徴は、「検査で脳血管撮影をすると、たばこの煙が立ち昇るようにモヤモヤとした細い血管像が映し出されるところ」と説明するのは、東京都済生会中央病院・脳神経外科の淺田英穂医長。
モヤモヤの原因は、首の両側を走る内頚動脈が脳の内部に向って行きつく先(ウイリス動脈輪)で狭窄や閉塞を起こすため、血流が悪くなり、その周辺にある本来は細いはずの毛細血管がいくつも拡張してしまうのだ。
【脳卒中の危険性!】
もし、この状態が見つかったなら、放置したままでは怖い。いずれ脳出血や脳梗塞を引き起こす危険性が高く、運が悪ければ死亡、助かっても後遺症が出る恐れがある。
ただ、「モヤモヤ病の発症ピークには5歳前後と30-40歳代があって、大人の半数例が突然、脳出血を起こし病院に運ばれて、はじめて発覚するケース。比較的時間に余裕のあるもう1つの『脳虚血型』の症状(チェックリスト)だけは見逃さないでもらいたい」。
普段、健診は受けてもMRAなどで脳血管撮影をする機会はそうめったにない。加えて厄介なのは、発症原因が不明で、どんな人に起こりやすいのか、予防手段がまったく分からないからだ。
【過呼吸で異変出現】
脳虚血型の症状とは、血液が脳に十分に行き渡らなくなるため一時的に現れる脳梗塞に似た症状。片側の手や足が突然動かなくなったり、ロレツが回らない、片目の視野が欠けるなど。だが、血流が戻れば症状も30分以内に治まってしまう。
典型的なのは、「アツアツのラーメンやうどんをフーフー息を吹きかけて食べているとき、風船を膨らますとき、笛やハーモニカを吹く、カラオケで歌いまくるなど、過呼吸運動すると症状が出やすい」と淺田医長。
脳梗塞と異なるのは、片マヒの側が左右代わって起きたり、朝方に強い頭痛や吐き気が起きて昼ごろまでには良くなる症状もあること。
いつも昼食は決まって“立ち食いそば”というなら、是非アツアツ・フーフーで「モヤモヤ」チェックだ。
【「モヤモヤ病」チェックリスト】
(1)片方の手や足がマヒする
(2)ロレツが回らない(話しづらい)
(3)片目の視野が欠ける
(4)手や足が勝手に動く
(5)朝起きて午前中に頭痛がする
(6)午前中だけ吐き気がある
(7)突然、意識を失うことがある
(8)ラーメンを食べるとき、息を幾度も吹きかけていると手や足が脱力する
(9)片マヒが30分以内に治まり、左右代わって現れる
(10)ケイレン発作を起こして倒れた
「1つでも該当すれば検査を受けよう。複数あれば可能性がある」
*東京都済生会中央病院・脳神経外科 淺田英穂医長作成