■アップル社も参入
ビジネスマンや若者が使いこなすスマートフォン。だが、コミュニケーションに不安があるお年寄りや障害がある人にも便利な道具になる。視覚、聴覚など様々な障害向けのアプリや接続機器が開発されている。
今月15日、東京・大手町でデンマークのジーエヌリサウンド社が米・アップル社と協力して開発した「補聴器」の発表会が開かれた。なぜ、アップル社が補聴器なのか。答えは同社のスマホ・iPhone(アイフォーン)にある。
「リサウンド・リンクス」(希望小売価格49万円・福祉用具のため消費税非課税)は、iPhoneで集めた外部の音を無線通信で、耳の補聴器に送信する商品だ。小型、軽量で、iPhoneで楽しむ音楽や映画の音もクリアになる。
ITジャーナリストの林信行さんは、「スマホの技術革新で注目されるのがヘルスケア分野。高齢や障害による不便を取り除く機器やアプリが登場している」と話す。
iPhoneのアプリ「iよむべえ」(アメディア、税込み3000円)は、スマホで撮影した印刷文の文字を読み上げる。視覚障害の人などが利用する。
■音声で要望伝える
「DropTalk」(HMDT、税込み1300円)は、会話が苦手な自閉症の人が、画像を選び、音声で気持ちや要望を伝えるiPhone用アプリ。五つの単語を続け、文章のように伝えられる。
発達障害や知的障害があり、待つのが苦手な人がいる。アンドロイドのスマホ向け「特別支援スマホアプリ」(富士通・無料)のタイマーは、残り時間を図形の面積の減少で示してくれる。
アンドロイド用とiPhone用があるアプリ「Check A Toilet」(NPO法人Check・無料)は、車いす用など多機能トイレ情報を5万件のデータベースから検索できる。
指で画面に触れるのが難しい人には、iPhoneに無線でつないだ簡単なスイッチで操作できる機器「できiPad。」(「できマウス。」プロジェクト、1万5800円・消費税非課税)がある。
■将来は義手も制御
音に敏感な発達障害の人は雑音が苦手。アプリの「ききとり上手」(グレース、無料版と有料版税込み3500円)をダウンロードしたiPhoneと市販の雑音を除くヘッドホンをつなげば、相手の声を明瞭に聞くことができる。
薬を飲む時間など、設定時間を言葉で教えるiPhone向けのアプリ「指伝話ぽっぽ」(オフィス結アジア、税込み500円)は、認知症のお年寄りの役に立ちそうだ。
一般に、福祉用の専用機器は大型で高価だが、スマホを活用した商品は価格が手頃で利用しやすい。林さんは「今後はスマホで制御する義手、義足も登場しそう」と話す。
IT機器の福祉利用に詳しい東京大学の中邑賢龍(なかむらけんりゅう)教授は、「障害のある人が、スマホを能力の一部として持ち歩けるようになれば」と期待する。