「最近、トイレが近くなったなぁ…」と思い当たる読者世代は多いのでは? 男性は加齢と共に前立腺肥大症になりやすく、その症状のひとつに頻尿がある。単なる寒さでトイレに行きたくなるのか、それとも病気が潜んでいるのか。その見極めについて専門医に話を聞いた。
■頻尿原因はさまざま
前立腺は膀胱(ぼうこう)の下にあるため、前立腺肥大症になると尿道をふさぎ、膀胱に残尿がたまりやすくなって頻尿になりやすい。一方、冷たい空気に触れたときには、腎臓が寒冷刺激を受けて尿量が増えやすいという。
東京厚生年金病院泌尿器科部長の赤倉功一郎医師=写真=が説明する。
「夜間頻尿の原因はいろいろあります。まず、尿は夜間に濃縮されて、本来は昼間よりも尿量が少なくなるのですが、加齢とともに夜間に出る抗利尿ホルモンの分泌が不十分になると、濃縮できずに多尿になる。また、加齢により膀胱のしなやかさも失われ、尿を貯める力が衰える。
さらに、眠りが浅いとちょっとした尿意でも、目覚めてトイレに行きたくなります。いちがいに前立腺肥大症だけが原因とはいえません」
赤倉医師が挙げた「前立腺肥大症チェック」(別項)で、8点以上の人は前立腺肥大症の可能性が高い。ただし、今の時期は先の理由に寒冷刺激が加わって夜間頻尿が起こりやすいという。
■夜間の尿量を計る
トイレが近くなったからといって、それがイコール前立腺肥大症とは限らない。
夜中に布団から出て、寒い廊下を裸足で歩いてトイレへ行くと、腎臓は寒冷刺激を受けて利尿作用が働いてしまう。布団に戻っても、たくさんの尿が作られ、またトイレに行きたくなって目覚めやすくなるそうだ。単なる寒さか、それとも前立腺肥大症か。その見極めが自分でも可能だ。
「夜間頻尿の人は、紙コップでご自身の夜間の尿量を計ってみてください。1回の尿量がコップの3分の1程度と少ないときには、前立腺肥大症が疑われます。
逆に、コップ1杯の色の薄い尿が出たときには、寝る前に水分の摂り過ぎや、夜間の寒冷刺激、あるいは、腎機能の低下が考えられます」(赤倉医師)
冬場の心筋梗塞や脳梗塞を防ごうと、血液をサラサラにするために、寝る前に1リットルほどの多量の水分を摂取する人がいる。夜間に尿は濃縮されずに薄い色の状態のまま、多量の尿となって出ることがあるそうだ。
「寝る前の水分補給は、コップ1杯の白湯にしましょう。お茶には利尿作用があり、冷たい飲み物では腎臓に寒冷刺激を与えてしまいます。飲み過ぎないように注意してください」と赤倉医師はアドバイスする。
■早期がんは無症状
頻尿で1回の尿量が少なく、常に残尿感が伴う場合は、前立腺肥大症が疑われる。逆に、水分をたくさん飲んでもいないのに、尿量が多くて色が薄いと、腎機能の低下の恐れもある。自己診断は禁物だ。
「頻尿が気になるときには、泌尿器科の専門医に診てもらいましょう。ただし、前立腺がんは早期の段階では無症状です。自覚症状はないので、50歳以上の方は、血液の腫瘍マーカー(PSA)検査を受けるようにしてください」(赤倉医師)
頻尿以外に血尿や痛みなどが生じたときも、早めに医療機関へ受診を。
■前立腺肥大症状チェックリスト
□尿をした後にまだ尿が残っている感じがある
□尿をしてから2時間以内にもう一度しなくてはならないことがあった
□尿をしている間に、尿が何度も途切れることがあった
□尿を我慢することが難しいことがあった
□尿の勢いが弱いことがあった
□尿をし始めるためにお腹に力を入れることがあった
□夜寝てから朝起きるまでに、何回も尿をするために起きた
※各項目でこの1カ月の状態を振り返り、「全くない」0点、「5回に1回の割合より少ない」1点、「2回に1回の割合より少ない」2点、「2回に1回の割合くらい」3点、「2回に1回の割合よりも多い」4点、「ほとんどいつも」5点とし、合計点が8点以上の人は前立腺肥大症の可能性が高い。