昔から聞く「知恵熱」という言葉。赤ちゃんに使う一方で、「珍しく勉強したから、知恵熱が出た」といったように、「頭を使いすぎ=発熱」という意味での使い方もよく耳にする。
そもそも「知恵熱」って何? ホントにあるの? 『ここ10年で、これだけ変わった! 最新医学常識99』(祥伝社黄金文庫)著者で、医療法人社団池谷医院院長の池谷敏郎先生に聞いた。
「『知恵熱』はもともと赤ちゃんに使われる言葉です。多くの子どもは、生まれて数カ月~1歳くらいの時期に、突発性発疹という感染症にかかり、高熱が出ます。この時期はお母さんの免疫が切れる頃で、赤ちゃんは生まれて初めての高熱を経験することになります。
そして、この頃から赤ちゃんにも知恵がついてくることから、突発性発疹による発熱を『知恵熱』と呼ぶようになったのです」
どうやら、赤ちゃんの知恵の発達と発熱の間には何ら関連性はない、というのが医学常識のようだ。
ましてや大人が熱を出しても頭が良くなるわけでもないし、頭を使い過ぎて熱が出ることもないようだ。
ところで、「インフルエンザなどによって高熱が続くと、脳細胞が死んで、頭が悪くなる」という不安を感じる人もいるけれど…。「高熱によって脳細胞が死ぬようなことはありません。細胞が死ぬほどの熱が出れば、頭がどうこうなる前に、人間そのものが死んでしまいます」
感染症で脳に障害を残す危険性があるのは、「高熱」ではなく、脳の中にウイルスや細菌が入って脳炎などを起こしてしまうケース。あるいは、発熱や解熱剤の使用がきっかけとなって長引くけいれんを起こしてしまうような場合だという。
「高熱時には体の免疫力は高まり、ウイルスなどの繁殖が食い止められています。このように、熱自体は体にとって必要なものなのです。ですから、むやみに解熱剤などを使用し、熱を下げてしまうことは、逆に感染症の治りを遅くしてしまうことになるのです」
発熱の役割は、病気を治すことであり、知恵をつけることではないのだ。