「ずっと元気でいたい」「今すぐ元気がほしい」あなたはどちらを優先した食生活をしていますか?
どちらも大切ですが、短期的な目線での対策ばかりしていると、老化を早めてしまうかもしれません。
そこで今回は、中医学士で漢方薬剤師の大久保愛先生が、健康を維持し、ずっと若々しくいられるための食薬習慣と、NG習慣を教えてくれます!
老化防止には長期的な目線での食事の見直しが必要
【カラダとメンタル整えます 愛先生の今週食べるとよい食材!】vol. 266
突然ですが、毎日“元気”に過ごすために行っていることはありますか?
この“元気”には、一時的に元気になるものであったり、未来の健康を考えて行うものだったりと方向性が異なるものがあると思います。とはいえ、みなさん無意識に自分が元気でいるために何かを行っているはずです。
たとえば、朝食は味噌汁と納豆ご飯にサラダで腸やタンパク質の摂取を意識したり、冷たいものより温かい飲み物を選ぶようにしたり、よく噛んで食べたり。
また、香りや色に特徴のあるファイトケミカルの多い野菜を摂る人も多いと思います。これは、長期的な目線での健康や若々しさを維持するための対策となりますよね。
一方で、目を覚ますために毎朝コーヒーを飲んだり、集中力がないときに甘いものを食べたり、日ごろのストレスを一気に発散するために友人たちとたくさん食べて飲むということもあると思います。
これは、短期的な目線でパフォーマンスを上げることにつながる対策となります。どちらも快適に生活していく上で必要なことだと思います。
ただ、ここで問題となるのが、短期的な目線に偏り、パフォーマンスを上げるための食事だけを毎日摂り続けることです。
短期的な目線、長期的な目線の両方から日々の食事内容を検討し、食事を選ぶことが、人生100年時代といわれる今、未来の自分の生活の質を低下させないためにできる大切なことだと思います。長期的な目線でみると、食習慣が体に与える影響は大きなものとなります。
ということで、今週は未来の自分のために、老化を促進させないための食薬習慣を紹介していきます。
今週は、老化促進の対策となる食薬習慣
過ごしやすい気候になりましたね。テラス席に座っていても寒くもなく暑くもなく、のんびりできるのがうれしいです。
日本の気候の中で、こんなに気持ちよく過ごしやすい時期は、ほんのわずかだと思います。梅雨入りするまでの心地よい毎日を健やかに過ごして楽しみたいですよね。
梅雨が明ければ、そのまま灼熱の夏が始まり、気温と湿度が落ち着き始めるのが9月後半の秋分の日以降。つらい気候は、3~4か月も続きます。
この時期は、今を楽しみつつ、体に負担の大きい梅雨・夏を乗り越えるための準備が必要です。食事では、中長期的な目線での健康管理が必要となります。
漢方医学では、気候の変化や年齢に伴う不調に負けない強い体を保つために『脾腎』を強化するとよいとしています。
また、『腎』の働きが低下すると老化が促進するといわれています。
『脾腎』を強化することは、揺らぎ多い毎日を元気に過ごし、若々しくいるために必要不可欠なケアとなります。また、『脾』のケアは胃腸の働きの負担を軽減することを意味しています。
ということで、これからの厳しい気候、そしてエイジングケアのためにも、今週は『脾腎』を強化する食薬がおすすめです。
今週食べるとよい食薬は、消化を助け、抗酸化力が高く、いつでも簡単に作ることのできる【大根おろしと薬味の小鉢】です。
そして逆にNG習慣は、【朝のコーヒー習慣】です。
カフェインで元気を前借りしてしまい、無理やり元気をだすのではなく、根本的に元気な状態を作り出す食事や睡眠、運動習慣の見直しをすることも頭の片隅に入れておきたいですね。
食薬ごはん【大根おろしと薬味の小鉢】
胃腸の疲れ、寝不足、老化などが気になるときには、薬味を組み合わせた食薬で対処していきましょう。『脾』を強化する大根おろしに、
『腎』を強化するミネラル豊富なシラス、抗酸化作用の高いブロッコリースプラウトなどを混ぜて、調子が悪い時のお助け小鉢にしてみてはいかがでしょうか。
<材料>
大根 5cm(おろす)
釜揚げシラス 大さじ4
ブロッコリースプラウト 4つまみ
ぽん酢・ネギ お好みで
<作り方>
材料をよく混ぜたら完成。
NG行動【朝のコーヒー習慣】
コーヒーは、朝からシャキッとさせてくれるカフェインと、エイジングケアにつながるクロロゲン酸などのポリフェノールが含まれているため、頼りになる飲料といえます。
ですが、朝は食欲も時間もないから、コーヒーだけ飲んで出かけるという習慣をお持ちのかたは注意が必要です。
空腹時にカフェインを摂ることは、いつも以上に消化器系統に負担をかけ、『脾』の働きを低下させます。腹痛や気持ち悪さを感じさせることもありますよね。
消化器官も加齢に伴い老化が進んでいます。年を重ねるほど、胃腸を労わるようにすることが、『脾腎』のケアとなり、体の基礎作りに役立ちます。
また、朝の飲食物は毎日似たようなものが続く傾向にあります。
1日だけで考えると問題ありませんが、毎日胃の不調を感じているようであれば、なるべく空腹状態でのコーヒーは控え、体の基礎作りに役立つ朝食習慣を少しずつ始めてみてはいかがでしょうか。
どんなことにもメリットとデメリットがありますよね。調子の悪い時には、特に毎日続けていることのメリット・デメリットを見つめなおし、行動を改めてみましょう。
短期的に体に良い効果をもたらすことは難しいですが、未来の自分の体調を支えてくれるものとなります。
元気で若々しく過ごしていきたいと考える方は、調子が悪いと感じるタイミングで習慣の見直しをしてみてはいかがでしょうか。
そのほかにも心と体を強くするレシピは、『不調がどんどん消えてゆく 食薬ごはん便利帖』(世界文化社)で紹介しています。もっと詳しく知りたい方はぜひご覧ください。
※食薬とは…
『食薬』は、『漢方×腸活×栄養学×遺伝子』という古代と近代の予防医学が融合して出来た古くて新しい理論。経験則から成り立つ漢方医学は、現代の大きく変わる環境や学術レベルの向上など現代の経験も融合し進化し続ける必要があります。
近年急成長する予防医学の分野は漢方医学と非常に親和性が高く、漢方医学の発展に大きく寄与します。漢方医学の良いところは、効果的だけどエビデンスに欠ける部分の可能性も完全否定せずに受け継がれているところです。
ですが、古代とは違い現代ではさまざまな研究が進み明らかになっていることが増えています。『点』としてわかってきていることを『線』とするのが漢方医学だと考えることができます。
そうすることで、より具体的な健康管理のためのアドバイスができるようになります。とくに日々選択肢が生じる食事としてアウトプットすることに特化したのが『食薬』です。
Information
<筆者情報>
大久保 愛 先生
漢方薬剤師、国際中医師。アイカ製薬株式会社代表取締役。秋田で薬草を採りながら育ち、漢方や薬膳に興味を持つ。薬剤師になり、北京中医薬大学で漢方・薬膳・美容を学び、日本人初の国際中医美容師を取得。漢方薬局、調剤薬局、エステなどの経営を経て、未病を治す専門家として活躍。年間2000人以上の漢方相談に応えてきた実績をもとにAIを活用したオンライン漢方・食薬相談システム『クラウドサロン®』の開発運営や『食薬アドバイザー』資格養成、食薬を手軽に楽しめる「あいかこまち®」シリーズの展開などを行う。著書『心がバテない食薬習慣(ディスカヴァー・トゥエンティワン)』は発売1か月で7万部突破のベストセラーに。『心と体が強くなる!食薬ごはん(宝島社)』、『食薬事典(KADOKAWA)』、「食薬ごはん便利帖(世界文化社)」、「組み合わせ食薬(WAVE出版)」、「食薬スープ(PHP)」など著書多数。
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