水溶性食物繊維をとるべき本当の理由 | ~たけし、タモリも…「1日1食」で熟睡&疲れナシ~

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大麦などの精製されていない食品は、低炭水化物であるだけでなく、水溶性食物繊維が豊富に含まれているので、積極的にとることをおすすめしたい食品です。では、水溶性食物繊維はなぜ体にいいのかを考えてみましょう。

これまで、水溶性食物繊維は粘り気があるため脂質や糖質と絡まりあって消化吸収を遅らせる、だから太りにくいなどと言われてきましたが、その詳しいメカニズムはあまりよくわかっていませんでした。

それが、最近の研究によって、水溶性食物繊維が良い腸内細菌のエサになることが明らかになったのです。乳酸菌など、善玉菌といわれる体にとってプラスになるような腸内細菌は、水溶性食物繊維がないとうまく育たないのです。

●まずはいい菌が育つ土壌をつくろう

 僕たちの腸は、食べものの消化吸収にかかわる器官であると同時に、免疫細胞の6~7割が集中する最大の免疫器官でもあります。

 ヒトの腸内にはおよそ10兆個、1000種類以上もの腸内細菌がいて、さまざまな働きをしています。食べ物の消化吸収はもとより、体に必要なビタミンやホルモンの産生、有害物資を分解・排泄したり、体に侵入する病原菌の増殖を防ぐなど、人が生きていくうえで重要なことを実は腸内細菌がたくさん行っているのです。

 最近では、腸内細菌ががん細胞の増殖を防ぐことや、免疫システムの活性化に関与していることもわかってきました。また、腸内細菌には善玉菌と悪玉菌がいて、このバランスが崩れると、体調が悪くなったり、病気になりやすいこともわかってきました。

 「免疫力」を高めるためにも、腸内細菌のバランスをよい状態に保つことがとても大切です。腸内細菌のバランスを改善するとして、「プロバイオティクス」といわれる、乳酸菌やビフィズス菌などを含む食品(ヨーグルトなど)が注目されてきましたが、そもそもこれらの善玉菌を育てるためには水溶性食物繊維が必要なのです。

 ですから、「ヨーグルトを一生懸命食べてもあまり変わらない」という人は、もしかしたら水溶性食物繊維が足りていない可能性があります。いくら善玉菌をとっても、エサがなければ生きていけません。水溶性食物繊維を積極的にとることによって、いい菌が育つ土壌をつくることが大切です。

 ただ、一つ欠点は、おならが増えること。乳糖が腸内細菌によって発酵され、水素のおならが出ます。ただ、水溶性食物繊維を食べて出るおならは肉食のおならとは違って、臭くありません。「お、腸内細菌ががんばっているな」と腸内細菌の活動のバロメーターにしてしまいましょう。

●水溶性食物繊維は、脳に直接はたらきかけて食欲を抑える

 さらに、水溶性食物繊維を材料に、腸内細菌が短鎖脂肪酸(酢酸、酪酸など)をつくるのですが、このうち酢酸が直接脳に届いて食欲を調整していることが動物実験で確かめられました。こ

れまで、水溶性食物繊維が腸内で発酵して酢酸がつくられると満腹ホルモンが出てきて食欲を抑えると考えられていましたが、これとは違った新たなメカニズムが示されたのです。

 他にも、「腸内細菌を持たないマウスはストレスに対抗するホルモン(コルチゾール)の分泌量が増え、不安を示すような行動をとるようになる」など、腸内細菌が脳や精神状態にも影響を与えていることを示す報告が複数発表されています。

 「腸は第2の脳」とか「人は腸から老いる」などともいわれます。腸は単なる消化器官にとどまらず、僕たちの体全体と深くかかわっているのです。

●大麦で手軽に食物繊維がとれる

 だからこそ、腸内細菌のバランス=腸内環境をよい状態に保つことはとても大切。そのためには、乳酸菌を摂取する前に、まず水溶性食物繊維を多く含む食べものをとるように心がけましょう。だから僕自身、主食を大麦にシフトしました。

 厚生労働省の基準によれば、食物繊維(水溶性・不溶性)の目標摂取量は18歳以上の女性の場合、1日に18g以上とされています。大麦は穀類の中で最も水溶性食物繊維が多く、100gあたり6.0g。

エシャロットなどの野菜にも多いけれど、これはそうそう毎食大量に食べられるものではないから、1日3食、頻繁にとる穀類で考えるのがよいと思います。大麦なら最初は少しずつ白米に混ぜて、だんだんその割合を増やしていけば、自然に慣れることができます。

 わが家でも、最初は「ええーっ、大麦?」という家族の反対にあったので、白米の中央に少しだけ大麦を入れて炊き、僕は大麦の部分を、家族はそれ以外の白米の部分を食べていたのですが、みんなも少しずつ大麦が混ざったご飯を食べていたら「便秘が治った」などと、そのよさがわかってきて、今ではみんなで大麦を食べています。炊きたての麦の味、いいものですよ。ぜひ試してみてください。

<プロフィール> 坪田 一男(つぼた かずお)
慶應義塾大学医学部教授・慶應義塾大学SFC研究所ヘルスサイエンスラボ代表。1955年東京生まれ。慶應義塾大学医学部卒業。ハーバード大学留学、クリニカルフェロー修了。2000年より最先端のアンチエイジング医学を学び、医療界に積極的に導入。現在、日本抗加齢医学会理事長、日本再生医療学会理事、学会誌「アンチエイジング医学」の編集長、慶應義塾大学SFC研究所ヘルスサイエンスラボ代表などを務める。南青山アイクリニック手術顧問を務め、眼科専門医による安全なレーシック(近視手術)の提供・指導も行う。『ごきげんな人は10年長生きできる』(文藝春秋)など著書多数。