すぐに命に関わることはなくても、普段の診療から最適なケアを受けたい。特に眼の病気はいつの間にか悪化することもある。
専門的な知識を持ち、親身になって病気に向き合う良い眼科医の見つけ方を紹介しよう。眼科医で二本松眼科病院に勤める平松類氏は、「最も重要なのは患者の話を聞く医師かどうか」だと語る。
「眼の診療では『ゴロゴロする』『目やにが多い』など、検査の数値に表われにくく原因が判然としない症状で来院する方が多い。そのため、医師としての技量だけでなくコミュニケーションが一層大事になるのです」
名医と出会うきっかけになり得るのが、メガネやコンタクトレンズだ。
「眼科はほかの診療科と異なり、大きな病気がなくても日常的に受診するタイミングがある。眼科でメガネやコンタクトレンズの処方箋をもらう際に『この医師は相談にきちんと乗ってくれる』と思えれば、相性が良い可能性は高いでしょう」
病気ごとに「良い医者」を見分ける手がかりもある。まずは80代になるとほぼ全ての人に症状が見られる「白内障」だ。
白内障は眼のレンズ(水晶体)が白く濁る病気で、手術が基本的な治療法とされる。その際、医師から「レンズの選択肢」を提案されるかどうかが判断材料になるという。
「白内障の手術では、職業上や生活上の理由など本人の希望や目的に応じて、遠近両用レンズ、遠くが見やすいレンズなど、最適なものが選べる時代です。
ですが上から目線の医師だと、『これを入れておけばいい』とほかの選択肢を説明しないことがあります」手術後にレンズの選択肢があることを知り、後悔する患者は多いという。
経過観察は丁寧か
失明原因の第1位である「緑内障」ではどうか。平松医師は、緑内障の治療では「数値」の経過を丁寧に説明するかどうかの“客観性”がポイントになると指摘する。
「眼の病気は数値だけでは判断が難しいと言いましたが、緑内障は違います。例えばMD値(単位:デシベル)という数値で視野の状態を診る検査があります。
正常であれば『0』で、逆に『-30』だと失明に近い状態、『-20』で自覚症状として見づらさを感じる段階に入ります。
ところが、『-10』程度では少しずつ数値が悪くなっていても、悪化に気付かないことが多い。むしろ進行するまで自覚症状がないので、医師の『まだ大丈夫』の一言で定期的な通院を怠った結果、最悪の場合は失明してしまうこともあります。
初期だとしても、視野検査の結果や数値を用いて『この状態なのでまだ手術は必要ありません。経過観察しましょう』と言う医師を選ぶのがよいでしょう」
また緑内障は最新治療を提案されないケースがあるという。
「緑内障は、手術をやりたがらない医師が多い。白内障に比べて手術の難易度が高く、術後に『目がゴロゴロする』などのクレームを受けることがあるからです。
患者さん自身が症状の悪化に気付きにくいこともあり、お互いにズルズルと手術を先延ばしにしがちです」患者はどうすべきか。
「手術のタイミングを医師任せにしないことです。患者さんの希望次第で早期にも可能な積極的治療である『眼圧降下切開手術』などを受けるには、検査の数値について医師に説明してもらい、患者さん自身の意思を伝える必要があります。
また評価の高い眼科医院ほど、限られた時間での診察になりがちです。眼科は患者数が多く内科の3倍は患者さんを診なければいけないことも多い。
患者さんは日常のどんな困りごとを改善したいかをあらかじめ紙に書いて、診察時に伝えてほしい」
※週刊ポスト