米国で鳥インフルエンザが「人間にも感染」 鶏肉や卵、牛乳は安全か?© Forbes JAPAN 提供
米国各地で牛や鶏への鳥インフルエンザの感染が報告されている。南部テキサス州では人間1人が感染したほか、少なくとも3匹の猫が感染した。
人間が鳥インフルエンザに感染することは、前例がないわけではないが珍しい。今回の事例では、人間と猫がウイルスに感染した乳牛と密接に接触していたことがわかっている。
テキサス州、ニューメキシコ州、カンザス州、オハイオ州、ミシガン州などでは乳牛が集団で感染しており、野鳥がウイルスを媒介した可能性が高いとされている。
牛同士が互いに直接感染しているのか、野鳥との接触で牛に感染が広がっているのかはまだ確認されていない。
米最大の鶏卵生産者カルメーン・フーズも、テキサス州の養鶏場で鳥インフルエンザを検出し、200万羽近い鶏を殺処分したと発表した。
ウイルスの蔓延を抑え、感染した動物から生産された食品を人間が摂取するリスクを低減するため、感染動物の殺処分が行われているが、感染した肉や卵、牛乳がすでに流通している可能性もある。
鳥インフルエンザに感染した動物から生産された食品を摂取してしまった場合、危険性はないのだろうか?
ニュージャージー州ニューブランズウィックにあるラトガース大学食品科学科主任教授のドナルド・W・シャフナー博士によると、その危険性はないという。
同博士は、現在推奨されている調理法に適切に従えば、ウイルスを非常に高い水準で不活性化できることが、研究によって示されていると説明した。
2007年に分類されたH5N1型ウイルスの変異株を用いて行われた実験では、感染した鶏の肉には生きたウイルスが含まれているが、米農務省食品安全検査局の調理時間と温度に関する指針に従って調理すれば、ウイルスが不活性化することが示された。
現在流行しているH5N1型ウイルスは、実験に使われたものと同一ではないが類似しているため、調理によって不活性化される可能性が高い。
シャフナー博士は、サルモネラ菌のような細菌による病気を防ぐためには、生肉の取り扱いや調理法に留意し、肉をしっかり焼くことが重要だと強調した。
したがって、肉に関しては適切に調理さえすれば安全だと言える。だが、卵は生で食べたり、部分的に加熱して半熟で食べたりすることが多い。
生卵やトロトロの黄身が好きな人にとって、悪い知らせが入ってきた。複数の州が公衆衛生情報を更新し始めたのだ。
例えば、ニューハンプシャー州保健福祉局は「鳥インフルエンザと安全な鶏肉調理」に関する報告書をまとめ、「黄身が液状のままにならないよう、卵は十分に加熱すること」と警告している。
米農務省によれば、鳥インフルエンザウイルスは、牛乳が作られる牛の乳腺組織で複製することができるという情報がある。
米国で消費される牛乳のほとんどが低温殺菌されており、米食品医薬品局(FDA)も、これにより存在するウイルスはすべて死滅するとしているのだから、安心してほしい。
ただし、「生乳」と呼ばれる低温殺菌されていない牛乳や、生乳由来の製品は安全でない可能性がある。
FDAも、低温殺菌処理が施されていない生乳や、生乳から作られたチーズなどの製品の摂取によってH5N1型ウイルスが感染するかどうかは、現時点では不明だとしている。
つまり、食品を十分に加熱調理したり低温殺菌したりすることで、安全性は確保されるはずだ。
だが、生卵や低温殺菌されていない牛乳を取る人は、鳥インフルエンザの感染が拡大している現時点では少し立ち止まって考えた方がいいかもしれない。