年金繰り下げで「医療費の自己負担」増加の罠にご注意!“高額療養費”で大差も… | ~たけし、タモリも…「1日1食」で熟睡&疲れナシ~

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年金の受給額を増やせる「公的年金の繰り下げ受給」が大人気だ。しかし、だからこそ注意点やデメリットも押さえた上で判断してほしい。

 

今回は年金繰り下げに関する「五つの注意点・デメリット」の中から、「医療費の自己負担」が増える恐れがあるという落とし穴について解説する。(ファイナンシャルプランナー〈CFP〉、生活設計塾クルー取締役 深田晶恵)

 

一見おトクな年金繰り下げには

複数の注意点がある!

 

「公的年金の繰り下げ受給」は、定年前後の人にとって大きな関心事だ。以前は質問を受けることすらなかったが、数年前からメディアが盛んに取り上げるようになったことで、最近では「繰り下げすべきかどうか」という相談が急増している。

 

 本来65歳から受け取る公的年金の受給開始時期を遅らせることを「年金の繰り下げ」という。受給を遅らせると、額面の年金額は1カ月ごとに0.7%増える。繰り下げの上限年齢は70歳までだったのが、2022年4月の年金制度改正で75歳に延長になったことも話題を集める要因といえる。

 

 受給開始を5年繰り下げて70歳にすると、65歳時点での年金額の1.42倍、10年繰り下げて75歳にすると1.84倍にもなる。例えば、65歳時点での年金額が年間200万円なら、1.42倍で284万円、1.84倍なら368万円!受け取りを遅らせるだけでこんなにも増えるのだから、多くの人が気になるはずだ。

 

 繰り下げのメリットは、年金額の増加と、長生きするほどトクをすることの2点。ところが、注意点やデメリットも複数あることを知っておきたい。そこで、年金繰り下げに関する「五つの注意点・デメリット」をお伝えするとともに、今回はその中でも初めて取り上げる「年金額が大きく増加すると、医療費・介護費の自己負担が増える」というポイントについて詳しく解説したい。

 

年金繰り下げの

注意点とデメリットとは?

 

 年金繰り下げに関する「五つの注意点・デメリット」は以下の通りだ。

(1)手取り額は額面の年金額と同じ率では増えない(社会保険料の負担が重くなるため)

(2)早く亡くなると、トータルで受け取る年金額が少なくなり、ソンをすることに。繰り下げた際の損益分岐年齢について、厚生労働省は額面ベースで、「70歳から受給すると81歳11カ月、75歳からなら86歳11カ月で、65歳から受け取り始めた時よりも総額が大きくなる」と言っている。手取りベースで試算してみると、厚労省の試算よりプラス3~4歳となる

 

(3)繰り下げた人が死亡した後に、その配偶者が受け取る遺族厚生年金は、65歳時点での金額を基に計算される(増額は反映されない)

(4)厚生年金の繰り下げ期間中は加給年金(年金の配偶者手当。年額約40万円)は受け取れない

(5)年金額が大きく増加すると、医療費・介護費の自己負担が増える

 上記のうち(1)から(4)については、当連載で何度か書いてきた。『年金繰り下げ受給が4月から「75歳までOK」に!手取り額を試算してみた』などの関連記事を参照いただきたい。

 

 今回(5)について、初めて取り上げることにする。70歳以上の医療費の自己負担割合は、2割または1割であるが、「現役並み所得者」となると3割にアップ。65歳以上の介護サービス割合は、多数の人は1割負担だが、「一定以上所得者」と判定されると、2割または3割負担となる。

 

 では年金額はいくらになると、負担割合が増すのだろうか。読者のみなさん、年金の繰り下げを考えるときに目安が知りたいですよね。

 

私も気になるので、今回試算してみることにした。医療費と介護サービス費では基準が異なるため、介護サービス費は次回に譲り、まずは医療費から見てみよう。

 

 がんの三大治療(手術・抗がん剤・放射線)のうち、近年では抗がん剤と放射線はほとんどが外来で行われる。所得区分が一般なら、高額な抗がん剤を使った治療が月1万8000円で済むのである。

 

 一方、「現役並み所得者」に区分されると、世帯ごとに外来および入院を合わせた金額が上限額を超えないと高額療養費の払い戻しにはならない。上限額が最も低い「現役並み所得者I」だとしても8万100円超が対象なのでハードルがぐっと上がる。

 

 注意点が多く恐縮だが、判定基準は将来変わる可能性が大きいことも知っておきたい。これまでも収入基準は5年に一度くらいのペースで見直され、負担増になっている。

 

また、働く女性が年金世代になって世帯年収が増えたり、60歳以降も働く人が増えることで年金収入の平均が上がったりすることも十分に考えられる。自身で試算するなら、厳しめにみておくのが安心だ。今は2人世帯でも、1人世帯になると基準も変わる。

 

 私は年金繰り下げの注意点をよく書いているので、他の専門家から「深田さんは年金の繰り下げ反対派ですね」と言われることがあるが、そうではない。圧倒的に年金額が少ない人は、できるだけ長く働いて繰り下げで年金額を増やすのがいいとアドバイスしている。

 

 繰り下げ受給を否定しているわけではなく、メリットだけで判断し、高齢になったときに「こんなはずではなかった」と後悔してほしくないから注意点とデメリットを解説しているのだ。

 次回は、繰り下げによる介護サービスを受けたときの負担アップについて取り上げる予定だ。併せて負担増を避けるための対策を紹介する。

 

年金額がいくらになると

医療費の自己負担割合は増える?

 

 医療費の自己負担割合は7~69歳までは3割だが、70歳以上になると1割ないし2割に軽減される。

 

表:医療費の窓口負担割合

表:医療費の窓口負担割合© ダイヤモンド・オンライン

 

 ただし、「現役並みに所得がある人は引き続き3割負担してね」という仕組みだ。「課税所得が145万円」を超えると「現役並み所得者」と区分判定され、3割負担となる。

 

 公的年金を65歳から受給すると、現役時代の収入が高くて年金額が多い人でも年間240万~260万円なので、他に収入がなければ課税所得は145万円を超えることはなく「一般」に区分される。

 

 では、課税所得が145万円を超える年金収入とは、いくらなのか。試算してみると、税務上の扶養家族が妻のみという家族構成なら、おおむね年間390万円だ。扶養家族がいない人は340万円が目安。

 

65歳時点の年金収入が200万円の人が5年繰り下げると284万円、10年繰り下げると368万円となる。5年程度の繰り下げなら、2人世帯でも1人世帯でも分岐年金額は超えない生活に直結! 4月から…値上げ・年金支給額・残業時間規制 医療サービスへの影響は

 

 ただし、繰り下げ受給が始まって以降も企業年金や個人年金の収入があると、それらも合計されるため、課税所得は増えるので注意が必要だ。

 

もう一つ、「課税所得」は所得税ではなく、住民税の課税所得である点も知っておきたい。住民税の基礎控除、配偶者控除は、所得税よりも控除額が少ないので、これも注意点である。

 

「救済ルール」の存在も

知っておきたい

 

 国や自治体の制度は、負担が重くなると幾重にも救済ルールを設けている場合が多い。ありがたいと感じる一方で、制度を複雑にしていることは否めない。

 

 70歳を過ぎて課税所得145万円超となり「現役並み所得者」と区分されたとしても、救済ルールがある。以下の画像は、東京都・文京区のホームページにある記載だ。

 

出所:文京区のホームページ

出所:文京区のホームページ© ダイヤモンド・オンライン

 

 ぱっと見て理解できる読者は少ないだろう。救済ルールなので、課税所得が145万円超でも収入が基準内なら「一般」の負担割合でいいですよ、ということだ。

 

 2人世帯なら合算収入520万円、1人なら収入383万円が基準額となり、課税所得のルールよりも原則緩くなる。課税所得よりも収入の方が自己判定しやすいのでないか。ただし、これも企業年金や個人年金等の収入は対象になることを覚えておきたい。

 

窓口負担割合より重要な

高額療養費の上限額

 

 窓口負担が3割になったとしても「高額療養費制度」により一定の自己負担限度額が設けられているので、医療費の自己負担額は青天井でかかるわけではない。

 

 しかし、70歳以上の高額療養費の自己負担上限額は、所得区分が「一般」なのか「現役並み所得者」なのかにより、大きく異なることは絶対知っておきたい。

 

表:70歳以上の高額療養費の限度額

表:70歳以上の高額療養費の限度額© ダイヤモンド・オンライン

 

 70歳以上になると、高額療養費の1カ月の上限額が「外来」と「外来+入院」に分かれる。注目したいのは、所得区分「一般」の外来の上限額だ。

 

一般に区分されると、月1万8000円が上限なのだ。しかも、70歳未満の高額療養費は「医療機関ごと」であるが、70歳以上になると「個人の外来の合計額」で判定される。

 

 高齢になると、ちょっとした通院が増える。私が同居していた夫の両親は、血圧コントロールのための内科、白内障で眼科、歯科といった具合に毎月それぞれ通院していた。

 

それだけで医療費は1万8000円を超えないが、二人とも同時期にがんに罹患(りかん)したため、総合病院での診察・検査、高額な薬代であっという間に1万8000円を超過した。全ての医療機関で支払った自己負担額を合計し、超過分が払い戻され、ありがたかった。