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ベンツにポルシェ!医師は本当に「儲け過ぎ」なのか…小児外科医が明かす「開業医の正体」と「クリニックの真実」

勤務医は年収1000万~1500万円

病院の舞台裏を包み隠さず明かした『開業医の正体』(中公新書ラクレ)が売れている。

 

著者は千葉大医学部から転身してクリニックを開業した松永正訓医師。なぜ松永医師は本書を書いたのか。執筆の内幕を聞いた。

 

ベンツにポルシェ!医師は本当に「儲け過ぎ」なのか…小児外科医が明かす「開業医の正体」と「クリニックの真実」

ベンツにポルシェ!医師は本当に「儲け過ぎ」なのか…小児外科医が明かす「開業医の正体」と「クリニックの真実」© 現代ビジネス

 

――本書ではクリニックの収支など、すべて赤裸々に明かされています。いきなりですが、医師の年収はいくらくらいですか?

 

松永勤務医の年収が1000万円から1500万円くらいです。一般的には、開業医になると、この金額が3倍くらいになると言われています。

 

しかしそれは成功した開業医のケースであって、全員が成功するわけではありません。一部の開業医は収入的に苦しいという話を聞いたこともあります。

 

私の場合は、比較的成功した部類だと思います。大学病院で働いていたときと比べて、大幅に収入が増えました。

 

ただ、『開業医の正体』にも書きましたが、日本は累進課税制度をとっていますから、収入の半分は税金として持っていかれます。目の前をお金が通り過ぎていくような感じです。

 

――開業医がベンツやポルシェに乗っているのは何故でしょう?

駐車場はまるで「高級車の展示会」

松永見栄じゃないですか(笑)。でも、お金って見栄のために使うという説を聞いたことがありますので、案外当たっているかもしれません。私もベンツに乗っていますが、別にそんなにいい車だとは思っていません。やはり見栄ですかね。

 

それから、先ほど述べたように、税金をごっそり取られるので、それなら高価な車を買っちゃえという考えがあります。

 

通勤に使う車はベンツでもポルシェでも必要経費になりますから。医師会の勉強会などに参加すると、駐車場は高級車の展示会のようになっています。

 

ちなみに、高級腕時計は経費になりません。1万円の腕時計は経費でOKなのですが、ロレックスのような100万円の時計はNGです。なぜだか、理由はよく分かりません。

――すでに本書は大きな話題になっていますが、読者からどんな反応がありましたか?

医者は「医療以外の相談をされたら嫌」?

松永編集部からはAmazonなどのネット書店より、リアル書店でよく売れていると聞きました。ところが発売から2週間が経ったところでネット書店でも売れ筋ランキングが急上昇しました。理由は実はよく分かりません。編集部も戸惑いながら、大喜びしています。

 

開業医の先輩からは、こんなにおもしろくて痛快な本はなかったと言っていただきました。私は何冊も本を書いているので、そのなかでもっとも痛快な本だったという意味だと思います。勤務医の先輩の先生からは、勤務医あるあるがいっぱい詰まっていて楽しく読んだと言ってもらえました。

 

つまりこの本は、タイトルこそ『開業医の正体』ですが、医療界をけっこう広く書いているのです。もちろん、読者の主なターゲットは一般の人ですから、誰が読んでも楽しんでもらえると思っています。

 

――診察のとき、どんな患者が困りますか? 医療以外のことを相談されたら嫌ですか?

松永逆ですね。医療だけの、医師と患者家族の関係はつまらないです。

 

子どもが学校に行かないとか、リストカットするとか、そういう相談をしばしば受けます。こういう問いに対しては、頭でっかちな知識だけでは家族の悩みに答えることができません。試されるのは医師の人間力です。

 

私も62歳になり、いろいろな経験を積んできました。そういう人生経験の蓄積が医師には重要なのだと思います。

 

ふだんは風邪とかインフルエンザとか、誰でも診断・治療できる病気ばかり診ていますが、ときに家族の大きな悩みをぶつけられることがあります。私でよければ、ぜひどうぞというのが、私のスタンスです。

 

――クリニックを開業する前、大学病院時代はかなり多くの手術を手がけていたそうですが、執刀するとき、医師はどんな気持ちでしょう?

緊張するがワクワクする

松永誤解されるかもしれませんが、外科医って手術が好きなんです。嫌いだったら外科医になっていません。執刀するときの気持ちは一言ではとても言い表せません。緊張もするし、ワクワクもします。

 

ワクワクというのは、外科医って手術を重ねることで名医への道を一歩ずつ登っていくからです。この手術をしっかりやりこなせれば、自分のステータスが一段上がると考えるわけです。

 

だけど手術は厳粛なもので、重ねて言いますが緊張を伴うものです。成し遂げたときの達成感は、外科医でなければ分からないかもしれません。それくらい、大変クリエイティブで知的な楽しさがあります。

 

――ところで、患者は執刀医を選べますか? もし選べるとしたら、どんな基準で選べばいいでしょう?

 

松永残念ですが、選べません。ある病院の中の外科医の集団には腕の差があります。キャリアの差と言ってもいいでしょう。超ベテランの外科医が、ものすごく初歩的な手術をしても意味がありません。

その逆もしかりで、駆け出しの外科医に難しい手術はできませんし、やらせることに意味がありません。外科医がステップアップしていけるように、その外科医にとってややチャレンジングな手術が割り当てられることが多いです。

 

開業医が患者さんを大病院に紹介するときに、部長先生や教授先生宛に紹介状を書きますが、その先生が執刀するというわけではありません。その外科チームで話し合って執刀医を決めているのです。

 

――それは知りませんでした。ところで、なぜ医療ミスは起きるのでしょう?

誠実でない医者は退場すべき

松永慣れとか油断でしょうね。緊張感の欠如だと思います。私は19年間、大学病院の医局に在籍しましたが、ミスは何件かありました。訴訟には至りませんでしたが、やはりあってはならないことです。

 

――実際、手術ミスが起きたらどうなりますか? 患者にはミスが起きたのか否か、分からないのはないですか?

 

松永ミスは必ず公になります。嘘を隠し通すことはできません。大学病院などはチーム医療ですから、医師同士がある意味で相互監視をしています。互いに医療技術を批判し合うことで、チームとして、あるいは医師としての成長があるわけです。

 

その過程でミスは必ず表に出ます。全員が口を噤んで闇に葬るということはありません。ミスが起きたとき、医師は誠実さが問われます。誠実でない医師は医療の場から退場すべきです。

 

――本書のなかで発達障害に関する記述があります。発達障害が近年、社会的に注目されるようになったのは何故でしょう?

 

松永発達障害は増えているという説と、「普通」から逸れた子を社会が許容しなくなったから診断を受ける子が増えているという説があります。

 

おそらく両方でしょう。発達障害の子が増えている理由として、晩婚化が関係しているという説もあります。でもそれがすべてではないでしょう。

 

いずれにしても患者が増えている現況にあって、いやでも注目を浴びざるを得ません。発達障害とは社会との接点での障害ですから、どうしても社会的関心が強くなります。

 

――発達障害で悩み、苦しんでいる家族が多いようですが、一番の課題は何でしょう?

予約から初診まで9ヵ月かかることも

松永一番の課題は、発達障害の子を長期に支えることができる医師が圧倒的に足りないということです。私がクリニックを開業している千葉市では発達障害の未就学児を診ることができるのは、千葉市療育センターという医療機関のみです。予約から初診まで9ヵ月かかります。

 

すると、そんなに長く待っていられないから、ご家族の相談に乗ったり、力になったりしているは開業医です。もちろんできる範囲で、ですが。一方、大学病院の小児科はこどもの発達障害はいっさい診察しません。

 

もし診療をきちんと行うなら、医師だけでなく、言語聴覚士とか心理士なの協力が欠かせませんが、そういう人材を集める力が大学にはないからでしょう。

 

そうだとしても、開業医が発達障害の子を診て、大学病院が診ないというのは、ちょっと変だと思います。専門医が足りていないというのは、おそらく全国的な問題です。学会とか、大学病院とかが早急に問題解決に動くべきです。

 

――今後の執筆計画をお聞かせください。これからも医療界の舞台裏を明かしていくのでしょうか。

 

松永実は『医師が患者の前で考えていること』というタイトルの本を夏の出版に向けて準備中です。ただ、医療界の舞台裏を描くことが私のライフワークではありません。3月には『ドキュメント 奇跡の子』という本格的な医療ノンフィクションを出版予定です。

 

これは私にとって渾身の作品なので、ぜひ、多くの方に読んでほしいと思っています。何歳まで書けるか分かりませんが、できる限りがんばるつもりです。

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