脱サラした人は要注意
Q.専業主婦でなくても遺族年金はもらえますか?
A.亡くなった人の妻が働いていても、年収が850万円を超えていなければ、遺族年金はもらえる。ただし、夫が亡くなったときに妻が30歳未満で子無しの場合、遺族厚生年金が支給されるのは5年間に限られる。
「妻が30歳未満なら、まだ若いから出直しも可能だろうという理屈でしょう」(前出の井戸氏)
また、遺族厚生年金は、亡くなった人の配偶者でなくても、子供、父母、孫、祖父母なども受け取ることができる。父母、祖父母の場合は55歳以上、子と孫が受け取る場合は18歳未満で、ともに亡くなった人に生活を頼っていた場合に限り受給可能だ。
Q.夫が脱サラした場合でも、遺族厚生年金を受け取れますか?
A.夫が死亡したときに自営業者であっても、過去にサラリーマンとして働いていた時期があれば、そのとき加入していた厚生年金の恩恵を受けられる可能性がある。
「注意が必要なのは、夫が独立後に厚生年金から国民年金への移行手続きをしていない場合です。老齢基礎年金の受給資格を得られていないと、遺族厚生年金ももらえないという仕組みになっているのです」(井戸氏)
さらに、サラリーマン時代に初診で診てもらった病気が原因で、初診後5年以内に亡くなった場合も、遺族厚生年金は支給されることになっている。その病気が原因で会社を辞めざるを得なかったとみなされるわけだ。
配偶者がどのような年金制度に加入していたのかは、意外にわからないものだ。不安に思った場合は、最寄りの年金事務所や年金相談センターに行くと、担当者が確認してくれる。
Q.死亡一時金と寡婦年金、どちらがお得でしょう?
A.亡くなった夫が自営業者だった場合、厚生年金には加入していないので、もらえるのは遺族基礎年金だけだ。ただし、先に述べたように遺族基礎年金は、母子家庭の子育て年金という意味合いが強いため、18歳未満の子供のいない妻は、遺族年金を一切もらえなくなってしまう。
そのような状況を救済するために設けられているのが、死亡一時金と寡婦年金という制度だ。この年金はどちらか一つを選択することになる。
「当然、おトクな方を選択することになります。死亡一時金は一回のみの給付で、保険料納付済期間の長さによって異なりますが、12万円~32万円支払われます。
一方で寡婦年金は60歳~65歳までの5年間、夫が受け取れたであろう老齢年金額の4分の3を受け取れるというもの。保険料を30年ほど支払っていたとすれば、年額45万円受け取ることになります」(前出の和田氏)
再婚するかどうかで変わる
Q.再婚しても遺族年金はもらえますか?
A.遺族に18歳未満の子供がいない場合は、再婚するとあらゆる遺族年金の受給資格を失うことになる。たとえ再婚相手が病気で働けない人であったり、遊び人で稼ぎのない人だったりしても同様である。再婚することによって、以前結婚していた人との経済関係は途絶えたとみなされるからだ。
その後、再婚相手と離婚しても、かつての結婚相手の遺族年金はもらえない。年金制度において「ヨリ」を戻すことは不可能なのだ。
18歳以下の子供がいる場合はどうだろうか。子供が新しい再婚相手とともに親元で暮らすことになれば、「母子年金」の性格を持つ遺族基礎年金の支給はストップされる。だが、遺族厚生年金は子供が18歳到達年度の末日まで支給される。
再婚前までは遺された妻に支払われていた遺族厚生年金の払い込み先が、子供に変更されるというわけだ。
「遺族のなかには再婚予定があっても、子供が18歳になるまでは遺族基礎年金がもらえるから籍は入れないという人も多いですね」(前出の福一氏)
Q.内縁の妻であっても遺族年金は受け取れますか?
A.籍を入れずに夫婦関係を営んでいたとみなされれば、受給可能。ここで重要になるのは、住民票だ。内縁関係であっても住民票が同一世帯にあれば、受給のための審査が通りやすくなる。さらに可能であれば、住民票上の続柄を「未届けの妻」としておけば理想的だ。
以上さまざまなケースがあるが、制度をよく知らず、申請しないでいると1円ももらえないのが遺族年金。身近な人を亡くした悲しみのうちにあっても、経済的な助けになってくれる制度があることを心にとめておこう。