薬は、病気治療や症状軽減のために使われます。一方で、肝臓や腎臓に負担をかけてしまい体に悪いのではないかと心配する方もいるようです。わかりやすく解説します。© All About, Inc.
Q. 薬は肝臓や腎臓に悪いのでしょうか?
薬は肝臓や腎臓に悪いのではないかと不安に思う方がいるようです。薬の安全性と、体質にあわせて選ぶポイントについて、わかりやすく解説します。
Q. 「薬は肝臓や腎臓に負担がかかるからなるべく飲まない方がいいと聞きました。本当でしょうか?」
A. 医薬品は安全性が確保されていて、体質に合わせた処方も可能です
薬に限らず、何かを食べたり飲んだりすれば、何らかの形で肝臓や腎臓には必ず負担がかかります。私たちが普段口にしている物に含まれる成分は、消化管から吸収されて体内に入った後、肝臓で代謝されたり、腎臓から尿中排泄されるからです。
「負担がかかる」と言うと怖く聞こえるかもしれませんが、肝臓や腎臓は本来の機能を果たしているだけのことです。それだけの理由で、必要な薬を「飲まない方がよい」と考えるのは間違いです。
医薬品は、事前に安全性と有効性を確保するための十分な試験が行われたものだけが使用を認められています。肝臓や腎臓へ重大な悪影響を及ぼすような薬の使用は、そもそも認められません。
きちんと提出された試験データに基づいて、国の認可を受けてから発売され、多くの使用実績がある薬については、安心して使うことができます。
薬の中でも、肝臓や腎臓への副作用の恐れが強いものを使用しなければならないときには、使用前や使用後に定期的に肝臓や腎臓の機能に変化がないかを検査し、少しでも異常が見られたら中止するように決められています。
とは言え、肝臓や腎臓が弱い人や機能低下がある人は、不安に思われるかもしれません。少し専門的になりますが、それぞれの薬は水に溶けやすいかどうかで「肝代謝型」と「腎排泄型」に分類されます。
■肝代謝型……比較的水に溶けにくい性質で、主に肝臓で代謝される薬
■腎排泄型……水に溶けやすい性質で、肝臓で代謝されずに腎臓で処理され、尿中排泄される薬
もともと肝臓が弱かったり、病気や加齢で肝臓の機能が低下している人の場合は、肝代謝型の薬を使うときには注意が必要です。
同じように腎臓の機能が低下している人の場合は、腎排泄型の薬を使うときには注意が必要になります。このあたりは主治医と相談をしながら、体質に合うものを選択していくことになります。
つまり、薬は、使う人の肝臓や腎臓の状態に応じてどう使い分ければいいかがあらかじめわかっているのです。医師や薬剤師ときちんと相談しながら、上手に使うことが大切です。
▼阿部 和穂プロフィール
薬学博士・大学薬学部教授。東京大学薬学部卒業後、同大学院薬学系研究科修士課程修了。東京大学薬学部助手、米国ソーク研究所博士研究員等を経て、現在は武蔵野大学薬学部教授として教鞭をとる。専門である脳科学・医薬分野に関し、新聞・雑誌への寄稿、生涯学習講座や市民大学での講演などを通じ、幅広く情報発信を行っている。