(画像=ELUTAS/stock.adobe.com)© 親を扶養すると減税になる!?意外と知らない仕組みのメリット・デメリット
親を税法上の扶養に入れられることを知っていましたか?
親を扶養に入れると、所得税・住民税が軽減される場合があります。ただしかえって負担が増えることもあるため、実際に手続きをする前に仕組みやメリット・デメリットを十分理解しておきましょう。
■親を扶養に入れるメリット
親を扶養に入れた場合、扶養者・被扶養者どちらにもメリットが生じる場合があります。
●メリット1:扶養者の所得税・住民税が軽減される
親を扶養に入れると、扶養控除が受けられ、課税所得を減らすことができます。
所得税や住民税は課税所得に所定の税率を乗じて計算するため、課税所得が減少することで結果的に支払う税金を減らせます。
扶養控除の控除額は、扶養親族の年齢や同居の有無で異なります。
たとえば、課税所得金額が300万円だった場合、所得税率10%に加えて9万7,500円が控除されるため、所得税額は300万円×10%-9万7,500円=20万2,500円です。
しかし同居の親を扶養とした場合、課税所得金額から58万円が控除されるため、所得税額は(300万円-58万円)×10%-9万7,500円=14万4,500円となります。
つまりこの場合、同居の親を扶養に入れることで、所得税だけで5万8,000円も軽減されるということです。
●メリット2:親の健康保険料の負担がなくなる
親は扶養に入ると子どもの健康保険に加入できるため、健康保険料を負担する必要がなくなります。
ただし親が75歳になると後期高齢者医療保険に加入するため、別途保険料を負担するようになります。
■親を扶養に入れるデメリット
親を扶養に入れた結果、かえって負担が増えるケースもあるため、手続きをする前にしっかり確認しましょう。
●デメリット1:高額療養費の自己負担が増える
親が子どもの扶養に入ると、「高額療養費」の自己負担上限額が高くなり、医療費の自己負担が増える可能性があります。
高額療養費の自己負担上限額、所得によって変わります。実際は年金収入のみでも、扶養に入っていると「子どもの所得」が適用されます。
●デメリット2:親の介護保険料の負担が増える
65歳を超えた親は介護保険の第一号被保険者となるので、自身で介護保険料を負担します。
しかし、介護保険料の金額は、世帯の収入金額で決まるため、子の収入が世帯収入に加わることになります。つまり、親が負担する介護保険料の負担が増える場合があるのです。
■扶養に入れるための要件
扶養は「税法上の扶養」と「健康保険上の扶養」があります。税法上の扶養を受ける要件は、親の所得金額が48万円以下であることです。
これにより、メリットの1つである「扶養者にかかる所得税・住民税の軽減」を受けることができます。
一方、「親の健康保険料の負担がなくなる」メリットを享受する場合は、以下の健康保険上の扶養の要件をすべて満たす必要があります。
・同居の場合、被扶養者が主に扶養者の収入で生活をしていること。別居の場合、被扶養者は扶養者の仕送りで生活をしていること ・被扶養者の収入が、同居の場合は扶養者の半分未満、別居の場合は仕送り額未満 ・被扶養者の年収が130万円未満、60歳以上または障害者の場合は180万円未満
■節税につながる場合も!
扶養親族にできるのは配偶者や子どもだけではありません。
親も扶養に入れれば節税につながる場合があるため、当てはまるかどうか確認してみましょう。ただし自身の判断で行わず、役所に必要な情報を伝えながら、慎重に手続きを進めるよう心がけてください。
文・金子賢司(ファイナンシャル・プランナー) 立教大学法学部卒業後、東証一部上場企業に入社。その後、保険業界に転身し、FPとして活動を開始。個人・法人のお金に関する相談を受けながら、北海道のテレビ番組のコメンテーターとしても活躍中。