「健康なおしっこは21秒間で終わる」医学部教授が解説する"老化のサイン"を一発で見抜く方法 | ~たけし、タモリも…「1日1食」で熟睡&疲れナシ~

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※写真はイメージです© PRESIDENT Online

 

おしっこの状態や時間は、健康状態と深い関係がある。順天堂大学医学部の堀江重郎教授は「体重3キロ以上の哺乳類は『排尿時間が21秒』という共通点を持っている。

 

また老化にともない排尿時間は長くなるため、自身の健康状態を知りたければ、排尿時間を確認するといい」という――。(第3回/全3回)

 

※本稿は、堀江重郎『尿で寿命は決まる 泌尿器の名医が教える腎臓・膀胱 最高の強化法』(SB新書)の一部を再編集したものです。

体重3キロ以上の哺乳類の“意外な共通点”

ライオン、象、犬、そして人間。これら食生活も体格も大きく異なる動物たちすべてに共通するのは、「排尿時間が約21秒」ということ。驚かれるかもしれませんが本当の話です。

 

より厳密にいうと、哺乳類は、からだの大きさにかかわらず、膀胱が空になるまでの時間は「21秒プラスマイナス13秒」、なかでも体重3キロ以上の哺乳類だと「約21秒」になるということが、ある研究で明らかにされたのです。

 

その研究では、体重3キロ以上の哺乳類は、尿道の「直径」と「長さ」の比率が約1:18で共通していることも明らかにしています。

 

だからライオンも象も犬も、キリンもヤギもチンパンジーも、みな、排尿時間はだいたい同じなのです。

 

心拍数や寿命、酸素消費量などは動物の種類によって異なるのに、排尿時間だけは約21秒で一致している。そんな興味深い事実を導き出したことで、この研究は2015年にイグノーベル賞物理学賞を受賞しました。

 

イグノーベル賞とは、「人々を笑わせ、そして考えさせてくれる研究」に対して与えられるノーベル賞のパロディ。「動物によって排尿時間は異なるのか」というのも、

 

そのイグノーベル賞にふさわしいほど遊び心に富む研究だったといえますが、反面、そこで明らかにされた「約21秒の法則」には重要な示唆も含まれているように思えます。

なぜ「21秒」なのか

臓器の大きさは、からだの大きさに比例します。もちろん、尿を溜める膀胱も、犬よりライオン、ライオンより象と、からだの大きな動物のほうが大きくつくられています。

 

それだけ考えると、からだの大きな動物のほうが排尿に時間がかかりそうです。

 

ところが、からだの大きな動物は膀胱が大きいぶん、尿道も太くつくられています。いってみれば、大きな貯水タンクに、大きな蛇口がついているようなものですから、排尿時間も、だいたい一致するというわけです。

 

それにしても、なぜ「約21秒」なのでしょう。生存に有利な形質をもったものが生き残っていくという、「ダーウィンの自然淘汰(とうた)論」に従えば、この秒数には、何かしら生き残りの秘密が隠されているように思えてなりません。

 

じつは、膀胱という臓器は哺乳類にしかありません。そして哺乳類は、肉食動物も草食動物も、なるべく、尿の臭いによって自分の存在を知られないほうが、生存には有利です。

 

そう考えると、尿を一定量、溜められる膀胱という臓器ができたのは、自分の存在を知らせてしまう尿を、頻繁に出さずに済ませるためかもしれません。かといって、溜まった尿を出すのに時間がかかりすぎると、それはそれで生存には不利になります。

年を取るにつれて排尿時間は長くなる

肉食か草食かにかかわらず、「つねに臨戦態勢であること」は生き残りの鉄則です。

 

膀胱ができたことで排尿の回数は減っても、何十秒も立ち止まって排尿しなければいけないとしたら、どうなるでしょう。おそらく肉食動物は、獲物をつかまえるチャンスが減ってしまうでしょうし、草食動物は捕食される危険が高まるでしょう。

 

というわけで、排尿の回数を減らし、なおかつ、生存に不利にならない程度の時間で尿を出す、という絶妙な合致点が「約21秒」ということかもしれないのです。

 

膀胱が進化した理由は、じつはいまだに明らかではなく、前述の「約21秒の排尿=野生界の生存の法則」というのも想像の域を出ません。

 

ただ、私たち人間に限って考えると、「約21秒」というのは、単なるトリビア的なおもしろい話では済まされません。なぜなら、排尿時間は、「おしっこ年齢」の重要なバロメーターになるからです。

 

年齢を重ねていくと、膀胱の筋力が落ちる、加えて男性だと前立腺肥大症になる、といったいくつかの要因によって、排尿時間は長くなる傾向があります。

 

わたしと旭川医大の松本成史(せいじ)教授の研究チームが、21歳から94歳の男女に対して行った調査でも、排尿時間は生殖年齢内で21秒前後と、先ほど紹介した研究を裏づけています。

しかし、年齢が上がるにつれて、排尿時間は長くなるという傾向が見られました。動物は生殖年齢を過ぎたあとに長生きしないため、これは人間にだけ見られる現象でしょう。

膀胱は緊張と弛緩を使い分けている

「約21秒」で尿が出切らず、尿がチョロチョロと出る。そんな現象が起こりはじめたら、「おしっこ年齢」が高齢になりつつあるサインです。これは、単に「おしっこが出にくくなって困るな」という話ではありません。

 

「おしっこ年齢」は、尿にかかわる膀胱や腎臓をはじめ、全身の健康状態を映し出す鏡。尿から健康を考えていくことで、「元気で長生き」が叶(かな)う確率も格段に高まるのです。

 

自律神経には、「緊張時に優位になる交感神経」と、「リラックス時に優位になる副交感神経」があるというのは、すでにご存じの方も多いことでしょう。

 

排尿においても、これらの神経が働いています。尿を溜める際に膀胱に作用しているのは、交感神経です。

 

交感神経が膀胱に作用している間は、膀胱本体の筋肉(膀胱平滑筋(へいかつきん))はリラックスしており、なおかつ膀胱の出口の筋肉(内尿道括約筋(かつやくきん))はギュッと締まっています。

 

「交感神経は緊張を司(つかさど)る」というと、筋肉は全般的に収縮するイメージがありそうですが、膀胱本体は弛緩しつつ、膀胱の出口は収縮しているのです。だから膀胱に尿を十分に溜めながらも、尿道から尿が漏れることはありません。

排尿を我慢しているときになにが起きているのか

ちなみに、尿を我慢するときに、わたしたちが意識的に力を入れるのは「外尿道(がいにょうどう)括約筋」という筋肉です。これは膀胱の出口にある内尿道括約筋のさらに下にあり、自律神経には支配されていません。

 

膀胱に尿が溜まってくると、膀胱の知覚神経から脳へと「もうすぐ容量いっぱいになりそうです」というメッセージが送られます。

 

すると脳から膀胱へ「では排尿しなさい」という指令が下り、膀胱に作用する自律神経が交感神経から副交感神経へと切り替わります。

 

そして尿が溜まるときとは逆に、膀胱本体の筋肉は緊張し、膀胱の出口の筋肉は緩みます。こうして膀胱から尿道へと尿が押し出され、排尿されるというわけです。

 

このように、一部の筋肉は収縮しながら、同時に一部の筋肉は弛緩しているというのが、出し切った後のスッキリ感につながっているといえるでしょう。

「健康的なおしっこ」の2つの条件

リラックス状態で、余計な緊張がなく、なおかつ使うべき筋肉は使っている。これは、いってみれば「最高のパフォーマンス状態」です。

 

排尿は、人が1日のなかでもっとも優れたパフォーマンスを発揮できる瞬間といってもいいかもしれません。尿意を感じて、トイレに行き、「約21秒」以内でスッキリ出し切る。

 

こんなふうに「健康的なおしっこ」とは、「いっさいストレスなく排尿できるもの」です。旭川医科大学の松本成史教授は、それを「快尿」と名づけました。

 

「快い」ときには脳内に満足ホルモンであるセロトニンが働いていることが知られていますが、排尿時にもセロトニンが膀胱の収縮に関係することが知られています。

 

では快尿の条件は何かというと、今の話からも、条件その1「尿が膀胱に十分に溜まること」、条件その2「尿が膀胱からスムーズに出切ること」の2点とまとめられるでしょう。

 

これらの条件が、加齢などによって失われてくると、さまざまな尿トラブルが現れるのです。

 

 堀江 重郎(ほりえ・しげお) 順天堂大学医学部教授、医学博士 1960年生まれ。日米の医師免許を取得し、米国で腎臓学の研鑽を積む。2003年帝京大学医学部主任教授、2012年より順天堂大学大学院医学研究科泌尿器科学主任教授。順天堂医院泌尿器科長。腎臓病・ロボット手術の世界的リーダーであり、科学的なアプローチによるアンチエイジングに詳しい。日本抗加齢協会理事長、日本メンズヘルス医学会理事長。著書に『うつかな?と思ったら男性更年期を疑いなさい テストステロンを高めて「できる人」になる!』(東洋経済新報社)、『LOH症候群』(角川新書)『寿命の9割は「尿」で決まる』『尿で寿命は決まる 泌尿器の名医が教える腎臓・膀胱 最高の強化法』(SB新書)、『二階から目薬』(かまくら春秋社)などがある。 ----------