公益財団法人日本漢字能力検定協会は、12月12日に今年の漢字を「税」と発表しました。
2023年は増税や減税、インボイス制度やふるさと納税など「税」に注目された1年だったと振り返ることが出来ます。
税負担の増減は生活に直結するため、関心の高いトピックです。同様に社会保障についても、国民健康保険料の上限引き上げが予定されています。
全ての方に影響があるわけでは無いですが、負担の増える方がいます。
主に自営業者などで社会保険に加入しない方が対象となりますが、どのような方に影響があるのか詳しく確認してみましょう。
※自治体によっては国民健康保険税とするところもありますが、本記事では国民健康保険料として記載します。
※編集部注:外部配信先では図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際はLIMO内でご確認ください。
【2024年度】国民健康保険料の上限が「また」引き上げへ
2023年10月27日に開かれた社会保障審議会医療保険部会において、2024年度の国民健康保険料の上限が2万円引き上げとなることがわかりました。
『上限』ですので、加入者の保険料が一律で2万円アップするわけではありません。
国民健康保険料は所得に応じて決定されます。ただし「上限」が設けられているため、一定の所得に達すると誰もが同じ保険料になるという仕組みなのです。
限度額(合計額)の超過世帯割合は1.4%台となっており、こちらを対象として上限の引き上げが行われる予定です。
厚生労働省の資料では、「中間所得層の被保険者の負担に配慮」「引上げにより、中間所得層の伸び率を抑えられる」との説明があり、加入者に配慮した改定と強調されています。
国民健康保険料の上限額、今はいくら?
では、現行制度において国民健康保険料の上限額はいくらになっているのでしょうか。
2023年度現在、保険料の上限は104万円(うち基礎賦課分65万円、後期高齢者支援金等賦課分22万円、介護納付金賦課分の17万円)です。
2024年度には後期高齢者支援金等賦課分が24万円に引き上げられることにより、合計は106万円となる予定です。
出所:厚生労働省保険局「国民健康保険の保険料(税)の賦課(課税)限度額について」© LIMO | くらしとお金の経済メディア
上限額引き上げに関係する年収の目安はいくら?
誰にとっても影響するわけではなく、あくまでも「上限に達する人」に関係がある今回の引き上げ。
では、2024年度の国民健康保険料の上限額の引き上げに関係があるのは、年収いくらの人が目安になるのでしょうか。
具体的な年収目安として、厚生労働省では以下のとおり試算を示しています。
・2023年度:給与収入 約1140万円/年金収入 約1140万円(給与所得 約960万円/年金所得 約960万円)
・2024年度:給与収入 約1160万円/年金収入 約1160万円(給与所得 約980万円/年金所得 約980万円)
※こちらは「扶養家族のいない単身世帯」での試算です。
年収1000万円前後の方は影響を受ける可能性がありそうですが、年収1000万円前後と言えば、さまざまな負担感が高まる年収ラインでもあります。
税金が高くなる、児童手当が対象外となる、などの声を聞いたことがある方もいるでしょう。
さらに国民健康保険料も上がるとなれば、負担に思う世帯も多いでしょう。ただし、上限額の引き上げは今に始まったことではありません。
国民健康保険料の上限額はこれまでも引き上げが続いている
国民健康保険料の上限額の引き上げは、ここ数年毎年のように行われてきました。例えば2000年の上限額を見てみましょう。
2024年が106万円なのに対し、2000年は60万円。実に24年で46万円も引き上げられたことになります。
下表を見るとわかるとおり、毎年のように「1万円~4万円」の増額が続いているのです。
出所:厚生労働省保険局「国民健康保険の保険料(税)の賦課(課税)限度額について」© LIMO | くらしとお金の経済メディア
政府は「賦課限度額超過世帯割合が1.5%に近づくように段階的に引き上げる」ことを目指すとしています。
例えば国保以外の被用者保険においては、最高等級の標準報酬月額に該当する被保険者の割合が0.5%~1.5%の間となるように法定されています。
国民健康保険料はいくらなのか
国民健康保険の保険料が気になる方もいるでしょう。ただし、実際の保険料は前年の所得や住んでいる地域によって異なります。
「医療分」「後期高齢者支援金分」「介護分(40歳以上65歳未満のみ)」の3つの合計となり、その3つごとに、次の項目で算出するしくみです。
・所得割:所得に応じて一定の割合がかけられた金額
・均等割:すべての人が均等に負担する金額
・平等割:世帯ごとに均等に負担する金額
・資産割:世帯員の固定資産税額に応じて負担する金額
出所:厚生労働省「国民健康保険の保険料・保険税について」© LIMO | くらしとお金の経済メディア
ただし、資産割などは自治体によって採用していないところもあります。そしてそれぞれの料率も自治体で異なるため、住む場所によって保険料は異なるということです。
参考までに、例えば新宿区の場合、年収400万円・単身世帯では年額の保険料が28万3547円になります。
これを10回にわけて納付するため、1回あたりの負担額は約2万8000円になります。
お住まいの自治体のHPでシミュレーションできるところもあるため、一度確認してみてはいかがでしょうか。
2024年度はまた国民健康保険料の上限が引き上げへ
ここまで国民健康保険の上限引き上げについて確認を行いました。
年収1000万円を境に所得制限には注意が必要です。また、過去と比較しても上限は上がっています。今後も少子高齢化などで負担が増える可能性もあるでしょう。
税や社会保障の負担が増すと、使えるお金が少なくなってしまいます。少しでも影響を少なくするのであれば、資産運用などを活用しお金に働いてもうらのが良いでしょう。
例えば、改定されるNISAなどには注目が集まっています。これまで以上にお金に対する意識は高まっていますから、税や社会保障の負担増にもしっかりと対応していきたいですね。
参考資料
・厚生労働省保険局「国民健康保険の保険料(税)の賦課(課税)限度額について」
・厚生労働省「国民健康保険の保険料・保険税について」
・新宿区「保険料の計算例について」