老後を不安にする「健康寿命」の判定方法とは? 「老いのプロ」が語る幸せな寿命の延ばし方 | ~たけし、タモリも…「1日1食」で熟睡&疲れナシ~

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『無敵の「1日1食」 疲れ知らずで頭が冴える!』
さあ、元気に歳でもとりますか!それに女性は明日の美しさを迎えにいこう。

「老いが怖い」と思っている人へ、「老い」の達人が初タッグで、「幸齢者」になる秘訣を語り尽くします!! 

 

大べストセラー『80歳の壁』著者の精神科医・和田秀樹さんと、90代のいばら道を痛快に切り開く評論家・樋口恵子さんが、『うまく老いる 楽しげに90歳の壁を乗り越えるコツ』で伝えたいこととは…!?

 

第2回前編では、「健康寿命」への思い違いを明かします。これを知れば、「長生きは怖い」「長生きはごめんだ」という思いが軽減されるでしょう。さらに、健康寿命を延ばす秘訣も伝えます。

老後を不安にする「健康寿命」の判定方法とは? 「老いのプロ」が語る幸せな寿命の延ばし方

老後を不安にする「健康寿命」の判定方法とは? 「老いのプロ」が語る幸せな寿命の延ばし方© 現代ビジネス

「長生きするのが怖いです」

樋口恵子私、この年になって感じますのは、みんな年をとることを恐れすぎているんじゃないか、ということなんです。

 

私は読売新聞の「人生案内」というコーナーで、長くいろんな方の悩みごとに回答していますが、60代半ばの女性から「長生きするのが怖いです」と相談されたことがありました。

 

この方は年金と少ない貯金で暮らしており、施設に入る余裕はないとのこと。認知症になったら困ると思って運動をして食事にも気をつけているそうですが、それが皮肉にも長生きにつながりそうで怖い、と。

 

こんなふうに長生きを恐れているのは、認知症になったり、寝たきりになったりして、介護が必要になる期間が長いという思いがあるんだと思います。

 

データでも、平均寿命から健康寿命を差し引いた年数が男性約9年、女性約12年と言われています。この長い期間に「生活に何らかの支障が出る」と言われ、みんなえらいこっちゃとなっているわけです。

 

介護費や医療費はどうするんだ、家族に迷惑をかけたくない、いや、そもそも面倒みてくれる家族がいない、生きていても楽しくなさそう……そんなこんなで長生きはごめんだとなっているんですね。

「健康寿命を延ばそう」の大合唱

和田秀樹実は、健康寿命については、ちょっとした思い違いがあるんです。今、樋口さんが言われた平均寿命と健康寿命の差ですが、これはまるまる要介護期間ではないのです。まず、基本データから見てみましょう。

 

厚生労働省(以下、厚労省)が2021年12月に発表した「健康寿命の令和元年値について」の資料では、男性は平均寿命81.41歳に対して健康寿命72.68歳、女性は平均寿命87.45歳に対して健康寿命75.38歳ということになっています。

 

このデータでは、男女ともに70代で健康寿命が終わっていることになりますが、ちょっと身近な70代の人を思い浮かべてください。

 

思っているよりずっと元気な人が多いと思いませんか。もちろん、70代で要介護になる人もいますが、今の70代の大多数は元気で、活動的で、おしゃれな方が多いです。

 

別のデータを見ると、70~74歳で介護保険の介護予防サービスと介護サービスを受給している人の総人口に対する割合は、男性4.4%、女性3.9%、75~79歳でも男性7.9%、女性9.1%と1割に満たないのです(「令和4年度 介護給付費等実態統計の概況」より)。

 

では、平均寿命と健康寿命の差、男性8.73年、女性12.07年とは何か? これを説明する前にお聞きしますが、健康寿命がどのように判定されているのかご存じですか?

 

樋口実は、私、それをお聞きしたかったんです。2000年代に入ったころからでしょうか、「健康寿命」という言葉が注目されるようになり、高齢社会白書などにも「健康寿命」という言葉が登場しました。

 

当時、地方に講演などに行きますと、「樋口先生、健康寿命って何ですか?」と質問されました。資料などで調べましても、何をもって「健康な時期」と「不健康な時期」に分けているのか基準がわかりにくいのです。正直に「よくわかりませ~ん」とお答えしていたんです。

 

とても言葉がいいものですから、みんな「健康寿命を延ばしたい」となり、今や「健康寿命を延ばそう」の大合唱。にもかかわらず、健康寿命の正体はぼんやりしたままです。いまさらですが、健康寿命とは何ものであり、どうやって判定しているんですか?

健康寿命はアンケートで決まっていた

和田厚労省の言う「健康寿命」の定義というのは、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」の平均年齢とされています。

 

この「健康上の問題で日常生活が制限」されるかされないかを分ける基準は、樋口さんのおっしゃるとおり、とてもあいまいなんです。簡単に言うと、アンケート調査というとても主観的なもので決められているのです。

 

樋口あら、アンケートですか。

老後を不安にする「健康寿命」の判定方法とは? 「老いのプロ」が語る幸せな寿命の延ばし方

老後を不安にする「健康寿命」の判定方法とは? 「老いのプロ」が語る幸せな寿命の延ばし方© 現代ビジネス

 

和田全国から無作為に選ばれた男女に、「あなたは現在、健康上の問題で日常生活に何か影響はありますか」という質問をします。「ない」と答えると「健康」、「ある」と答えると「不健康」とみなして算出したのが、健康寿命となります。

 

樋口主観によって決まるとすると、ふだんヨロヨロして、家族が介護しているのに、「まったくもって元気です」なんていう、ええかっこしいの人、これは男性に多い気がしますが、そういう人でも「健康」の部類になりますね。

 

反対に、何ごとも控えめに、おくゆかしくあれと育てられた世代の女性なんかは、「このごろは若いときのようにいかず、元気とも言えません」なんて控えめなことを言うと、「不健康」になってしまう。

 

そもそも生身の人間、ここまでが「健康」で、ここからが「不健康」というふうにハッキリ線引きすることじたいが難しいように思うんですが。

健康寿命を延ばしたければ病気を見つけるな

和田年をとれば何かしら病気が見つかりますから、「健康である」と自信を持って答えられる人はどれだけいるでしょうか。

 

それに、こういう主観に基づいて算出する方法の場合、健康診断で病気を見つければ見つけるほど、健康寿命は短くなっていきます。だから、健康寿命を延ばしたかったら、健康診断を受けないほうがいい、と私は思うんです。

 

樋口えっ!? 病気を見つけないほうが、健康? う~ん。

たとえば、高血圧症と診断されて、食事で塩分を控えないといけないだとか、薬を飲まないといけないとか、そういう人は高齢者に多いのですが、本人がそれを「制限がある」と考えるかどうか。

 

「その人の主観」によって、「健康寿命」が決まってしまっていたんですね。極端なことを言うと、そのときたまたま風邪をひいて体調が悪い人も「生活に制限がある」と答えるかもしれません。

 

つまり、男性約9年、女性約12年という期間には、ちょっとだけ生活に支障はあるけれど仕事や家事も現役でまだまだいろんなことができる人から、寝たきりで昼も夜も介護が必要という人まで、さまざまな状態が含まれているのです。

 

和田病気というのは、血圧や脂質異常といった数値上の「異常値」のことです。人間には“知らぬが仏”という側面があって、あなたは正常値ではないから病気です、

 

薬を飲みましょう、塩分を控えましょうと言うと、もともと具合は悪くなかったのに、気分がどんどん暗くなって、不健康な方向に傾いていってしまう。

 

最もいい例は、高齢者のがんです。がん検診でがんが見つかると、できるなら手術でとってしまいたいという人が多いです。

 

しかし、手術や抗がん剤治療をすると、それまで元気でふつうに生活していた高齢者でも、残念ながら多くの方は、足腰が衰えたり心肺機能が低下して、あっという間に要介護状態になっていきます。

 

がんは消えたけれど以前のような生活ができなくなってしまうなんてことが、多々起こり得るんですね。

 

がんというのは、高齢になれば増えていきます。80代、90代でがん検診を受ければ、かなりの確率でがんは見つかります。

 

かつて私が勤務していた浴風会(よくふうかい)は高齢者専門の総合病院ですが、がん以外の病気で亡くなった高齢者も、解剖させていただくと85歳以上ならまず間違いなくがんが見つかります。

 

高齢者の場合、がんが進行する前に寿命が来てしまうことが多いのです。残された寿命をどう元気にすごすかということを考えれば、高齢になったらがん検診は受けないほうが、天寿を全うできるし、幸せに生きていけると思うんです。

 

だから、健診やがん検診で病気を見つけないほうが、健康寿命も延びる。僕はそう思っています。

 

続きは<本当の「健康寿命」を知れば、親も自分も人生設計が大きく変わる! 「老いのプロ」が語るうまい老い方​>にて公開中です。