昨今、女性用メイクブランドからメンズ用商品の発売が相次いでいる。メンズコスメの市場規模もここ数年、右肩上がりで推移しており、美容に気を遣う男性も珍しくなくなっているが、昨年来の新型コロナウイルスの感染拡大を機にその流れがさらに加速しているようだ。
「もともと肌が乾燥気味だったので、マスクすれば潤うのではないか、と勘違いをしていました。潤うところか、肌荒れが悪化して白い粉が吹き出してくる事態に……。焦りました」
そう話すのは、メーカーで働く30代の男性会社員・Aさんだ。荒れる肌を見て「さすがにヤバイ」と思い、助けを求めたのは3歳上の姉だった。
「洗顔後と寝る前に、保湿を徹底した方がいいとアドバイスされ、めんどくさがりの僕に合うオールインワンタイプのクリームを買ってきてくれました。思えば、ニキビに悩んだ時も姉に助けられました」(Aさん)
姉からの保湿クリームを皮切りに、洗顔方法も見直したという。
「洗顔料を、顔に“ベタ塗り”状態でゴシゴシ洗っていました。しかも、テカリややベタつきがあった20代前半に使っていた、ごっそり洗浄する系のもの。年齢とともに、こういうものも見直さなくてはならないと反省し、保湿成分のある洗顔料に切り替えて、さまざまなものを試しました。徐々に効果は出てきて、少しずつ肌の具合が良くなってきています」(Aさん)
コロナ禍ではマスク生活だけでなく、オンライン会議も日常となった。それは自分の顔を見る機会が多くなることを意味する。広告代理店に勤務する40代の男性会社・Bさんは、そこで「俺ってこんな顔だったっけ?」とショックを受け、スキンケアやメイクに関心を持ち始めた。
「オンライン時代、嫌でも自分の顔を直視しなければなりません。思っていた以上にシミやシワが増えていて、老けたな、とショックでした。しかも黒ズミのせいか、顔の印象が暗くなっている気がしました。そこで百貨店の美容部員さんから話を聞いて、メンズラインが出ていた化粧品メーカーの洗顔料、化粧水、乳液を購入しました」(Bさん)
Bさんは周りの男性とも、スキンケアの話をするようになったという。
「これまで飲みの席では、ゴルフや野球、酒の話が多かったのですが、『最近、肌の手入れ始めたんだよ』と打ち明ける同期がいて、次々と『俺も』みたいな感じで会話が広がり、角質ケアについて盛り上がりました」(Bさん)
IT企業で働く20代の男性会社員・Cさんは、転職活動を機に清潔感の大切さを感じ、スキンケアや簡単なメイクにも挑戦している。
「転職用の写真を街中の写真機で撮影したら、あまりにもひどくて、スタジオで撮ってもらったんです。その時に軽くメイクをしてもらうと、見た目の清潔感が大幅にアップして驚きました。以来、無印良品でスキンケアアイテムを一式そろえて使っています」(Cさん)
20代の女子大学生・Dさんは、「男性も肌ケアはしておくに越したことはない」と力説する。
「きれいに越したことはないじゃないですか。以前、祖父母の家に帰省した時、兄の化粧水を見て、おじいちゃんは、『男なのに!?』と驚いていましたが、『男はそんなことしない』っていう時代はとっくに終わっている。むしろ、カミソリとかで男性の肌のほうが傷んでいるとさえ思います。
昨年の外出自粛中、兄は家でパックとかしていて、今は韓国コスメに興味津々。ますます美容に目覚めたようです」(Cさん)
コロナ禍で美に目覚めた男性たち。今後、さらなるコスメ市場の伸長に貢献していくのかもしれない。