医療保険が必要な人はどういう人なのか。
病気やけがで入院したり手術を受けたりすると、高額な医療費がかかる可能性があります。
そのような場合に、民間の保険会社が取り扱っている医療保険に加入していれば、給付金が受け取れるので支払い負担が軽減されます。
しかし、「医療保険はいらない」という意見や考えを目にしたり耳にしたりすることもあり、なぜいらないのか理由を知りたい方もいるでしょう。
この記事では、医療保険がいらないといわれる主な理由や、医療保険が必要なのはどのような人なのかを解説していきます。
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医療保険はいらない?その3つの理由とは
医療保険がいらないといわれる理由には、主に次の3つが挙げられます。
公的医療保険制度が充実しているから
日本では「国民皆保険制度」により、すべての国民が国民健康保険や勤務先の健康保険といった公的医療保険への加入が義務付けられています。
公的医療保険に加入していれば、医療機関の窓口で医療費を支払う際の自己負担額が、原則3割(年収や年齢によって1〜2割の場合もある)に軽減されます。
【医療費の自己負担割合について】
出所:厚生労働省「我が国の医療保険について」© LIMO | くらしとお金の経済メディア
医療費の中には、全額が自己負担になるものもありますが(先進医療の治療費や入院時の差額ベッド代など)、通常の医療費に関しては原則として3割の負担で済みます。
高額療養費制度により医療費が還付されるから
高額療養費制度とは、同じ月内(1日から月末まで)に支払った医療費の自己負担額が限度額を超えた場合に、後日還付される制度です。
出所:全国健康保険協会「高額な医療費を支払ったとき」© LIMO | くらしとお金の経済メディア
自己負担の限度額は年齢や所得などにより異なり、原則として所得が多くなるほど限度額も高額になります。
たとえば、年収が約370万円〜770万円(70歳未満・3割負担)の方が、1か月に100万円の医療費がかかった場合、窓口で支払う医療費は30万円です。
しかし、高額療養費として申請することで約21万2000円が還付され、自己負担額は約8万8000円で済むことになります。
出所:厚生労働省「我が国の医療保険について」© LIMO | くらしとお金の経済メディア
このように、高額な医療費がかかっても自己負担額は抑えられるので、医療保険がいらないといわれる理由のひとつとなっています。
保険料は高齢になるほど高くなるから
一般的に、医療保険は加入年齢が高齢になるほど保険料が高額になっていきます。加入年齢が異なるとどのくらい保険料が異なるのか、2つの医療保険で見てみましょう。
出所:各種資料をもとに筆者作成© LIMO | くらしとお金の経済メディア
【加入時年齢】 保険料(月額):保険料の差額
・【25歳】 904円:-円
・【40歳】 1339円:+435円
・【55歳】 2439円:+1535円
※加入条件:入院日額5000円、手術給付金5万円、先進医療特約あり
医療保険Aに25歳・40歳・55歳で加入した場合の保険料は上記の通りです。40歳で加入すると25歳で加入した場合と比べて435円高くなります。
55歳で加入すると1535円高くなり、年額に換算すると約1万8000円高くなることになります。
出所:各種資料をもとに筆者作成© LIMO | くらしとお金の経済メディア
【加入時年齢】 保険料(月額):保険料の差額
・【25歳】 1264円:-円
・【40歳】 2064円:+800円
・【55歳】 3939円円:+2675円
※加入条件:入院日額5000円、手術給付金5万円、先進医療特約あり
医療保険Bでは、40歳で加入した場合は25歳で加入した場合と比べると800円高く、55歳で加入すると2675円高くなります。年額に換算すると約3万2000円も高額になります。
同じ保障内容でありながら、加入時年齢が異なるとこれほど違いが出てくるのです。
医療保険が必要な方
前章で解説したように、医療保険がいらないといわれるには理由があります。しかし、次のような方には医療保険の必要性は高いといえます。
公的医療保障制度の対象外の医療費にも備えたい方
公的医療保険制度では、すべての医療費が対象になっているわけではなく、次のように対象外のものがあります。
・差額ベッド代
・健康診断
・予防注射
・美容整形
・歯列矯正 など
こういった治療を受けても、医療保険であれば保障対象になっているものも多く、医療費の支払い負担を軽減できます。
公的医療保険の対象外となる医療費にも備えたい方は、医療保険に加入すると保障の幅が広がるでしょう。
今後の公的医療保険制度に不安のある方
現在の公的医療保険制度は、医療費の自己負担が原則3割(1〜2割の場合もある)となっていますが、今後の国の施策によっては、自己負担割合が増えるなど医療費負担が増える可能性も考えられます。
公的医療保険による保障を受けられる条件が厳しくなっても経済的に苦しくならないよう、医療保険に加入することはひとつの選択肢となります。
治療や療養中の収入減少に備えたい方
病気やけがで入院や療養などをする間は、収入が減少することが考えられます。
会社員や公務員などが加入する健康保険からは傷病手当金が支給されますが、受給条件が定められているうえ、受給できるのは平均的な給与の3分の2程度です。
また、受給期間は支給開始日から1年6ヵ月と限られています。
自営業などが加入する国民健康保険には傷病手当金という制度がないため、休業中の収入補填ができません。
医療費の支払いが家計の負担を圧迫する場合は、医療保険に加入することで家計への影響を少なくできる可能性があります。
まとめにかえて
医療保険はいらないといわれる理由として、日本の公的医療保険制度が充実していることや高額療養費制度があること、高齢になるほど保険料が高くなることなどがあります。
しかし、医療保険は公的医療保険制度の対象外となる医療費にも対応しているほか、医療費の支払いが家計に与える影響を少なくしたい場合などにも役立ちます。
医療費に関する不安を感じることのないように、保障内容を理解し、ご自身やご家族にとって必要かどうかを判断することが大切です。
参考資料
・厚生労働省「我が国の医療保険について」
・全国健康保険協会「高額な医療費を支払ったとき」
・全国健康保険協会「病気やケガで会社を休んだとき」