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「ニキビは潰したほうが早く治る」は半分ホント…皮膚科医が解説「洗顔料、飲み薬、ニキビ跡」の最新知識

「赤ニキビ」はすでに症状が悪化している

日本人の9割以上の人が経験するにもかかわらず、セルフケアや対策について誤解が多いのがニキビです。

 

まず、赤く盛り上がった状態を見てニキビができたと思っている方は多いですが、実はこの「赤ニキビ」はすでに炎症を起こしている状態で、その前の状態である「白ニキビ」が初期段階なのです。

 

ニキビは正式名を尋常性痤瘡(じんじょうせいざそう)といい、毛穴で起こる慢性的な炎症疾患です。毛穴には皮脂腺がつながっており、皮脂腺からは皮脂がでています。

 

この皮脂の分泌が過剰になったことで、毛穴の中が皮脂や角質で充満し、毛穴の出口が詰まる「角化異常」が起こります。それによって白く盛り上がったコメドとよばれる状態となります。これが「白ニキビ」です。

 

この時、毛穴の中はアクネ菌が繁殖しやすい状態となり、炎症を引き起こすと「赤ニキビ」となります。これをそのまま放置してしまうと、シミや赤み、へこみやケロイドなどのニキビ跡として残ります。

 

皮脂の分泌が過剰になるのは、思春期のホルモン分泌の変動によるものです。30代になれば皮脂の分泌も落ち着きますが、思春期後にできる、

 

いわゆる「大人ニキビ」の原因はメイクが残ったことによる毛穴詰まり、洗いすぎ、こすりすぎによるものが多いです。女性の場合は生理周期の乱れなども影響します。

不織布マスクはニキビができやすい原因に

ニキビの原因として考えられているものとして、高GI食(食後の血糖値が上がりやすい食品)、高GL食(1食分で比較した時に食後の血糖値が上がりやすい食品)、乳製品、高脂肪食、チョコレートなどが挙げられます。

 

もちろんこれらの食品をまったく食べてはダメというわけではなく、バランスのとれた食事や快眠、快便が大切なのはまちがいありませんが、論文レベルで特定の食べ物の影響が明らかになっているわけではありません。

 

ビタミン剤のサプリについてはビタミンB2、B6は皮脂分泌を抑えるなどの論文がありますが、ではビタミンを飲めばニキビができなくなるのかについては、現状ではエビデンスレベルは高くありません。

 

現代社会でニキビができる原因になるものを挙げるとしたら、それはマスクです。蒸れたり擦れたりするため、肌に負担がかかります。特に不織布は擦れやすいため、ニキビができている方はもちろん、

 

できていなくても使用は最小限にとどめる、綿素材にするなどの対策が必要でしょう。また、肌に負担をかけるという点では、スクラブ入りの洗顔料は肌を傷つける恐れがあります。

ニキビができたら「洗顔はぬるま湯、肌をこすらない」

ニキビの予防やできてしまった肌の対策は、思春期もそれ以降も基本的には変わりません。大切なのは洗顔です。次の6つに気をつけて行うようにしましょう。

 

・洗顔の際は手を清潔にする。

・ぬるま湯で顔全体をやさしく洗う。

・洗顔料をよく泡立てて、肌をこすらないように洗う。

・泡が残らないようによくすすぐ。

・清潔なタオルで、こすらないようにして水分をとる。

・化粧水や乳液でスキンケアをする。

 

よくおすすめの洗顔料や保湿剤について聞かれますが、皮膚科専門医として推奨する洗顔料は、肌を刺激する可能性がある界面活性剤や添加物が入っていない固形石鹸です。

 

洗顔の回数は1日2回が推奨されています。石鹸を使った洗顔をやりすぎると逆に過度に乾燥してしまい、肌に負担をかけてしまいます。夏の暑い時期やスポーツで汗をかいた時は洗顔の回数を増やしても、石鹸を使用する回数は2回に留めましょう。

 

保湿剤は「ノンコメドジェニック」といって、ニキビの初期段階のコメドが発生しにくいように作られた化粧品を使うとよいでしょう。市販品にはノンコメドジェニックテスト済み、ノンコメドジェニック処方などの表記がされています。

「皮膚科に行けばすぐに治る」という誤解

正しいスキンケアを続けていてもニキビが治らない場合、早めに皮膚科の受診を検討してほしいと思います。

 

特に思春期のニキビの場合、親御さんは「たかがニキビでしょう?」「成長の過程、いずれ治るだろう」などと考えて放置してしまいがちですが、実はこれこそニキビに対する誤解なのです。

 

ニキビに気づくのは、赤ニキビができた時という方が多いですが、先述したようにこれは白ニキビが炎症を起こした状態です。

 

しかし、白ニキビの段階で治療をしたほうが治りも早いですし、ご自分では「赤ニキビが1つできただけ」と思っていても、実は他の所に白ニキビができていることが少なくありません。

 

今は毛穴の詰まりを改善する「アダパレンゲル」、毛穴の詰まりのほか、アクネ菌にも有効な「過酸化ベンゾイル」など、白ニキビの段階から治療できる保険適用の塗り薬があり、12歳から使用できます。症状によって飲み薬を併用することもあります。

 

ただし、薬を使用したからといって、すぐに治るわけではありません。短くても数カ月、症状によっては1年近くかかるのが一般的です。皮膚科に行けば1週間程度で治ると考えている方が多いのですが、これもニキビに対する大きな誤解です。

市販のセルフケアより、皮膚科で安く済む場合も

まず皮脂の分泌を正常にするだけでも1カ月はかかるので、根気強く薬を使う必要があるからです。

 

しかし、アダパレンゲルや過酸化ベンゾイルは塗った時に乾燥してヒリヒリすることや、場合によってはかぶれてしまうこともあります。正しく塗らなければ効果が出ないことなどから、使用をやめてしまう方も少なくありません。

 

皮膚科に通ってもニキビが治らないという患者さんが受診されることが稀(まれ)にあります。

 

聞くとアクネ菌を除去する「クリンダマイシンゲル」などの抗生剤の外用薬のみを長期間処方されているケースが多いのですが、それではニキビを根本的に治すことはできません。

 

必ず毛穴の詰まりを改善する薬と併用することが大切です。

 

また、市販されているニキビ専用の洗顔料を1カ月使い続けても効果がない場合も皮膚科を受診することをおすすめします。

 

悪化することはないと思いますが、完治が遅れ、一生残るニキビ跡になる可能性もあり、費用の面でも保険適用の薬を使ったほうがトータルで安く済むケースが多いからです。

 

そうやって適切な治療を続けていても治らない場合、最後の手段ともいえる選択肢が「イソトレチノイン」という内服薬です。

 

日本では未承認の薬なので保険適用外となりますが、アメリカのニキビ治療ガイドラインではニキビの第一選択薬となっています。

困っていても輸入品を買ってはいけない

ただ、重度のニキビや難治性のニキビに効果を発揮する半面、男性、女性共に胎児への影響をはじめ、肝機能異常、高脂血症などが副作用として挙げられています。

 

成長期の患者さんでは身長が伸びなくなるという副作用もあるため、15歳以下のお子さんや成長期で身長が伸びている方は服用もできません。

 

そのため、皮膚科専門医の指導の下、定期的な血液検査などを行いながら服用する必要があります。服用するタイミングや回数などもクリニックごとの判断となり、私も海外の最新の論文を参考に指示をしています。

 

最近、当院の患者さんにもいらっしゃったのですが、イソトレチノインについては海外からの個人輸入が問題になっています。米国食品医薬品局(FDA)からも注意喚起が行われており、厚生労働省のサイトにも掲載されています。

 

正規のものでない偽造品であるリスクだけではありません。実際に当院の患者さんでもイソトレチノインの服用量を変更後、血液検査で肝臓の異常が見られたケースがあるので、医師の指導なく服用量、方法を個人が決めるのは大変危険です。

昔にできたニキビ跡も治療で薄くすることが可能

最近はSNSなどの影響で、初めからイソトレチノイン目的で受診される患者さんも増えました。しかし、イソトレチノインは副作用のリスクだけでなく、保険適用でないこと、数カ月以上継続して使用しなければいけないことから費用も高額になります。

 

当院では20mgカプセル1カ月分で1万6500円(血液検査代別)です。イソトレチノインを希望する患者さんでも、まずは保険適用のニキビ治療を行うことを勧め、それでも治らなければイソトレチノインの服用を検討します。

 

ニキビ跡については、新しい治療法がどんどん出てきており、治療を行えるということが認知されつつあります。治療によって患者さんのQOLが上がることから、私も力を入れている治療のひとつです。

 

治療法はニキビ跡のタイプによって異なり、主に赤いニキビ跡、茶色いニキビ跡、へこんだニキビ跡、盛り上がったニキビ跡に分類できます。

 

赤いニキビ跡にはVビームのレーザー治療やBBLという光治療、茶色いニキビ跡はターンオーバーを促してメラニン色素の発生を抑えるハイドロキノンという塗り薬や、弱い出力で色素を徐々に破壊して跡を薄くしていくピコトーニングというレーザー治療などがあります。

 

赤いニキビ跡、茶色いニキビ跡ともに自然に薄くなっていきますが、早く治したいと治療を選ぶ方も多いです。

凹んだニキビ跡などの最新治療法

へこんだニキビ跡は、その部分の傷跡によってローリング型、ボックスカー型、アイスピック型の3タイプに分けられます。

 

主な治療法にレーザーや針でわざと皮膚に傷をつけ、真皮を刺激してへこみを盛り上げる炭酸ガスレーザーやピコ秒レーザーを用いたフラクショナル治療やダーマペンがあります。

 

また皮膚の繊維が癒着により下に引っ張られたことでできたボックスカー型のへこみに対する最新の治療法としてサブシジョンがあります。

 

これは針で癒着部分を切断することで、へこみをふっくらと盛り上げる方法です。ケロイドのように盛り上がったニキビ跡は、下に骨があるニキビにできやすく、ステロイドの塗布や注射で治療を行います。こちらは健康保険が使えます。

 

ニキビ跡はいくつかのタイプが混ざっていることが多く、異なる治療を行わなければいけないために費用も時間もかかります。

 

そこで、当院では盛り上がり以外のニキビの方には、始めやすいケミカルピーリングをお勧めしています。

 

レーザーや針を使う治療に比べると効果もマイルドではありますが、毛穴詰まりを解消する効果もあるため、ニキビ跡の治療をしながら新しくできるニキビを予防することも可能です。

「ニキビは潰したほうが早く治る」はウソ

よく「ニキビ跡を治したいが、皮膚科とエステどちらに行けばいいのか分からない」という声を聞きますが、ここで紹介したニキビ跡の治療は基本的に医療行為となるため、医師の指示の下、行わなければいけません。

 

以前、他のクリニックで100万円近くかけてニキビの治療をしてきたが治らなかった、と当院を受診された患者さんがいました。

 

しかし、診察したところ、その方がやっていたのはニキビ跡の治療のみで、新しくできたニキビの治療はしていませんでした。本来はニキビ、ニキビ跡がある場合、まずは保険治療でニキビを治してから、ニキビ跡の治療を始めるべきでしょう。

 

最後に、多くの方が誤解している「ニキビは潰したほうが早く治る」説にお答えします。基本的に潰すのは年齢に関係なくお勧めしません。特に年齢を重ねるにつれて肌のターンオーバーの周期も長くなるため、跡が残りやすくなります。

 

膿を出せばきれいになると思われがちですが、素人判断で潰すと跡が残ってしまいます。皮膚科で専用の細い針を刺し、穴を開けて膿を出してあげたほうが跡は残りにくくなります。

 

そもそも膿が溜まるかどうかはケースバイケースのため、開けずに治るかもしれないものを潰してしまうのはもったいないと思います。

 

ニキビ跡ができないようにするためにも、赤ニキビの状態で放置せず、早めに皮膚科を受診してください。

 

 花房 崇明(はなふさ・たかあき) 皮膚科医(医学博士) 医学博士(大阪大学大学院)、日本皮膚科学会皮膚科専門医、日本アレルギー学会アレルギー専門医、日本抗加齢医学会専門医、難病指定医。2004年大阪大学医学部医学科卒業。大阪大学大学院医学系研究科皮膚科学博士課程修了(医学博士取得)、大阪大学大学院医学系研究科皮膚科学特任助教、東京医科歯科大学皮膚科講師・外来医長/病棟医長などを経て、2017年千里中央花ふさ皮ふ科開院。2019年医療法人佑諒会理事長就任。2021年より近畿大学医学部皮膚科非常勤講師兼任。2021年分院として江坂駅前花ふさ皮ふ科を開院している。 ----------