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【58歳から元気になる方法】「運動はしたい…でも続けられない」人へ和田秀樹医師がアドバイス「我慢と無理はしてはいけない」

 

『80歳の壁』など数々のベストセラーを生み出す和田秀樹医師が、「58歳から元気になる方法」をテーマに、現役世代の悩みに答える。生活習慣の改善にとって重要なのは、「睡眠」「食事」「運動」とよく言われる。

 

しかし、特に運動の習慣がない人は「続かない」「体が痛くて動かせない」などの悩みを持つことが多い。和田医師が助言する。

 

 定年後を見据えて、「運動習慣はなかったが、やはり運動をしたほうがよいのか」と考える人は多いようです。

 

確かに、職場に毎日通勤する人が、定年後は自宅にずっといるようになれば、それだけで運動量は大幅に低下し、運動不足になりがちです。

 

コロナ禍の外出自粛の時期には老若男女を問わず、多数の人が同じ問題に直面したことでしょう。運動不足の影響は歳を取るほどに大きくなります。

 

特に高齢者は、使わない筋肉が萎縮する「廃用性萎縮」が起きやすいことに注意が必要です。風邪をこじらせたり骨折したりなどでしばらく入院するだけで、退院時には歩くのも困難になるような状態が生じやすくなります。

 

 年齢を問わず、使っている筋肉については、その負荷に応じて新たに作られる仕組みを筋肉は持っています。ところが新しい筋肉を作る機能は、加齢に応じて低下してしまいます。

 

筋肉を合成するのに働く成長ホルモンや男性ホルモンが減少し、食事で摂取したタンパク質が分解されて作られるアミノ酸から、筋肉が合成されるまで時間がかかるためです。

 

 その結果、歳を取るほど、運動不足などの影響が若い頃よりも出やすくなるわけです。

 

毎日の通勤がなくなる定年後に運動不足になることが明らかな場合、新たな生活習慣として筋肉を動かすための運動を取り入れることが対策になるのは間違いありません。

 

 走ることが好きならジョギングがいいでしょうし、バッティングセンターやゴルフの打ちっ放しが好きでストレス解消になるという人は、筋肉の量を減らさないためにも、ぜひ続けることをお勧めします。

運動は「無理にはしない」

 ただし、ストレスになるような運動の仕方は避けるべきです。日本人の死因第1位のがんをはじめとする様々な病気の予防には「免疫力の向上」が重要です。

 

ストレスは免疫力の低下を招きます。運動習慣のなかった人が嫌々ジムに通うとか、心身に鞭を打つようにしないと始められないという人は、あえて運動すべきではないでしょう。

 

 かくいう私も運動が大嫌いなので、一切していません。ただ、糖尿病があることがわかってからは、毎日歩くように心がけています。移動の際には1駅分だけ余計に歩くとか、なるべく30分以上は歩くようにしています。

 

 また、運動を頑張りすぎる人はかえって老化が進みやすいことも指摘しておきます。

 

カロリーを消費して効率よく脂肪を燃焼するには「有酸素運動」が推奨されますが、有酸素運動は体を酸化させる活性酸素も大量に発生させるものです。

 

活性酸素は細胞レベルで老化を進めてしまうので、有酸素運動は活性酸素対策とセットで行なわなければ、筋肉をつけるどころか老化が促進されてしまいます。

息が切れて運動が続かない

 40代を過ぎたあたりからは、多くの人が疲れやすさを実感し、駅などでは階段ではなくエスカレーターやエレベーターについ乗ってしまいたくなるものです。

 

しかし、それは体力が低下したからというより、年齢とともに体を動かす量が減ったせいと考えられます。

 

 体力(持久力)の指標として、「最大酸素摂取量」というものがあります。これは「体重1キログラムあたり、1分間に組織が酸素を取り込む最大の量」のことで、炭水化物や脂肪を酸素によって「燃焼」させてエネルギーを作り出す能力を表します。

 

 最大酸素摂取量は、20代以降はなだらかに低下していきますが、例えば30代で一念発起し、毎日トレーニングをすると向上させることができます。

 

加齢による衰えはあっても、80歳で一般の20代くらいの最大酸素摂取量を維持できるとされています。

 

 人間の体は使い続けることで、高いレベルを維持することができます。つまり、日常の中で体を動かしてさえいれば、若々しさを保つことができるということです。

 

運動習慣のなかった人が、定年後に週に1回、ジムに通ってトレーニングするよりも、毎日30分の散歩のほうが体力の維持にはつながりやすいはずです。

 

 また、放っておけば一定の割合で低下していく最大酸素摂取量に比べて、握力の低下は少ないというデータもあります。

 

日常生活で物を掴んだり握ったりする動作のおかげで、歳を取った後も若い頃とあまり変わらないことが知られています。

 

 息切れをして運動が続かないという人も、最初は無理をしないで歩くことから始めれば、そのうち楽に続けられるようになるでしょう。

 

一方、歩くだけで息が切れるという人は、私がそうだったように、心不全などの病気の可能性があるので、循環器内科などを受診して調べてもらう必要があります。心不全の場合、心エコー検査をすればすぐに有無が確かめられます。

痛みがある場合

 運動をしようにも、いざ始めると膝や腰、足首などの関節に痛みを感じてできないという人もいます。

 

骨や筋肉、関節などに痛みがある場合、整形外科を受診するのが一般的ですが、原因が明らかではない慢性痛に関しては、解決しないケースも多いようです。

 

 捻挫や関節炎など、X線検査などで疾患が明らかな場合を除き、慢性痛を取り除くには、整形外科よりもペインクリニックを受診するほうが治療の近道かもしれません。

 

 たとえば、痛みを取るには鎮痛剤より、抗うつ薬が効く場合があります。

 

神経細胞の接合部であるシナプス内でセロトニン濃度を高める働きをするSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)などは、人間に備わっている痛みをなるべく脳に伝えないようにする神経システムを活発化させ、慢性痛による痛み刺激に対して鈍感になる効果が期待できるのです。

 

 そのように、痛みに対して様々なアプローチを試してくれるペインクリニックで痛みを取り除いたうえでなら、運動を始めやすいかもしれません。少なくとも、痛いのを我慢して「健康のために」運動を続けるのは、本末転倒です。(了)

 

【プロフィール】

和田秀樹(わだ・ひでき)/1960年大阪府生まれ。東京大学医学部卒。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、立命館大学生命科学部特任教授、和田秀樹 こころと体のクリニック院長。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わっている。『80歳の壁』は2022年の年間ベストセラー総合第1位(トーハン・日販調べ)に。