「後悔しない生き方」をする人ほど、深く後悔することになる…全米大ヒット本が「もっと後悔しろ」と説 | ~たけし、タモリも…「1日1食」で熟睡&疲れナシ~

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「後悔しない生き方」をする人ほど、深く後悔することになる…全米大ヒット本が「もっと後悔しろ」と説く理由

仕事でミスをしたとき、あなたは「後悔しても仕方がない」と切り替えるだろうか。米ベストセラー作家、ダニエル・ピンクさんは「後悔という感情はネガティブな側面ばかりではない。実は後悔する人ほど、その後成功しやすい傾向にある」という――。
 

※本稿は、ダニエル・ピンク『THE POWER OF REGRET 振り返るからこそ、前に進める』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

後悔しないのはもったいない

研究によると、後悔の感情に適切に対処すれば、三つの大きな恩恵が得られる。その三つの恩恵とは、①意思決定の質が改善すること、②課題に対するパフォーマンスが向上すること、③人生の充実感が高まることである。

1.意思決定の質が改善する

次の設例を考えてみてほしい。

あなたは古いアコースティックギターを手放すことにした。幸い、隣人のマリアが中古のギターを探している。マリアはあなたに、いくらで売るつもりがあるかと尋ねた。

 

あなたは、そのギターを五〇〇ドルで購入していた。さすがに、中古で同じ値段は取れない。三〇〇ドルで売れればうれしいけれど、それでは高すぎるように思える。

 

そう考えて、あなたは二二五ドルでどうかとマリアに言う。おそらく値引きを求められるだろうから、最終的に二〇〇ドルで話がまとまればいい、と考えたのだ。

 

ところが、マリアはあっさり二二五ドルで買い取ることに同意し、その金額を支払った。

さて、あなたは後悔を感じるだろうか。

「もっと強気に出ていれば…」という経験が教訓に

おそらく、あなたは後悔するのではないか。実際、そのような反応を示す人が多い。中古ギターの売却以上に損得が大きい局面になると、この傾向はいっそう強まる。

 

相手がこちらの最初の提案をあっさり飲んだ場合、私たちはたいてい、どうしてもっと強気に出なかったのかと、自分を責める。

 

しかし、自分が後悔の気持ちをいだいていると認めることにより――つまり、不愉快な感情を追い払うのではなく、招き寄せることにより――その後の意思決定を改善できる可能性がある。

 

たとえば、現在コロンビア大学に在籍するアダム・ガリンスキーと三人の社会心理学者が二〇〇二年に実施した研究では、交渉で最初の提案が受け入れられた人たちを対象に調査をおこなった。

 

その人たちに、もしもっと強気の提案をしていたら、どれくらい好ましい結果を得られていたと思うかと尋ねたのだ。すると、この問いに対して深い後悔を示した人ほど、その後の交渉に向けて時間をかけて準備する傾向が見られた。

事前に情報を集め、選択肢を増やすようになる

また、ガリンスキーがカリフォルニア大学バークレー校のローラ・クレイ、オハイオ大学のキース・マークマンとおこなった研究によれば、過去の交渉を振り返り、どのような行動を取らなかったことを後悔しているかを考えた人は、その後の交渉でよりよい意思決定ができるという。

 

いくつかの研究によると、最も大きな好影響は、いわば「意思決定の衛生環境」が向上し、健全な意思決定を妨げる要因が減ることだ。後悔の感情を深くいだくと、意思決定のプロセスが改善される。マイナスの感情がもたらす痛みにより、意思決定のペースが減速するからだ。

 

それまでよりたくさんの情報を集めたり、幅広い選択肢を検討したりするようになり、結論を導き出すまでにじっくり時間をかけるようになる。

 

より慎重に段階を踏むようになる結果、確証バイアスなどの認知上の落とし穴にはまりにくくなるのである。ある研究でCEOたちに過去の後悔について考えるよう促したところ、「将来の意思決定に好ましい影響が及ぶ」ことがわかった。

後悔すると、人は粘り強くなる

2.課題に対するパフォーマンスが向上する

アナグラム(言葉や単語の文字を並び替えてほかの言葉を作ること)は心理学研究の定番の素材と言ってもいい。

 

たとえば、キース・マークマン(前出の交渉に関する研究をおこなった研究者のひとりだ)が二人の共同研究者とおこなった研究でも、アナグラムを用いた。

 

実験参加者たちに一〇問のアナグラムを解かせ、正答率が半分にとどまったと伝えた。そして、そのうえで実験参加者が少し後悔するように仕向けた。

 

こんなふうに語りかけたのだ。「目を閉じて自分の成績を思い浮かべ、もっとよい成績を挙げられた可能性と比較してみましょう。あなたの実際の成績と、あなたのありえた成績をありありと想像してください」

 

すると、実験参加者たちの頭の中に、「もし~~していれば……」という思考が駆け巡りはじめる。その結果、この人たちは気分が悪くなる。少なくとも、「せめてもの幸いは……」と考えるよう促された実験参加者たちよりは気持ちが沈む。

 

しかし、もう一度、アナグラムを解かせると、後悔の感情をいだかせた実験参加者たちは、そうでない人たちに比べて多くの正解を導き出し、粘り強く問題に取り組んだ。

もちろん、くよくよと悔やみ続けるのは逆効果だが…

この点は、後悔に関する重要な学術的発見のひとつだ。後悔の感情は粘り強さを引き出す場合があるのだ。課題に粘り強く取り組めば、ほとんどの場合、パフォーマンスも向上する。

 

研究者のニール・ローズは、反実仮想に関する研究の先駆者のひとりだ。ローズも初期の有力な研究でアナグラムを用いている。

 

その研究によると、実験参加者に「もし~~していれば……」という思考をいだかせると、アナグラムの問題で正解に到達する数が増え、正解を導き出すまでに要する時間も短くなったという。

 

もちろん、後悔がつねにパフォーマンスを向上させるわけではない。いつまでもくよくよと悔やみ続けたり、頭の中で失敗を何度も思い返したりすれば、逆効果になりかねない。また、後悔する対象を誤れば、パフォーマンスの改善には結びつかない。

 

たとえば、ブラックジャックの戦略を後悔するのではなく、赤い野球帽を被ってカジノに出掛けたことを後悔しても、効果はない。それに、過去の行動を後悔する際は、ときに激しい苦痛に押しつぶされそうになることもある。

 

しかし、ほとんどの場合、「もし~~していれば……」と少し考えるだけでも、その後のパフォーマンスが改善する。

“ギリギリ落ちた”経験のある人は成功しやすい

挫折をきっかけとした後悔の感情は、キャリアに好ましい影響を及ぼす可能性もある。ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院のヤン・ワン、ベンジャミン・ジョーンズ、ダシュン・ワンによる二

 

〇一九年の研究では、権威ある国立衛生研究所(NIH)の助成金に応募した若手科学者たちのデータを一五年分調べた。

 

まず、助成金支給の当落線上の評価を受けた一〇〇〇人以上の科学者を選び出した。このうちの半分は、辛うじて助成金を受給できた人たちだ。

 

この面々は、後悔を感じずに済む。もう半分は、あと一歩で助成金を受給できなかった人たちだ。この面々は、後悔をいだかずにはいられない。

 

ワンらの研究では、これらの科学者たちのキャリアがその後どうなったかを調べた。すると、長い目で見ると、あと一歩で助成金を受給できず、「もし~~していれば……」と感じた科学者たちのほうが一貫してパフォーマンスがよかった。

 

彼らは、その後に執筆した論文の引用件数が格段に多く、いわば「ヒット論文」を発表する確率が二一%高かった。失敗の経験が成功への燃料になったのだと、この研究では結論づけている。

 

あと一歩で助成金を受給できなかった経験は、おそらく後悔の感情を生み出しただろう。その結果、じっくり反省して戦略を見直し、それがパフォーマンスの改善につながったのである。

「もし違う道を選んでいたら…」と考えてみる

3.人生の充実感が高まる

二〇一〇年、前出のクレイ、ガリンスキー、ローズを含む社会科学者たちがノースウェスタン大学の学部学生たちに、進学した大学と、大学での友人の選択についての反実仮想を促した。

 

もし別の大学に進んでいたら、もしほかの人たちと友人になっていたら、と想像した人たちの反応は、実際に取った選択がいっそう価値あるものに思えてきたというものだった。

 

「反実仮想をおこなうと、人生における大きな経験とこれまでの人間関係がより大きな意味をもつように思えてくる」と、この研究は結論づけている。

 

こうした効果は、まだ若くて、自分のことばかり考えている時期にだけあらわれるものではない。ある研究によると、人生の重要な経験について反実仮想をおこなった人は、その出来事の意義そのものを意識的に考えた人に比べて、その出来事に大きな意味を見いだすという。

 

過去の経験の意味を直接的に検討するよりも、「もし~~していれば……」もしくは「せめてもの幸いは……」という反実仮想を通じて間接的に考えるほうがその経験を有意義なものと感じやすいのである。

“後悔”を正しく扱えば強いパワーになる

また、人生の経験について反実仮想をおこなうと、単にその経験そのものを振り返るよりも、強力な宗教的感覚と深い意義を感じることができる。このような思考は、愛国心や組織への忠誠心を強める場合もあるという。

 

ここで紹介した研究は反実仮想全般をテーマにしたものだが、その中でも後悔とはとりわけ、人生の充実感を高め、充実した人生に向けて生きるよう人々を後押しする効果が大きい。

 

たとえば、過去の行動を後悔することを軸に「人生の振り返り」を実践すると、人生の目標を修正し、新鮮な気持ちで生きられるようになる場合がある。

 

正しく扱えば、後悔は私たちをよりよい人間にする力をもっている。後悔の力を理解することにより、意思決定の質が改善し、パフォーマンスが向上し、人生の充実感が高まる。問題は、私たちが後悔を正しく扱えない場合が少なくないことだ。

 

ダニエル・ピンク(だにえる・ぴんく) 作家 1964年生まれ。ノースウェスタン大学卒業、イェール大学ロースクール修了。米上院議員の補佐官、ロバート・ライシュ労働長官の補佐官兼スピーチライターを経て、1995~97年はアル・ゴア副大統領の首席スピーチライターを務めた。フリーエージェント宣言後は、ビジネス・経済・社会・テクノロジーをテーマに、記事や論文の執筆、講演などに従事。行動科学をテーマにしたテレビ番組の共同プロデューサーを務めたこともある。 過去の著書はこれまでに42カ国語に翻訳されており、すべての日本語版が出版されている。『フリーエージェント社会の到来』(ダイヤモンド社)、『ハイ・コンセプト』(三笠書房)、『ジョニー・ブンコの冒険』『モチベーション3.0』『人を動かす、新たな3原則』『When 完璧なタイミングを科学する』(以上、講談社)がある。世界のトップ経営思想家を選ぶ「Thinkers50」の常連で、2021年のランキングでは9位に選出。 --------