「インフルエンザ」にかかりやすい人とかかりにくい人、その違いは意外なところにあった | ~たけし、タモリも…「1日1食」で熟睡&疲れナシ~

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『無敵の「1日1食」 疲れ知らずで頭が冴える!』
さあ、元気に歳でもとりますか!それに女性は明日の美しさを迎えにいこう。

日本人には、日本人のための病気予防法がある! 同じ人間でも外見や言語が違うように、人種によって「体質」も異なります。そして、体質が違えば、病気のなりやすさや発症のしかたも変わることがわかってきています。

 

欧米人と同じ健康法を取り入れても意味がなく、むしろ逆効果ということさえあるのです。見落とされがちだった「体の人種差」の視点から、日本人が病気にならないための方法を徹底解説!

体質とは何か

体質とは何でしょう。じつは「体質」という言葉は最近の医学書には登場しません。昔はその人の体に本来備わった特徴を「体の性質=体質」と呼んでいました。

 

たとえば虚弱体質といえば、顔色が悪く、やせて体力がなくて、病気になりやすい人のことです。質の一字だけを使って、ちょっと優雅に「蒲柳之質」と言うこともありました。

 

蒲柳はカワヤナギやネコヤナギの別名で、木が柔らかく、秋になると他の樹木より早く葉がハラハラと散り始めることから、虚弱体質を蒲柳にたとえるようになったようです。

 

蒲柳之質の反対に、体が丈夫で頑健であれば「松柏之質」です。こちらは松やヒノキ、サワラなどの常緑樹のこと。冬もずっと葉を茂らせていることから、丈夫な体を指して使われるようになりました。

 

体は誰にとっても大切で身近なものなので、体質の話は頻繁に会話にのぼります。

「酒が飲めない体質だから、いつもノンアルコールにしてるんだ」

「あのサプリ、脂肪が燃えやすい体質になるんだって」

体質という言葉を使わないこともあります。

 

「アボカドはなんか合わないみたいで、食べたあとで胃がもたれる感じがするんだよね」

「あの子、なんべんでもインフルエンザ拾ってくるの。主人も子供のころそうだったらしいから、そういうたちみたい」

 

言い換えると、自分はアボカドが食べられない体質だ、うちの子はインフルエンザにかかりやすい体質だ、ということです。

 

さて、冒頭で書いたように体質がその人の体に本来備わった特徴のことであるなら、一生を通じて変わらないはずです。しかし実際には、これまでなんともなかった人が突然花粉症になった、

 

ランニングに打ち込むようになったら風邪を引かなくなった、というように、体質が変わったとしか考えられない現象が起こります。生まれもったものが変わるなんて、そんなことがあるのでしょうか?

 

では、ここで辞書を引いてみましょう。『大辞泉』は体質をこう定義しています。

 

たい-しつ【体質】

1 からだの性質。遺伝的素因と環境要因との相互作用によって形成される、個々人の総合的な性質。「風邪をひきやすい体質」「特異体質」

2 団体・組織などがもつ、性質や特徴。「日本人の体質に合わない思想」

2は1の意味を人間集団や組織にあてはめたものですから、ここでは1の定義を見てください。「からだの性質」は良いとして、注目してもらいたいのが「遺伝的素因と環境要因との相互作用によって形成される」という部分です。

 

体質というと、生まれつき備わった遺伝的素因だけに目を向けがちですが、環境要因も体質に大きな影響をおよぼすと考えられていることがわかります。

 

ここでいう環境要因は、食生活、喫煙、気候、細菌やウイルス、紫外線、運動、ストレス、睡眠など、体に影響を与えうるすべてのできごとと行動を含みます。

 

じつは、この定義は、病気が起きる原因について昔から医学者たちが考えてきたものと同じなのです。

 

図1-1を見てください。これは医学・医療分野の学生が必ず学ぶ、古典的な模式図です。

「インフルエンザ」にかかりやすい人とかかりにくい人、その違いは意外なところにあった

「インフルエンザ」にかかりやすい人とかかりにくい人、その違いは意外なところにあった© 現代ビジネス

 

病気の発生には、遺伝的素因と環境要因がさまざまな割合で関係することが描かれています。図の左上に近いほど遺伝的素因の影響が強く、逆に右下に近づくにつれて環境要因の影響が強まります。

 

このなかで遺伝的素因が大きな原因となって発生するのが遺伝子病、環境要因の影響が大きいのが骨折などのケガです。

 

遺伝子病は遺伝子の異常により発生する病気のことです。筋ジストロフィー、血友病、家族性高コレステロール血症などが有名ですが、遺伝子の異常は突然変異で起きることもあるので、親から受け継いだとは限りません。

 

また、骨折のうち、骨がもろくなって発生する骨粗鬆症は遺伝的素因がかなりの部分を占めることが明らかになっています。そのため、高齢者の転倒による骨折に限っては、もっと左に寄った位置にきます。

 

そして、遺伝的素因と、生活習慣を含む環境要因の両方が発生に影響するのが、糖尿病などの生活習慣病、がん、感染症です。

 

このように病気の発生にかかわる体質にも、遺伝子によって決まり、基本的に一生変わらない部分と、生活環境やストレス、食生活や運動などの生活習慣によって変わる部分があり、日常生活においては、これらをひっくるめて、ばくぜんと「体質」と呼んでいます。

 

そのため本書でも、「遺伝的素因と環境要因との相互作用によって形成される、その人の体が持つ性質と特徴」を体質と考えることにします。

体質には遺伝と環境がからみあう

さて、この図1-1を見ていると、こんな疑問が浮かびませんか。

「生活習慣病は遺伝に加えて生活習慣が関係するっていうのはわかるけど、がんはよくわからない。それに感染症に遺伝なんてあるんだろうか。たまたま悪い細菌やウイルスが体に入ったってだけじゃないの?」

 

確かに、がんというと、遺伝をのぞけば何となく運が悪くて発症するイメージがあります。しかし、おそろしい病気とされるがんも、始めは1個の小さながん細胞に過ぎません。

 

それが細胞分裂を繰り返しながら大きくなって、次第に病気としてのがんの症状があらわれます。ところが体の中にがん細胞が生まれても、全員ががんという病気を発症するわけではないのです。なぜでしょうか。

 

これは感染症も同様です。身近な例としてインフルエンザで考えてみましょう。冬になるとインフルエンザが流行しますね。ところが不思議なことに、毎年のようにインフルエンザになる人がいるかと思えば、生まれてから一度もかかったことがない人もいます。

 

インフルエンザワクチンは有効ですし、うがいや手洗い、マスクの着用も重要です。

 

しかし、これらの対策をしっかりおこなっても感染しやすい人がいるのです。結核やエイズ(HIV)も同じで、細菌やウイルスなどの病原体に接触しても、すべての人が感染するとは限りません。ここに関係するのが遺伝的素因です。

 

近年、病原体の感染しやすさにかかわる遺伝子が次々に見つかっています。たとえば2015年には、8番染色体に存在する、ある遺伝子に変異が起きると結核菌に感染しやすくなることが示されました。

 

ここで簡単に説明しておくと、8番染色体とは染色体につけられた番号で、遺伝子の住所のようなものです。個人の遺伝情報が記録されたDNAは細長い糸のような構造をしています。

 

これが複雑に折りたたまれ、8番染色体を含む22組の常染色体と、1組の性染色体に分かれた状態で、全身にある37兆個の細胞一個一個に入っています。

 

この研究から、8番染色体の、ある遺伝子に小さな突然変異が起きて遺伝情報が書き換えられると、結核菌に感染しやすくなるだけでなく、症状も起きやすいことがわかりました。遺伝子変異は遺伝子の一部にキズがつくことと考えてください。

 

このように、感染症の発症にも遺伝子変異を含む遺伝的素因が関係することが明らかになってきています。しかし、ここが肝心なのですが、この遺伝子に変異が起きたら全員が結核に感染するかというと、これまた、そうではないのです。

 

あくまでも「発症する可能性が高くなる」だけです。これは感染症だけでなく、がんや生活習慣病でも見られる現象で、その理由はいくつかあります。

 

まず、たいていの病気には複数の遺伝子が関係しており、遺伝子変異が1ヵ所で起きただけで病気が発生するのはまれです。

 

また、体には、がん化した細胞や、体に入り込んだ病原体を、殺したり、体の外に追い出したりする防衛機能があります。この機能にも遺伝的素因にもとづく個人差があるので、同じように危険にさらされても誰もが病気になるわけではありません。

 

そして、もう一つが遺伝子の発現の問題です。「遺伝子の発現」というのは、ちょっととっつきにくい表現ですが、ここでは、「遺伝子が実際に作用するかどうか」と考えてください。

 

じつは、遺伝子に書き込まれた遺伝情報がどうであっても、その遺伝子が必ずしも作用するとは限らないことがわかっています。

 

例として一卵性双生児で考えてみましょう。一卵性双生児はまったく同じ遺伝子を持っているので、顔もそっくりなら、同じような病気になりやすいといわれています。

 

しかし実際には、年齢を重ねるにつれて二人の見た目や、受ける印象がかなり違ってくることが珍しくありません。また実際に調査したところ、二人そろって同じ病気になる確率は意外なほど低かったのです。

 

なぜこんなことが起きるかと言うと、遺伝子にはスイッチがあって、生活習慣を含む多くの環境要因がスイッチを入れたり切ったりすることで遺伝子の作用を調整しているからです。

 

この仕組みを「エピジェネティクス」と呼び、病気の発症にも大きな影響をおよぼします。

 

病気と関連する遺伝的素因を両親から受け継いでいても、成長してから遺伝子にキズがついても、何らかの環境要因が遺伝子の作用にブレーキをかけてくれれば病気になることはないのです。

 

図1-2に、遺伝子に起きる変化を絵で示しました。

「インフルエンザ」にかかりやすい人とかかりにくい人、その違いは意外なところにあった

「インフルエンザ」にかかりやすい人とかかりにくい人、その違いは意外なところにあった© 現代ビジネス

先に書いたように、一人一人の遺伝情報はDNAという物質に記録されています。

 

DNAは細長い糸のような構造で、そこに、その人を特徴づけるさまざまな情報が並んでいます。ここでは、遺伝子をロボットであらわしました。かつては、親から受け継いだ遺伝子は、一生変わることなく体内で作用し続けると考えられていました。

 

しかし、生まれもった遺伝子に変異が起きて、その作用が変わり、病気になりやすい遺伝子ができてしまうことがあります(図上:黒いロボット)。

 

その一方で、環境要因の影響を受けて遺伝子の作用が強まったり弱まったりするのがエピジェネティクスという現象です。遺伝子変異によって病気になりやすい遺伝子ができても、その遺伝子のスイッチがオンにならない限り、病気になることはありません(図中:黒いロボット)。

 

また、遺伝子に不都合なオン、オフが起きたとしても、遺伝子そのものが変わってしまったわけではないので、遺伝子に影響を与える環境要因を変えることで、オン、オフを元に戻し、病気を予防ないし治療できる可能性があります(図下)。

 

遺伝子変異も、エピジェネティクスによる遺伝子のオン、オフも、一生続いたり、そのまま子孫に伝わったりすることがあります。大切なことは繰り返し説明しますので、ここでは、こんなことが起きるということだけ理解しておいてください。