ハムやソーセージなどの加工肉を食べるとがんになりやすくなるという報告があります。しかしこのデータは日本人も鵜呑みにしていいものではありません。わかりやすく解説します。© All About, Inc.
Q. ハムやソーセージを食べると、がんになるって本当ですか?
ソーセージやハムなどの加工肉には、加工の際に亜硝酸ナトリウムや硝酸カリウム、硝酸ナトリウムなどの食品添加物が使われます。そのため、発がん性があり危険だと言われることがありますが、実際にどうなのでしょうか?
Q. 「ハムやソーセージなどは、発がん性が高いと聞くことがあります。健康のために、ハムなどを食べるのはやめるべきでしょうか?」
A. 「食品添加物だから危険」と言う考え方は誤りです。また海外の報告は、必ずしも日本人に当てはまりません
ハムやソーセージなどの加工肉の危険性は以前から言われていますが、特にWHOが2015年に発表した「加工肉を毎日食べた場合、50gごとに大腸がんを患う確率が18%上昇する」という報告は、当時とてもセンセーショナルに報道されました(『IARC Monographs evaluate consumption of red meat and processed meat(英語)』)。
では、日本人も加工肉を食べるのはもうやめた方がよいのかというと、それは違います。
まず、問題になっている食品添加物についてですが、日本には非常に厳しい基準があります。日本国内で販売されている加工品に使用されている添加物については、人体への危険性はなく、安心して食べられると考えてよいでしょう。
また、日本人の加工肉の摂取量についても、考慮する必要があります。
厚生労働省の調査によると、日本人のハム、ソーセージ類の消費量は1日あたり13.4g。「加工肉を毎日50g以上食べたとき」という前提条件に、そもそも当てはまらない消費量なのです。
毎日毎食、たくさんのハムやソーセージを食べているという方はほぼいないのではないでしょうか?海外の食生活と、日本の標準的な食生活の違いを考えるべきです。
一方で、日本人の発がんリスクの研究を見てみると、「加工肉に限らず、肉をたくさん食べていると、結腸がんになりやすくなる」「飲酒や肥満は大腸がんリスクを増大させる」といった報告があります。
食品以外では、喫煙習慣があることや、運動習慣がないことなども、がんリスクを上げることがわかっています。「食事は偏らずにバランスよく。タバコはやめて、適度に運動する」ことが大切なのです。
日本人には、ハムやソーセージを制限する以上に、効果的ながん予防法があるということですね。ソーセージやハムなども美味しい食品ですから、適量を普通に楽しめばよいのです。
心身ともに健康的で豊かな食生活を送れるように、日本の食卓の内容に見合った、正しい情報を適切に選べる力を身につけてください。
※参考:令和元年国民健康・栄養調査(厚生労働省)
▼平井 千里プロフィール
メタボ研究を行いエビデンスに則ったダイエットを教える管理栄養士。小田原短期大学 食物栄養学科 准教授。女子栄養大学大学院(博士課程)修了。前職の病院での栄養科責任者、栄養相談業務の経験を活かし、現在は教壇に立つ傍ら、実践に即した栄養の基礎を発信している。