最近、「ほめて子どもを伸ばすしつけ」「子ども成績をアップさせるほめ方」といった内容の本がよく売れているようです。ところが、「うちの子は、ほめられると図に乗るのよね」「せっかくほめてあげたのに、ちっともうれしくなさそう」といったお母さんたちの本音も、よく聞かれます。
ほめてもらえば、誰だってうれしくなるもの。とはいえ、ただやみくもにほめ言葉をかければいい、というわけではありません。子どもにうれしく感じてもらうには、ほめ方のポイントがあるのです。
■子どもがうれしくなるほめ方とは?
育児書などには、よく「子どもが何かを達成したら、その場でほめてあげましょう」と書いてあります。そのため、子どもが何かをするたびに、「すごいね~!」「えら~い!」とオーバーにほめたたえる親が増えました。
しかし、こんな風にほめられても、子どもはうれしく感じるでしょうか? 「このくらいでほめてもらえるの?」「ちょろいもんだ」と親が甘く見られたり、「なんでほめるんだ?」
「ちょっとヘン」と冷めた目で見られるのがオチです。つまり、オーバーにほめられても、心のこもったほめ言葉とは受け取れないのです。
子どもの心にいちばん響くのは、素直に感じた「感動」のフィードバック。たとえば、自分が描いた絵に、
「お! この表情、いいね」と反応してもらえたり、テーブルセッティングを手伝った後に、「わぁ! きれいに並べてくれてありがとう」と、喜びのこもった感謝の気持ちが伝えられること。こうした、心から漏れる一言を伝えられると、うれしくなるのです。
もうひとつは、子ども自身が取り組んだ物事の「プロセス」や「クオリティ」がほめられること。たとえば、テストでいい点数をとれたとき、「この問題、苦戦してたのによくできるようになったね」
「ここ、ひっかけ問題なのに解けたんだね」というように、中身(プロセスやクオリティ)をよく見てほめること。すると子どもは、「うちの親、分かってくれてるなぁ」という満足感を感じるのです。
■子どもがさびしくなるほめ方とは?
ところで、親は何気なくほめているものですが、ほめ方を間違えると、子どもの心をさびしくさせてしまうことがあるので、要注意なのです。
さびしくなるほめ方のひとつは、「何かをさせよう」という意図のあるほめ方をされたときです。たとえば、描いた絵を「上手ね~!」とほめられた後、「じゃあ、これもやってみよう」と問題プリントが渡される。
お手伝いをして「えらいわね~!」とほめられた後、「これもできるよね」と新しい仕事を与えられる。
このように、ほめ言葉がいつも要求と抱きあわせになっている場合、子どもはほめられて操作されるさびしさを感じるものです。
もうひとつは、「結果」だけを見てほめられたときです。テストで100点をとったときに、「100点」という結果だけをほめられると、そのときはうれしく感じても、「次もパーフェクトじゃないと、ほめてもらえないかも」という不安を感じてしまいます。
また、兄弟のなかで、いつも「よくできる子」の方だけがほめられていると、「親は結果だけしか見てくれない」「親の愛情を得るには、結果を出さければならない」というむなしさとプレッシャーを感じてしまいます。
■「言葉」より「気持ち」を受け取っている
人はほめられたときに、「言葉」そのものより「気持ち」のほうを敏感に感じているものです。これは、大人も子どもも同じ。しかも、未熟な子どもにはシンプルな感情しか理解できないため、言葉と気持ちが矛盾したほめ方をされると、奇妙なものに感じてしまいます。
さらに、子どもにとって親との関係は、世界の中心。ほめられることで操作されたり、結果だけしか見ないほめ方をされたりすると、非常にさびしく、不安なものに感じてしまいます。
ほめることは素直に感じた「感動」のフィードバックです。「子どもをもっとほめなければ」「効果のあるほめ方は?」と考えすぎると、肝心な「感動」が後回しになってしまいます。
頭でっかちにならず、「お! いいね」「それステキ!」というような、素直な感動を大事にしましょう。そして結果より、頑張って取り組んできた姿勢や、できたことの質の方に注目して、子どもの成長を見守っていきたいものです。