ビジネスシーンにおいても、女性の活躍が増えるこの頃。共働き世帯も増えていますね。
しかし世界経済フォーラム(WEF)によると、2022年の日本の「ジェンダー・ギャップ指数」は146カ国中116位と、先進国の中では最低レベルに。
また、経済協力開発機構(OECD)の統計では日本の男女間賃金格差は加盟44カ国中ワースト4位にランクイン。実際のデータでみるとまだまだ日本は、女性の活躍できる環境が整っていないことが分かります。
現役時代の賃金格差は、老後に受給する年金にも大きく影響します。年金受給のタイミングになって、焦ることのないようにまずは現状の女性の年金事情について確認していきたいと思います。
1. 年金制度のおさらい
出所:日本年金機構「国民年金・厚生年金保険 被保険者のしおり」(令和4年4月)、厚生労働省「日本の公的年金は『2階建て』」をもとに、LIMO編集部作成© LIMO | くらしとお金の経済メディア
日本の年金制度は国民年金(基礎年金)と厚生年金で成り立っているため、「2階建て構造」などと言われています。
最近では企業や個人が任意で加入できる「私的年金」に加入している人も増えており、これを含めて「3階建て構造」と言われることもありますね。
それぞれの特徴についても見ていきましょう。
1.1 国民年金(1階部分)
・加入対象:原則日本に住む20歳から60歳未満の方
・保険料:一律(年度ごとに見直しが行われます)
・受給要件:加入期間が10年以上(120カ月)以上の場合、原則65歳から受給可能
・主な受給対象者:フリーランス・自営業・専業主婦(夫)・扶養内で働くパートタイマーなど
・年金額:満額79万5000円(※2023年度の年額)×調整率(未納期間がある場合は差し引かれます)
1.2 厚生年金(2階部分)
・加入対象:会社員、公務員など
・保険料:毎月の給与や賞与に、それぞれ保険料率をかけて計算
・受給要件:国民年金の受給要件を満たす者で、厚生年金の加入期間が1カ月以上ある者
・主な受給対象者:会社員や公務員など厚生年金に加入して働く人。パート・アルバイトで厚生年金に加入する非正規雇用の人も含む(※)
・年金額:加入期間や支払った保険料に応じて異なる(国民年金に上乗せで支給)
※厚生年金の加入対象となる「パート・アルバイト」
2023年3月現在、従業員数101人以上の勤め先で、「週の所定労働時間は20時間以上」などの条件を満たす人
1.3 私的年金(3階部分)
・企業型確定拠出年金(企業DC):会社が掛金を積み立て(拠出)して、従業員が運用を行い、所定の年齢に達した際に受け取れる制度
・個人型確定拠出年金(iDeCo):掛金を自分自身で運用し、投資信託や定期預金で積み立てることにより60歳以降に受け取れる制度。国民年金の被保険者の種別や他の企業年金の加入状況で掛金の上限が変わる
・国民年金基金:自営業者・フリーランス(第1号被保険者)を対象として、国民年金(老齢基礎年金)に上乗せして加入できる年金制度
「3階部分」は任意加入です。よって次では、1、2階部分の国民年金と厚生年金の受給額について詳しく見ていきます。
2. 【女性の年金月額】みんな国民年金をいくらもらえているのか
出所:厚生労働省年金局「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成© LIMO | くらしとお金の経済メディア
ここからは、厚生労働省年金局「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとに、女性の年金受給権者たちが実際に受け取る年金額を見ていきます。
2.1 国民年金(老齢基礎年金)
・女性の平均月額:5万4346円
・男性の平均月額:5万9013円
つづいては、「どれぐらいの人がいくらぐらい年金をもらっているのか」受給金額ごとに男女で分けて見ていきましょう。
総受給権者数:1894万5142人
・~1万円未満:5万7852人(0.3%)
・1万円~2万円未満:22万7254人(1.1%)
・2万円~3万円未満:68万9150人(3.6%)
・3万円~4万円未満:208万643人(10.9%)
・4万円~5万円未満:329万5457人(17.3%)
・5万円~6万円未満:470万2003人(24.8%)
・6万円~7万円未満:643万8667人(33.9%)
・7万円以上~:145万4116人(7.6%)
確認するとボリュームゾーンは6万円~7万円未満となっています。厚生年金についても確認してみましょう。
3. 【女性の年金月額】みんな厚生年金をいくらもらえているのか
出所:厚生労働省年金局「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成© LIMO | くらしとお金の経済メディア
一般的に受給金額に差が出やすいと言われている、厚生年金の受給額についても見てみましょう。
・女性の平均月額:10万4686円
・男性の平均月額:16万3380円
受給人数の総数:535万2232人
・1万円未満:2万9276人(0.5%)
・1万円~2万円未満:6963人(0.1%)
・2万円~3万円未満:5万519人(0.9%)
・3万円~4万円未満:8万9784人(1.6%)
・4万円~5万円未満:7万9430人(1.4%)
・5万円~6万円未満:9万3183人(1.7%)
・6万円~7万円未満:23万7418人(4.4%)
・7万円~8万円未満:44万2558人(8.2%)
・8万円~9万円未満:68万666人(12.7%)
・9万円~10万円未満:85万1331人(15.9%)
・10万円~11万円未満:77万7047人(14.5%)
・11万円~12万円未満:59万523人(11.0%)
・12万円~13万円未満:41万5686人(7.7%)
・13万円~14万円未満:29万4029人(5.4%)
・14万円~15万円未満:21万3811人(3.9%)
・15万円~16万円未満:15万5836人(2.9%)
・16万円~17万円未満:11万2272人(2.0%)
・17万円~18万円未満:7万6925人(1.4%)
・18万円~19万円未満:5万2191人(0.9%)
・19万円~20万円未満:3万7091人(0.6%)
・20万円~21万円未満:2万4351人(0.4%)
・21万円~22万円未満:1万6322人(0.3%)
・22万円~23万円未満:1万444人(0.1%)
・23万円~24万円未満:6549人(0.1%)
・24万円~25万円未満:3719人(0.06%)
・25万円以上~:4308人(0.08%)
ボリュームゾーンは、9万円~10万円未満。さらに詳しく見ていくと月額「8~12万円未満」の受給者が約半数を占めていることが分かります。
女性の平均月額は「10万4686円」。女性の受給権者どうしの個人差は、男性ほど大きくないことが分かります。ただし、平均月額やボリュームゾーンを見ても「男女の差」は大きいですね。
厚生年金の「男女差」が生じる原因としては、大きく以下の2点が考えられるでしょう。
1つめは、今の年金受給者の現役時代の働き方が大きく影響している点。当時は結婚を機に専業主婦となる方も多く、厚生年金への加入期間が男性よりはるかに短かったことが考えられます。
2つめは、いまの年金受給者の世代は初婚年齢が早かったという点。厚生労働省の「婚姻・出生の推移」によると「昭和50年」の女性の平均初婚年齢は24.7歳。ちなみに令和3年の女性の平均初婚年齢は29.4歳です。
このことから1点目と併せて、より厚生年金の加入期間が短くなったことが想像できます。晩婚化が進み、働き方も多様化しているこのごろ。今の現役世代が年金を受給する頃には、「男女間の差」は小さくなる可能性も高いでしょう。
4. まとめにかえて
今回は年金制度のおさらいをして、女性の年金事情に注目して詳しく見てきました。
年金の受給額は、現役時代の働き方によって大きく変わってきます。そのため、結婚後も働き方を家庭で相談する方も多いのではないでしょうか。
以前と比較すると、厚生年金の加入対象も拡大されています。そのため、無理なく自身にあった働き方で将来に備えることができれば良いですね。
備えると同時に家計をスリム化し、年金だけに頼らない「自助努力」や「お金に働いてもらう=資産運用」も必要かもしれません。まずは自分に合う方法を探してみてはいかがですか。
参考資料
・World Economic Forum(WEF) Global Gender Gap Report 2022
・経済協力開発機構(OECD)「男女間賃金格差 (Gender wage gap)」