「中韓から見たアベノミクスについて」(真田幸光氏) | 清話会

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「中韓から見たアベノミクスについて」

真田幸光氏(愛知淑徳大学教授)

政権に対する評価は様々です。
見る視点が異なりますから、評価が様々であることで良いと思います。

また、
「政権全体」
に対する評価も大切ですが、政権が遂行する個々の政策それぞれに対する評価も大切であります。
そうした意味で現行の安倍政権に対する評価の中で、注意しなくてはならないのは、やはり、安倍政権が政策の軸に掲げ、遂行してきた、
「アベノミクス」
ということになると私は考えています。

ところで、このアベノミクスに対しては、日本に厳しい目を向け続ける中韓も、
「中国本土は、経済成長率が鈍化してきている、韓国は通貨危機以降で最悪の経済低迷に苦しむと言う状況とは対称的に日本経済が“失われた20年”に終止符を打ち、日本は蘇った。」
との見方をしており、私はこれに注目をしています。

確かに、表面的に見れば、日本経済では、青年が職場を選ぶほど雇用が戻り、企業が競争力を取り戻し、不動産・株式市場にも活気が戻っており、これらを背景に多くの経済指標が好転し、国全体が自信を回復していると海外では見られているようでありますが、果たして、私たち庶民感覚はどうでしようか?
前よりは改善、また、資金のある人には景気回復感がありましょうが、また、この副作用によって、
「格差拡大」
している点も否めません。

もう少し、中韓のコメントを眺めてみましょう。

彼らの中には、
「僅か4~5年前まで状況は正反対であった。
例えば、中国本土は二桁経済成長を記録、また韓国も世界的な金融危機を早期に克服した成功モデルとして挙げられていたが、日本経済は瀕死の状態であった。
日本は1990年代以降のデフレの罠に落ち、景気低迷に終わりが見えなかった。
世界市場を追われた日本企業は三星電子、現代自動車に学ぼうと韓国研究に乗り出したりもしていた。
中国本土企業に買収される日本企業も出た。
そして、2011年3月には東日本巨大地震と福島原発事故が追い打ちをかけ、これが、昨今の東芝問題にまで影響を与えていることは否めない。
そして、皆が日本の“失われた20年”は30年に延びると考えていた。
しかし、そんな日本経済がアベノミクスによって劇的に復活している。
驚異的である」
との肯定的な見方をやや不満や嫉妬、そして皮肉も込めてしているのであります。

如何でしょうか?

日本経済が危機を脱出したことには様々な背景があったでしょうが、ここに、間違いなく、安倍晋三首相のリーダーシップが最も重要な役割を果たしたという点は、私も否定しません。

安倍首相は思い切った資金供給と企業寄りの資金緩和を行い、経済の悪循環を反転させ、その結果として、2012年12月の政権発足当時、1万円前後となっていた日経平均は現在、最近やや下がったとはいえ、2倍近くにまで上昇しており、これはやはり、
「成果」
でありましょう。
また、昨年の有効求人倍率は1.43で20年ぶりの高水準となっています。

しかしまた、如何でしょうか?

アベノミクスは大規模な金融緩和、拡張的な財政政策、民間投資を呼び起こす成長戦略という「3本の矢」から成り立ち、安倍政権はこれを推進、無制限に資金供給を行うため、過去最高の通貨供給を行い、過激だと悲鳴が上がるほどの円安政策を取る、そうした政策を国際社会が容認する環境も事前につくり上げたことから、輸出も増え、企業業績が上向き、雇用と消費が復活する好循環が始まっていますが、成長戦略は全くと言っていいほど、僅かの実績しかあげていません。

実体経済の底上げ、確立の上では不可欠の成長戦略の完徹を安倍政権にはお願いしたいものです。
そして、それにつけても、安倍政権は、
「自らは全てが正しい。」
と言う国家運営は厳に控え、賢者の声には耳を貸す姿勢を持って国家運営を図ってほしいものであります。





真田幸光------------------------------------------------------------
清話会 1957年東京都生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科卒業後、東京銀行(現・東京三菱銀行)入行。1984年、韓国延世大学留学後、ソウル支店、名古屋支 店等を経て、2002年より、愛知淑徳大学ビジネス・コミュニケーション学部教授。社会基盤研究所、日本格付研究所、国際通貨研究所など客員研究員。中小 企業総合事業団中小企業国際化支援アドバイザー、日本国際経済学会、現代韓国朝鮮学会、東アジア経済経営学会、アジア経済研究所日韓フォーラム等メン バー。韓国金融研修院外部講師。雑誌「現代コリア」「中小企業事業団・海外投資ガイド」「エコノミスト」、中部経済新聞、朝鮮日報日本語版HPなどにも寄稿。日本、韓国、台湾、香港での講演活動など、グローバルに活躍している

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