2段階論は現実的だ(花岡信昭氏) | 清話会

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2段階論は現実的だ

花岡信昭氏(拓殖大学大学院教授、産経新聞客員編集員)


大連立に向かって2段階論が出てきたという。とりあえず、自民、公明両党から3人程度が閣僚になって、挙国体制を築くという構想だ。

 産経の配信記事によれば、森喜朗元首相が推進しているとのことで、なるほど、これなら現実味はありそうだ。

 大連立となると当然のことながら政策協定が必要になる。早い話が、菅首相が初動体制の遅れなどを反省して退陣すれば、大連立は一気に進む。

 その場合、自民党から首相を出せば、さらにスムーズに実現するだろう。

 だが、菅首相が辞める気配はないし、自民党が求めている4K政策(子ども手当、戸別所得補償、高校無償化、高速道路無料化)をすべて棚上げするのも民主党内では異論が根強い。ここをつつきすぎると、小沢氏系がマニフェスト擁護で立ち上がってしまいかねない。

 そうしたもろもろの事情を考えた上での、現実的な策が2段階論だ。だから、自民党は谷垣総裁ではなく、大島副総裁や石破政調会長らを閣僚として出す案が進行中なのだという。

 戦後最大級の大惨事で、東北全体のゼロからのまちづくりをやろうというのだから、これは与党だ野党だとやり合っている余裕はない。

 解散・総選挙ですっきりさせれば別だが、統一地方選も正常には実施できないのが実態なのだから、早期総選挙などやれるわけがない。

 2段階論が強まった背景として西岡参院議長の判断が強く作用していることにも触れておかなくてはならない。

 菅首相は子ども手当のつなぎ法案について、衆院可決、参院否決、衆院で共産党、社民党の賛成で再議決というシナリオを描いていた。

 ところが、参院本会議で否決されるはずが、みんなの党や国民新党から若干の造反が出て、可否同数となった。そこで西岡議長が乗り出して可決を決めた。

 衆院に戻して再議決となると、共産党の助けが必要だ。これをやってつなぎ法案可決となると、菅政権は共産党に多大な「借り」をつくってしまう。

 となると、その後の大連立話も難しくなる。大連立に加わるのは、自民、民主、公明が中心になれば圧倒的な多数を確保できる。

 共産党や社民党にはどうぞいらっしゃいとはいえないのだ。救援、復興政策にしても、反原発、反米、反自衛隊の社民、共産が入っていたら、ややこしくて困る。第一、共産党がくわわる時点で自民党内に相当の異論が出てしまう。

 西岡議長はそうした流れを読み取って、裁定をくだしたのであろう。さすが、政治の世界に長くいた達人だけのことはある。これによって、共産党の出番を打ち砕いたのである。

 ついでながら、西岡氏は早大時代、雄弁会で森氏の入会審査にあたって、面接をやった側である。からだをこわしてラグビーの夢破れた森氏が雄弁会に誘われたのだが、森氏にいわせれば、やせほそった西岡氏がごほんごほんとセキをしながら「雄弁会に来たまえ」とやったので、つい情にほだされて・・・ということになる。

 まこと人生の転換点というのはおもいがけないところにあるものだ。

 いずれにしろ、平成25年夏には衆議院の任期は切れる。あと2年ちょっとだ。

 東北復興の進展にもよるが、どう見ても任期満了まで総選挙は難しいだろう。

 まずは、2-3人が緊急措置として閣僚に加わる。その後、大連立らしいあしらいを整えていけばいい。

 原発の問題が一段落して長期安定期に入れば、復興対策が前面に出てくる。これは新しい発想によるまちづくりをどうするかという一大構想だが、与野党での歩みよりは可能だろう。

 財源をどうするか、ここには大きな開きもあるが、そこは互いに知恵の絞り合いだ。

 かくして、任期満了選挙が近付けば、選挙制度が変更されていない限り、おのずと自民、民主を中心とした2大勢力に分かれていく。その分け方はいまとは違っているかもしれないが、小選挙区制がたとえ定数3の中選挙区制に変わったとしても、2大勢力が軸で、ここに第3極がどうからむかといった構図だろう。

 大政翼賛会などと心配する必要はない。総選挙の前にはそれなりの旗のもとで2大勢力が結集していくはずだ。


※ これを伝える産経配信記事

大連立「2段階論」 実務型閣僚を3人まず入閣(00:03)

東日本大震災を受け、民主、自民、公明の3党の「大連立」構想が現実味を帯びる中、自公両党から党首級ではない実務型閣僚3人をまず入閣させ、将来の本格的な大連立につなげる「2段階論」が浮上した。政局的な思惑を排して被災地の復旧・復興策を強力に進めることが狙い。4月10日の統一地方選第1陣の投開票直後から動きが本格化するとみられる。

 複数の与野党幹部が2段階論に前向きな考えを示し、すでに水面下の折衝も始まっている。
 「大連立が必要ならばやったらいい。すべての政党の力を借りてやればいい。こういう危機的状況で首相を代えるなどありえない」
 民主党の岡田克也幹事長は3日、福島県庁で記者団にこう語った。内閣法改正で閣僚を3人増員し、自民、公明両党に3ポストを割り当てる構想が念頭にあるとみられる。
 菅直人首相は3月19日に自民党の谷垣禎一総裁に副総理兼震災復興担当相として入閣を打診して断られ、大連立構想はしぼんだ。 自民党は「首相退陣」「衆院解散」を掲げており簡単に旗を降ろせないからだ。
 とはいえ、大震災により少なくとも来春までの解散は不可能。内閣府は震災被害を16兆~25兆円と試算しており、自民党内では「数十兆円規模の復興政策に関与しない手はない」との声は日増しに強まっている。
 2段階論の発案者は自民党の森喜朗元首相だった。3月30日に谷垣禎一総裁と会談した際に「唐突に谷垣さんに復興を担当させようというところが実に菅さんらしい。わが党にはいろいろ専門家がいるのだから総裁ではなく、そういう人間を出す方がよい」とアドバイスしたのだ。

 森氏は、平成6年に自民党幹事長として「自社さ」連立政権を発足させ、翌7年の阪神大震災を乗り切った自負がある。連立政権の正式合意を交わさなくても実務型閣僚を送り込めば民主党の経験不足を補うことはできると考えたようだ。

 古賀誠元幹事長も足並みをそろえた。両氏が組めば清和政策研究会(町村派)と宏池会(古賀派)の2大派閥の大勢は従うだけに異論は封じられつつある。

 この動きは民主党に「渡りに船」だった。大連立に慎重だった岡田氏も環境整備に動き始めた。1日には自民党の石原伸晃幹事長と会談し、3閣僚を増やし、震災復興担当相を新設、環境相、沖縄北方担当相の兼務を解く案を提示した。婉曲(えんきょく)に「3ポストを渡す」と言ったに等しい。

 自民党では早くも大島理森副総裁や石破茂政調会長の入閣で調整する動きがある。公明党も1ポストを受ける可能性が大きい。

 国民新党の亀井静香代表は2日に首相と会談後、「森さんはおれの考えと全く一緒だ。一気にすぐ連立にいかないのは結婚と同じだろ?」と語った。民自の急接近ではしごをはずされることを危惧したようだ。

 ただ、民主、自民両党にも2段階論が首相の延命につながることを危惧する声は少なくない。