「連立離脱は当然だ!」 (花岡信昭氏) | 清話会

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連立離脱は当然だ

花岡信昭氏 (拓殖大学大学院教授、産経新聞客員編集委員)

社民党の連立離脱が決まった。
福島党首が消費者・少子化担当相を罷免されたのだから、連立
離脱は当たり前だ。これで、鳩山政権も多少はすっきりした。

だが、選挙協力は進めるらしいから、そこがもうひとつ、不可解
ではある。小沢氏の「選挙・政局至上主義」と社民党側の「民主
党との選挙協力がなければ惨敗」という思惑が結びついたようだ。

なにやら「スジを通した」福島氏がやたらと「正義派」になっている
ようだが、見誤っては困る。

社民党には、政権担当の資格が備わっていなかったということな
のだ。これで正常な姿に戻ったことになる。

普天間問題はキャンプシュワブ沿岸部への移設以外に現実的な
解決策はあり得ない。日米当局は4年前にその線でほぼ合意にこぎ
つけていた。

鳩山首相はなにを勘違いしたか「県外移設」にこだわって迷走に
迷走を重ねてしまったが、やっと、まともな対応とはどういうものか、
気がついたようだ。

日本の外交・安保政策の要は「日米同盟」にある。そこに亀裂を
生じさせてしまっては、政権は運営できない。

だから、社民党にはもともと政権担当の資質はなかったということ
になる。

野党であれば、何をどう主張してもかまわない。実現可能性がない
のだから、実害はない。

だが、政権を担当するということは、最高権力を集中にして、実際に
ものごとを動かすという意味合いを持つ。

村山「自社さ」政権で首相になった村山社会党委員長(当時)は、
日米安保も自衛隊も容認、一夜にして、それまでの社会党の基本
政策をひっくり返した。

これが政権担当のありうべき姿だ。万年野党の時代には、観念論
をはいていればよかったが、政権を担当するとなるとそうはいかない。

福島氏はその基本的なところがまったく分かっていない。
政権担当者はいかにあるべきか、その覚悟が完全に欠落している。

これを持ち上げる一部メディアもあるようだが、そういうスタンスは
世界中を見渡しても、日本のメディアぐらいでしか通用しない。

国際常識、国際的規範からはなはだしく遠いのが日本の一部メディア
の実態であることを、またもや明らかにしてしまった。


この不可解な「無責任政治」は何なのか
【日経BPネット連載・時評コラム
「我々の国家はどこに向かっているのか」5月27日更新分】 

その後の経緯でやや事態に変化がありますが、そのまま再掲します。

*鳩山政権の最優先事項は朝鮮半島問題 なにやら日本政治は
一段と矮小化されたイメージに見える。 普天間、口蹄疫、事業仕
分け、郵政見直し、政治とカネ……。何から何までやっていることが
いじましいというべきか、ちまちまとした印象を受ける。 いま、鳩山
政権がやらなければならない最優先事項は朝鮮半島問題だ。 
韓国の哨戒艦沈没事件は北朝鮮の魚雷攻撃によるものであること
が、ほぼ確定した。南北関係は一気に緊張状態に追い込まれた。
朝鮮戦争は休戦状態にあるだけなのだということを改めて認識させ
られる。 板門店の南北軍事境界線に行くと、対峙する双方の兵士
が数十メートルの感覚を置き、にらみ合って立っている。そこだけ
別世界のように見えたのだが、実は一触即発の状態にあるのだ。 
今回のケースは、韓国側が軍事報復に出てもいっこうにおかしくない
状況である。 南北とも対決ムードをあおり立て、ぎりぎりの宣伝戦を
演じているが、まあ軍事衝突はないだろうと甘く・u梃ゥるのは禁物だ。
 クリントン米国務長官は来日して3時間で日本を後にし、中国に向
かった。米中間でこの危機を回避しようとする水面下の折衝が展開
されている。 おそらくは国連を舞台に、北制裁措置が一段と強化
されるのであろう。それを中国がどこまで容認するかが焦点だ。

*朝鮮半島問題で米国の足を引っ張る日本 この息詰まるような
神経戦に日本が介在できる余地はまったくない。 隣の朝鮮半島で
朝鮮戦争以来ともいえる緊迫した状況となっているというのに、日本
の政権からは危機意識すら伝わってこない。 というよりも、日本は
アメリカの足を引っ張り、朝鮮半島の危機打開のために動いている
アメリカにとって邪魔な存在になっているのだ。 いうまでもなく普天
間問題の迷走である。 クリントン国務長官の3時間滞在がそれを
見事に象徴している。 沖縄の駐留米軍について「学べば学ぶほど
抑止力の重要さが分かった」などと恥ずかしげもなく言ってのけたの
が鳩山首相だ。 日本はこの半年以上、安全保障の何たるかを全く
理解していない国家リーダーのもとで過ごしてきたことになる。 
普天間移設問題に対し、鳩山首相は国内的視点でしか認識できなか
った。 在日米軍が東アジアの安定と平和にいかに貢献しているか、
アジア諸国の多くがそのことに期待しているか、といったことへの思い
など、まったくにじんでこない。

*普天間問題は「政治機能不全」の象徴 地政学的にいっても、
沖縄は朝鮮半島、台湾海峡という、この地域の二大「発火」予想地域
に近接している。 核の傘をバックに、沖縄駐留米軍の存在はこの
地域の安定にとって、死活的に重要なのである。 沖縄の理解を得て、
基地との共存共栄の立場からも、納得づくでことを進めるのが喜ばしい
ことはいうまでもない。 だが、「県外・国外」などと実現不可能な目標を
打ち出し、案の定、ここに至って、4年前に日米間で合意した名護市
辺野古のキャンプシュワブ沿岸部への移設案に戻ることになった。 
鳩山首相は政府方針について「現行案ではない」としているが、
それは言葉のあやというもので、実質的には結論はこれしかない。 
かくして普天間問題は、「政治がまったく機能していない」実態を象徴
する展開となったのであった。 連立政権を組む社民党党首の福島
みずほ少子化担当相は、名護市辺野古が閣議了解の文面に入って
いたら署名しないと息巻いている。 鳩山首相は署名を必要としない
「首相発言」で逃げ切る手も考えているようだが、社民党はここ
で連立離脱の決断をしたほうがいいのではないか。 おそらくそのほ
うが、参院選でもいい結果を導くだろう。参院の与党勢力は社民党を
欠いても過半数に達しているので、いまの鳩山政権にとっては痛くも
かゆくもない。

*茶番にしか見えない県知事との会談 それにしても、国家リーダー
はいかなる行動をすべきかという重い意味合いを常に突き付けられ
ていることを、この首相は認識しているのかどうか。 日本や東アジア
の安定と平和のために、普天間移設に決着をつけ、日米関係を良好
なものに再構築することが国益にかなうと判断するのであれば、いか
に反対があろうとも断固たる決意で臨むというのが、国家指導者の
責務である。 「かりゆし」を着用して沖縄県知事との公開会談を重ね、
努力のあとを示そうとしても、これは茶番にしか見えない。 
県知事はともかく、世界中のどこに、国家の安全保障の根幹にかかわ
る問題を「小さな町の町長」(とあえて言う)に辞を低くしてお願いすると
いう国家リーダーがいるか。 つまりは、国家の最高の政治判断をなす
べき立場の者が持つべき責任もスジも矜持も、そこからは見えてこない。 

こうしたパフォーマンスはすべて「決断できない首相」を覆い隠す
ための存在証明にほかならないのだ。 そうした、なんとも情けない
シーンをわれわれは幾度となく見せつけられてきた。

*小沢氏の「豪腕」は参院選後に不可欠 一方、「政治とカネ」の問題
の矢面に立たされた小沢幹事長は、検察審査会の「起訴相当」議決を
受け、素早く動いた。 大方の予想よりも早く検察当局の聴取に応じ、
検察が2度目の「不起訴」を打ち出す流れをつくった。 ほめてはいけ
ないのだろうが、このあたりの小沢氏の政治的なカンはさすがである。
検察審査会が2度目の「起訴相当」を議決すると「強制起訴」に持ち
込まれるのだが、審査会はメンバーの交代があるから、結論を出すの
はおそらくは参院選後だろう。 世論調査では「幹事長を辞めるべき
だ」という答えが8割程度に達しているが、当の本人はまったく意に介
していない。 参院選対策で自身の存在が不可欠であること、選挙に
勝っても負けてもその「剛腕」が必要とされることを熟知しているためだ。 
参院選で単独過半数を得るには60議席必要なのだが、民主党内にも
「30議席台ではないか」といった悲観論が強まっている。 敗北した
場合、公明党や新党との連携が必要になる。その荒業ができるのは、
正直いって小沢氏しかいない。 そのことを党内は承知しているから、
幹事長辞任を求める声が大勢とはならないのである。

*マニフェスト見直しは無責任体質の表れ 参院選に向けてのマニ
フェスト見直し作業も無責任体質をあらわしている。 昨年の衆院総
選挙時点での「子ども手当月額2万6000円」をはじめ、主要なばらまき
公約のたぐいはすべて見直す方向だ。 国家の借金が1000兆円に
達しようとするときに、当たり前といえば当たり前の話なのだが、
「ムダの削減で必要財源を生み出す」という方針も、完全に見通しを
誤ったといっていい。 事業仕分けがその典型だ。 連日、テレビの
ワイドショーをにぎわせてきたが、パフォーマンスの域を出ない。
参院選候補の強硬発言が目立つのも、そういう思惑があるためだ。 
公開の場で税金の使われ方を明らかにするという試みそのものは
かつてない手法だが、これで縮減される予算額は、せいぜい数千億円
の規模である。 数十兆円足りないという実態から遊離してはいないか。
ここは消費税に踏み込む以外にない。 筆者が事業仕分けをうさんくさく
思う理由のひとつは、「外交フォーラム」 「ジャパンエコー」といった
国際情報誌を休刊に追い込んだことである。

*ハイレベルな国際情報誌を休刊に追い込む 新潮社のフォーサイト
は休刊となり、ニューズウィークが本家アメリカで身売り話も出ている
ことに象徴されているように、ハイレベルの国際情報誌はなかなか
商業ベースに乗らない。 ただでさえ活字媒体は苦戦に追い込まれて
おり、事業仕分けはその足を一気に引っ張ってしまった。 「外交フォ
ーラム」「ジャパンエコー」は外務省が一定部数を買い上げ、関係者や
在外公館に送っていた。 事業仕分けではその予算をカットしたので
ある。 「ジャパンエコー」は国内の雑誌から主要論文を選び出して英語、
仏語、スペイン語などに翻訳して発行してきた。 対外発信が乏しいと
いわれる現状では貴重な雑誌で、雑誌論文を選び出す編集会議には、
舛添要一、白石隆、成相修、高階秀爾、近藤大博、児島明各氏ら国際
関係の著名な専門家を擁していたのであった。 なんともはやの事業
仕分けといわなくてはならないのだが、この政権の異様な体質を示す
ものという見方もあながち違ってはいないだろう。