ベットのなか、早苗を怯えていたわけでもない。食事も進まない、この頃、神経ばかりが異常に研ぎ澄まされている。何をどうする気力もなく、頭の中では様々なことが入り乱れていた。
(さあ、もっと、神様、私をしかって下さい。もう、私は生きる価値もない。神様、どうか私を、そのみもとに導いて下さい。その怒りを、私の体に落としてください。きっと、私はその怒りの御力で、神のしもべとして天国で生まれ変わります。私は決して、御心に背きません。いま、貴方の怒りの声を聞き、感動のあまり、身も心も溶けるようです。さあ、、、早く私を迎えに来てくださいまし、、、。私をそっとその御手でお導きください、きっと、きっと。私は神のお声が、、、あァ、聞こえる、貴方の御声が聞こえます)
早苗は、ベッドの中で十字架を握り締めて、妹の絵美子の存在にも気がつかず、じっと身動き一つしないで、神の迎えを待つような幻覚に取り付かれていた。
絵美子は、そっとベッドに近づき、姉の手を握った。何の反応もなかった。その上、その手の異常な冷たさに、絵美子は驚いた。顔色は透き通るような青白さ。肩に手をやり、これはただ事ではないと思った。肩までの上半身、まるで死人のような冷たさ。身体が少しずつ痙攣を起こし、頬もピクピク引き攣れている。
「お姉さん、お姉さん、しっかりして、、、ねェ!」と、肩に両手を当てながら絵美子が叫んでも、何の返事もなかった。小走りに部屋を出ると、階段を駆け下り、母の綾子に知らせた。
「絵美ちゃん、落ち着きなさい。まず、病院の柳先生に電話して、様子を伝え、その指示を聞いてね。私は早苗の様子を見ているから、、、」と、綾子は言い残し、二階に駆け上がった。