私に取って、エチオピアは長い間「難民」とイコールでした。
子供の頃テレビで見たエチオピア難民の子供は、やせ細っているのに栄養失調のせいでお腹だけが異常に膨らんでおり、長い睫毛にたかった蝿を手で追い払う体力気力もなく、力なくお母さんの母乳は出ないおっぱいにしがみつていました。
大人になって、ヨーロッパのある国で、生まれて初めて生身のエチオピア人に出会いました。
彼女は病的にやせ細ってはおらず、ボロボロの布切れではなく、ちゃんとした服装をしていました。
何を着ていたかは記憶にありませんが、たぶんジーンズにTシャツとかだったと思います。
髪型だってきちんとしており、後ろにに綺麗に引っつめていました。
それでも、
「おお、難民!本物のエチオピア人っ!」
とちょっとひるんだワタシ。
向こうは向こうで、
「おお、カンフーカラテ!フジヤマ、ゲイシャ、ブルースリー!」
って心ひそかにどんな技をかけられるのかと心配していたかも知れません(どうもエチオピア人は、カンフー映画が好きらしい)。
彼女もやはり政治難民としてヨーロッパへやってきたエチオピア人の一人だとは思うのですが、私の中での難民感は、明らかに変わっていきました。
そしてその後、睫毛の蝿も追い払えない国民を抱えた国に長い歴史や芸術、食文化があることを知り、さらにマスメディアの薄っぺらさ加減を思い知らされた次第であります。
季刊誌の旅行人、2007年冬号。こなだい読んだばかりですが、まるごと一冊エチオピア紀行をディープ綴った旅行誌って、日本ではこれ一冊ではなかろうか?
この雑誌もあと2号で休刊になってしまうのが、本当に残念でたまりません。