ATLは、ウイルス感染者(キャリア)の5%が発症し(潜伏期間が数十年と長く、発症のピークは60歳ころです)、短い期間に死亡する、という、治療の難しい白血病です。

感染経路は、ほぼ100%が母乳を介しての母子感染と言われています。

これまでは、ATLキャリアの女性が出産した場合、こどもには、短期母乳育児(3か月間、その後人工栄養に)か、最初から人工栄養、という二つの方法が薦められてきました。

長期母乳栄養を行うと、母乳を介して高い確率で子どもに感染するのですが、

90日以内の短期母乳栄養の場合には、母乳の持つ免疫力などの影響で、最初から人工栄養を選んだ場合よりも感染率が低いことがわかっていたからです。

 

このたび、ATL母子感染防止のためのマニュアルが改定され、これまでは薦められていた短期母乳栄養が選択肢から消えました。医療者としては、最初から人工栄養を薦める、ということです。

その理由は、『短期母乳栄養は検討症例数が少なく母子感染予防効果のエビデンスは確立していない』からだそうです。

けれど、たとえATLキャリアであっても、母乳の利点を考慮して、短期母乳栄養を選びたい方もいらっしゃると思います。どうぞ、妊娠中に、産科医、小児科医などの専門家の意見を参考にしながら、どうするかを選んでください。生まれてしまってからでは、考えている時間はありませんから。

 

ATLは、世界的に見ても、沖縄、九州に発生が集中している、地域性の強い病気です。

日本では、妊娠中の血液検査でチェックされますが、オランダではされていません。

気になる方は、日本の事情を話して、検査を受けられるとよいと思います。

 


参考:IDWR感染症の話 http://idsc.nih.go.jp/idwr/kansen/k02_g2/k02_38/k02_38.html

    HTLV-1 母子感染予防対策マニュアル http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/boshi-hoken16/dl/06.pdf