-カムフラージュ-
(ヤマシギの話)
~ 続き ~
『じっとして動かない鳥がみえるでしょう。
ヤマシギなんですよ。』
小さな水の流れの対岸に向けたカメラのフレームに映っているのは枯葉の洞(うろ)ばかり。
いったんカメラから目を離し、再び
覗いてみる・・・・何も見えない。
妻と交替する・・・・何も見えない、と。
再び交替する・・・・何も・・・・そして再び・・・・。
先に妻が見えたらしい。
『 アッ!いた!!』
私が見てみる・・・・何も見えず!
呆れ返った二人連れの一人が、自分達が撮った写真だと言って、絵ハガキ風に仕上げた『ヤマシギ』の写真を見せてくれた。
そのプリントされているヤマシギの写真を目に焼き付けて、何度目かのファインダーを覗いてみる。
目を凝らして・・・・
アッ見えた
なんとフレームの真中の位置に、フレームの半分近くを占めて『ヤマシギ』の姿が捉えられている。
微動だにせず、瞬きもせず、周りの枯草に完全に同化している。
しかし、一度見えてしまうと、何度ファインダーから目を離してもしっかりと見える。
むしろ、今迄見えなかったことの方が不思議にすら思える。
「毎日、同じ所にやってくる『ヤマシギ』ですよ! 最初の頃はカメラを嫌って、すぐ移動したりしたが、今ではすっかり安心して夕方までああしてじっと休んでいることが多いのですよ」と話してくれた。
・・・・では、このお二人も毎日毎日、朝から夕方迄、カメラを向けて観察していたということか・・・。
あるベテランの海中カメラマンが新人の作品を見て、『この新人カメラマンは大したものだ。写っている魚が緊張していない。安心した目をしている。』と論評したという話を思い出した。
最後にお二人のご好意に甘えて、自分達の作品をプリントしたヤマシギの写真を頂いて帰路についた次第でありました。
自分の体色に酷似した背景の中でじっとしていれば、かくも見事にカムフラージュできることを『ヤマシギ』は知っているんですね。
ホントにおもしろいもんです!
by 耳順