-植物の智恵-
(ナンテンとヒヨドリ)
お正月の生け花にしばしば使われる
ナンテン(南天)。
真赤な丸い実が、色彩が乏しくなった冬には一際映えるようです。
似たような実をつける植物に千両とか万両とか(※五十両、百両というのも)あるようですが、実が密集しすぎることもなく、疎らすぎることもなく、緑の葉とのバランスの良いナンテンが、生花には特に好まれるようです。
我が家の猫の額のような庭にも、小さなナンテンの木があり、冬になると健気にも真赤な実をつけます。
すると、ナンテンを好物とする『ヒヨドリ』がやってきて、その実を啄ばむことになる。
この「すずめ目」に属するヒヨドリは、全長27cm程もあり、雀よりはるかに大きくスマートであるが、それだけに大食漢でもある。
我が家のナンテンなどは、1~2羽のヒヨドリによってほんの半日でその実を食べ尽くされてしまう。
この時期、ナンテンの木にネットを掛けているのを見掛けるが、それもむべなるかなという気もします。
好物の実が手に入らないときは、別の実に手を出すこともあるようですが、このヒヨドリは私が見る限りでは、ナンテンの実が好物のようですね。
しかし、ナンテンにとって一方的に食べられ損をしているわけではない。
自らの種子を拡散させるのに、この鳥を最大限利用しているようである。
一般的に空を飛ぶという運動は、鳥にとっても大変な負担がかかるようで、鳥の体にはその為の絶妙な仕組みがある。
その羽は驚くほど軽く、驚くほど強い。
その体温は驚くほど高く、心拍は驚くほど速い。
また、食べた物の体内滞留時間は驚くほど短く、糞は総排泄口と呼ばれる肛門から尿と一緒に排泄される。便秘はない。
つまり、ナンテンの実はおいしい所だけをヒヨドリに提供し、代わりに種子を無傷で遠方に運んで貰っているわけである。
それならばと、ある生物学者が、自然のままの実の種子と、鳥が糞と一緒に排出した種子の発芽率の違いを調査した結果を耳にしたことがある。
鳥の糞と一緒に排出された種子の方が発芽率が良かったという。
ナンテンがおいしそうな真赤な実をつけるのは、決して正月の生花を彩る為ではなく、繁栄の為に鳥を誘っているためなんですね。
ホントによくしたものです。
素晴らしき哉-植物の智恵-
by 耳順