第3回:運動と水分・塩分の関係〜汗をかいたとき、何を補えばいい?〜
① 運動時の注意点
腎臓に不安がある方にとって「運動中の水分摂取」は悩ましいテーマです。
「汗をかいたら水を飲めばいい」と思われがちですが、汗と一緒に失われるのは水分だけでなくナトリウム(塩分)も含まれます。水だけを大量に飲むと血液が薄まり、低ナトリウム血症を引き起こすことがあります。症状はめまい・だるさから、重症では意識障害に至ることも。
② 夏の発汗と塩分の関係
汗の塩分濃度は、およそ0.4%とされ、500mLの汗で約2gの塩分が失われます。
一見すると「多くの塩分を補わなければ」と思いがちですが、私たちは普段の食事で1日6g前後の塩分を摂取しているため、1時間未満の軽い運動や日常生活では水だけで十分とされています。
さらに、体には自動調節機能があり、汗で塩分が失われれば腎臓が尿中からのナトリウム排泄を抑えます。したがって、「夏は減塩を緩めてもいいのでは?」という必要は基本的にありません。
ただし、食欲不振で食事量が減ったり、多量の飲酒による脱水では塩分不足を伴うことがあるため注意が必要です。
③ スポーツドリンクの役割と注意点
発汗が多いときの選択肢として思い浮かぶのがスポーツドリンクや経口補水液です。
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経口補水液:100mLあたり塩分 約0.3g
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スポーツドリンク:500mLあたり塩分 0.4~0.6g
塩分補給には有効ですが、問題は糖分です。
ポカリスエット500mLには炭水化物 約31g、角砂糖に換算すると約9~10個分が含まれています。これはWHOが推奨する1日の糖分摂取量(25~30g)の目安をすでに超える量です。
アクエリアスはやや少なめ(約23g、角砂糖約6~7個分)ですが、人工甘味料(スクラロース・アセスルファムK)が添加されており、腎臓や腸内環境への影響も議論されています。常用ではなく必要な場面に限って利用することが安心です。
経口補水液やスポーツドリンクが適しているのは、長時間の運動、大量発汗時、または下痢や風邪などで食事が十分にとれないときです。普段の水分補給には水や麦茶が安心です。
④ 腎臓病の方の工夫
腎臓病の方にはスポーツドリンクの塩分や糖分が負担になることがあります。
そのため次のような工夫が役立ちます。
- 軽い散歩やストレッチ程度なら水や麦茶で十分。
- 大量に汗をかく場合は、主治医の指導のもとで塩飴1粒など少量の塩分補給が安心。
- どうしてもスポーツドリンクを使うときは、粉末タイプを通常より薄めに溶かして利用すると負担を減らせます。
「必要な場面に絞り、薄めて使う」ことが、腎臓を守りながら熱中症を防ぐ工夫です。
⑤運動前後に確認したいこと
- 運動前後の体重の変化(±1kg以内が目安)
- 尿の色や量(濃ければ水分不足)
- むくみの有無(過剰摂取のサイン)
⑥補足:健康上の注意点
- 糖質・カロリー:ポカリ500mLで糖質 約31g(125kcal)、アクエリアス500mLで糖質 約23g(95kcal)。
- 歯への影響:酸性+糖分で虫歯や酸蝕症のリスクあり。飲んだ後は水でうがいを。
- 塩分過剰:1本で0.5~0.6gの食塩相当量。塩分制限中の方は特に注意。
まとめ
運動時の水分補給は「水だけ」でも「塩分たっぷり」でもなく、シーンに応じたバランスが大切です。
発汗が軽いときは水や麦茶で十分。大量に汗をかくときは、少量の塩分を補ったり、必要に応じてスポーツドリンクや経口補水液を取り入れましょう。
そして腎臓病の方は、「必要なときに必要なだけ」を合言葉に、自分の体調と相談しながら工夫していきましょう。
次回予告:第4回![]()
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