はじめに
腎臓と水分のつき合い方は、多くの方が悩むテーマです。
「たくさん飲んだほうが良いの?」「水分制限が必要なの?」と混乱することもあるでしょう。
また、夏と冬では必要な工夫も変わりますし、運動時の水分・塩分補給は腎臓に不安のある方には特に気をつけたい点です。
そこで今回から4回に分けて、腎臓と水分の関係について分かりやすくまとめてお伝えします。
- 第1回:水分はどれくらい必要?
- 第2回:水分の種類と摂り方の工夫
- 第3回:運動と水分・塩分の関係
- 第4回:潤いを食べて補う薬膳レシピ
最後は“食べて潤う”をテーマにした薬膳レシピをご紹介します。
腎臓を大切にしながら、秋に気になる乾燥や花粉症にも負けない体づくりを一緒に考えていきましょう。
第1回:水分はどれくらい必要?~飲みすぎも不足も腎臓に負担をかける~
① 腎臓と水分の関係
腎臓は、体の中の余分な水分や塩分を調整し、体のバランスを保つ臓器です。腎機能が低下するとその働きが弱まり、むくみや体重増加、高血圧などにつながります。そのため、医師から「水分制限をしましょう」と指示されることがあります。
② 一般的な出納バランス(シンプルな考え方)
よく引用されるのは次のようなバランスです。
摂取:約2,500ml/日
· 飲み物:1,200ml
· 食事由来:1,000ml
· 代謝水(体内で栄養を燃やすときにできる水):300ml
排泄:約2,500ml/日
· 尿・便:1,600ml
· 呼吸・皮膚からの蒸発(不感蒸泄):900ml
つまり、平均的には「入る量」と「出る量」が約2,500mlで一致し、バランスが整っています。
③ 欧米の研究で出てくる数値の違い
欧米の文献では、生活活動レベルによって必要量が異なるとされます。
· 低活動群:2.3~2.5L
· 高活動群:3.3~3.5L
これは、高温環境や運動量の多い生活を想定しているケースが多いため、日本の生活実態と比べると多めに算出されがちです。さらに欧米では、パンや肉中心の食生活で食事に含まれる水分量が少ないため、その分を飲料水から補う必要があり、「飲料水1.5Lを推奨」となりやすいのです。
④ 日本人のケース
和食は野菜や汁物が多く、水分を多く含む食事が中心です。そのため、食事由来の水分比率は30~40%程度とされ、欧米の20~30%に比べて高めです。その分、日本人は飲料水で補う量が少なくて済むと考えられています。
ただし、日本人を対象とした大規模研究はまだ少なく、「正確な推奨値」は現時点では設定されていません。つまり、水分の必要量は人によって異なり、体格・活動量・季節の違いを踏まえて調整することが大切です。
⑤ 腎臓病の方の水分管理
腎臓病の方では、同じ「水分」でも摂り方に注意が必要です。
1. 排泄障害がない方
腎機能がまだ保たれている段階では、尿を濃縮して排泄する力は残っています。むしろ脱水は腎機能をさらに低下させる原因になるため、十分な水分補給が必要です。目安は尿量が1,500~2,000ml程度になるように飲むこと。ただし「水をたくさん飲めば腎臓が回復する」という考えは誤りで、過剰摂取はむくみや高血圧を招くため、ガイドラインでも推奨されていません。
2. 排泄障害がある方(進行期や透析中)
腎機能が低下し尿を濃縮できなくなると、摂った水分が体にたまりやすくなります。この場合は水分制限が必要です。特に透析中の方は、体にたまった水分を透析で除去するため、摂取量をあらかじめ減らす必要があります。摂取量はeGFR(腎機能の指標)、蛋白尿、塩分摂取量、血圧、服薬状況によって変わるため、必ず主治医の指示を守ることが大切です。
水分補給の注意点4つ
1. 適量は主治医に確認:ステージや症状によって適量は変わるため、必ず確認を。
2. 飲料の選び方:麦茶・ほうじ茶・玄米茶は安心。抹茶やココア、豆乳はカリウムが多いため注意。コーヒーよりは紅茶がおすすめです。
3. スポーツドリンクはNG:塩分0.1~0.2%に加え、500mlで20~30gの糖分を含むため不向き。
4. 体のサインを観察:急な体重増加、足のむくみ、尿の濃さは水分過剰や不足のサイン。
まとめ
腎臓病の方の水分摂取は「たくさん飲むこと」でも「極端に減らすこと」でもなく、自分の腎機能に合った適量を見極めることが大切です。
尿量やむくみ、体重の変化をチェックしながら、必ず主治医と相談して調整していきましょう。
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