先日、衆議院予算委員会で、高速道路の料金割引に関する政策論争が交わされていました。
高速道路の無料化については、
「渋滞をもたらすので、総合的にみると経済効果は期待できない」
「税投入は、利用しない人も負担することを意味し、公平性を欠く」
(麻生総理も、無料化は「便益を受ける方と受けない方で公平性を欠く」と答弁している)
といった問題提起が政府・与党などからなされていました。
これに対し、民主党の真淵議員が国総研の報告をもとに、
政府のやろうとしている料金引下げよりも、無料化の方がメリットがあると論争をしかけたのです。
国総研の報告とは、国土交通省国土技術政策総合研究所による
「平成19年度高速道路料金割引社会実験効果推計調査検討業務報告書」です。
そこで、3割引、5割引の経済効果だけでなく、10割引(=無料化)の試算も行っていたことが
判明しました。
それによると、3割引(=今政府がやろうとしている料金引下げ)で5200億、5割引で1兆200億の
便益があるとなっていますが、
実は、無料化した場合には、渋滞等のデメリットも加味しても、総合的な便益で何と2.7兆円の
経済効果があると試算されていたようなのです。
ところが、これは、最終報告には記載されず、闇に葬られるところだった。
しかし、報告書の中に削除漏れがあり、記載内容に不審を持った馬渕議員が国交省を追及した結果、
「幻」の10割引の試算結果が浮かび上がってきたようです。
真淵議員は、追及します。
無料化の方がいいとなると民主党が主張しているのでマズイという理由で削ったのではないか?
無料化すると、渋滞を加味しても2.7兆円の経済効果があるという結果が出ているではないか!?
政府は無料化は公平性を欠くと批判してきたが、料金引下げも同じことが言えるのでないか!?
方針転換ではないのか!?
これに対して、金子大臣も反論しました。
研究の途中経過では検討した。
無料化すると、料金収入2.6兆円が入らなくなることも考慮しなければならない。
軸足は利用者負担で同じ。その中で少しでも便益を享受してもらうようにと(負担軽減を)考えた。
しかし、真淵議員は、政策論争の在り方、政治の在り方まで含めた議論を展開しました。
「これは非常に重要な資料だ。3割引・5割引のときは、走行便益、CO2排出量の効果は顕著でない。
しかし、10割引にした瞬間に、延岡道、米沢道などの便益がドーンと上がる!
つまり、3割引、5割引にはない新たな事実が浮かび上がる。
もっと多大な効果を無料化はもたらすことを示している!
こうした無料化の検討結果を公に議論せずに、3割引はすばらしいというけど、政策というのは、
まさにこうした様々な角度からの検証を(官僚にまかせず)我々自身が国会の中で行って、
もっともあるべき姿につないでいくべきものではないのか!?
3割引、5割引きとは意味が違うんです。10割引きにすると交通配分量がガラリと変わる。
こうした検証を公にして、どんどん国民の皆さんの前でオープンな議論をすべきなんですよ。」
政治というと、私たちがマスメディアから得る情報は、政局がらみのものが中心であり、
政策は抽象的・表層的・部分的な内容にとどまりがちです。
こうした現状に対し、北川正恭さんたちがマニフェストを提唱したり、
竹中平蔵さんたちが政策ウオッチの試みを始めていますが、まだまだです。
こういう議論が国会でどんどんされて、それをマスメディアも別の角度からしっかり掘り下げて伝える
といったことが広まっていくといいと思います。
(2/25衆議院予算委員会での馬渕議員
と金子国土交通大臣
との質疑の概略)
※かなり意訳しています。正確には衆議院インターネット中継 を参照願います
麻生総理が先日「便益を受ける方と受けない方で公平性を欠く」と答弁しているが、道路はネットワークでつながっており、(物流効率化などで)便益を受けるのは全ての国民であるから、公平性を欠くとの主張はいかがなものか?
無料化に対して、道路を使っていない国民も含めた税金で賄うという点が公平性の観点から問題があると総理は言ったものだと理解している。ネットワークで網羅されて、全ての国民が便益を受けるという考えには異論ない。
今回の高速道路割引で上限1000円とすると、1年間で3000億円の公費を要し、これが高速道路の借金返済に充てられないことになる。3割引はよくて10割は公平性を欠くというのはまったくの筋違いではないか?
無料化の場合、3割引きと比べて必要なオーダー(対応?)が異なってくる高速道路は利用者の支払う料金で道路の維持管理費用を賄っていくのが原則である。
まったくすじがとおらない。じゃあ5割はどうなの、5%はどうなの。受益者負担は、受益と負担の関係でドライバー以外は負担してはダメだというところに成立する論理ではないか。無料化が公平性を欠くというなら、3割引では欠かないというのは理屈として通らない。
乏しい財源の中でいかに効果をもたらすかということを考えて提案している。もし無料化すると毎年の料金収入2.6兆円が入らないので、10年間で30兆円の経済効果に対し、26兆円のコストがかかるということを…ここのところが政策判断である。
公平性を欠くということについて矛盾しないかと聞いているのだ。税の投入による割引策を実施しようとしている。国総研から3割引で5200億、5割引で1兆200億の便益が出るという報告が出されている。そうした割引によって便益が出るという確認がなされている中で3割引に踏み込んだ。ならば公平性を欠くという従来の主張は撤回せざるを得ないものであり、方針転換であると明言するべきだ。
45年間で45兆円の借金を返していかなければならない。これを無料化によって税金で支払うのか、…我々はそうでなくて軸足は利用者が払っていただく、その中で乏しい財源を使いながら少しでも便益を享受してもらうように…
答えていただけないので観点を代えて質問する。無料化試算…知らないと言ったが、私は国交省から無料化の試算も行ったと説明を受けている。前回は知らないと言ったが、無料化試算を行ったことも事実でいいね、確認する。
研究の途中経過であらゆる検討を行う観点から無料化も検討したと報告受けた。
10割引の検討もなされ、無料化で年間2.7兆円もの便益が出るということを公にすべきではないか。
途中経過であるが、提出できるものであれば検討させていただきたい。
これは非常に重要な資料だ。3割引・5割引のときは、走行便益、CO2排出量の効果が顕著でない。10割引にした瞬間に、延岡道、米沢道などの便益がドーンと上がる!つまり、3割引、5割引にはない新たな事実が浮かび上がる。もっと多大な効果を無料化はもたらすことを示している。この検討結果を公に議論せずに、3割引はすばらしいというけど、政策というのは、まさにこうした検証を行って我々自身が国会の中で、もっともあるべき姿につないでいくべきものではないのか。3割引、5割引きとは意味が違うんです。10割引きにすると交通配分量がガラリと変わる。こうした検証を公にして、どんどん国民の皆さんの前でオープンな議論をすべきなんですよ。
無料化の便益が大きいのは当然。ただし、誰かが無料化のコストを負担する。高速道路の債務の返済、維持管理費用を誰が払うのかという財政負担の問題、これも考えて与党として提出したのものだ。すでに大いに議論していると思っている。
大臣としてはこれがベストと考えているのでしょうが、10割引きの検討をしていたことが今回明らかになったことは非常に大きいが、…よりきめ細かな精査でより良い割引の方法があるかもしれない。いずれにしても、10割引の検証結果を公にすると先ほど答弁されたが、是非…こうした…上で本来の議論を行うべきだということを前回も申し上げたが、是非理解頂きたかったというのが趣旨だ。いずれにしても、無料化、3割引のどちらが国民の理解を得られるか…これにより、高速道路の議論がまともな議論の俎上にのる。ようやく国民の皆様の前に利益になるのものはどちかということが明らかになると思う。
゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ ゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚
高速料金下げ、効果5200億円=無料化2.7兆円、導入は否定-金子国交相
http://news.goo.ne.jp/article/jiji/politics/jiji-090225X620.html?fr=rk
金子一義国土交通相は25日の衆院予算委員会で、民主党が公約に掲げる高速道路料金の無料化について、年間2.7兆円の経済効果が見込めるものの「2.6兆円の料金収入が入らない」として改めて導入を否定した。一方、政府が追加経済対策に盛り込んだ「どこまで走っても上限1000円」などの料金引き下げで5200億円の効果があることを明らかにした。民主党の馬淵澄夫議員への答弁。
(2009.2.25 時事通信)
高速道路:無料化効果2兆6700億円 国交相試算認める
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20090226k0000m010096000c.html
(2009.2.25 毎日jp)
高速無料化:効果2.7兆円 民主「試算隠し」批判
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20090221k0000m010078000c.html
国土交通省が所管の財団法人に発注した高速道路料金引き下げに伴う経済効果の試算業務で、高速道路無料化の効果を「2兆6700億円」と推計する結果が出ていたことが分かった。民主党の馬淵澄夫氏が20日の衆院予算委員会で指摘した。無料化は民主党の看板政策の一つだが、法人が国交省に提出した報告書からは、無料化に関する記述が削除されていた。馬淵氏は「なぜこの結果を表に出さないのか。民主党の政策だからか」と迫ったが、金子一義国交相は「私のところには来ていない」とかわした。…
(2009.2.20 毎日jp)
終日半額か、無料化か 高速道路料金をめぐる新たな展開
http://www.qualitysaitama.com/?p=438
(2008.10.23 クオリティ埼玉)
取材が絶対か――低成長時代のマスメディア
http://allatanys.jp/B001/UGC020005120090211COK00229.html
…「経済が右肩上がりのときは、余ったお金をどう分配するかを政治は考えればよかったが、低成長で財政が逼迫しているいまは、それではすまない」といったことが言われるが、これはそのままメディアにもあてはまることだろう。 「ここに困っている人がいる。なんとかしろ」と声高に叫ぶのがマスメディアの第一の使命というのは、高度成長時代の発想なのではないか。虫の目で取材を重ね、問題のありかを部分的に指し示すだけでは、ほんとうの解決策を求める社会のありようにあわなくなっている。 …
…定額給付金の例で言えば、伝える必要があることは、「定額給付金をほしいと思っている人もいる」というわかりきったことではない。また、このコラムが指摘するように、実際の生活においてどれだけ価値があるかといったことでもないだろう。もっと重要なのは、給付金を配ることが社会にとってどういう意味があるかということだ。それを見るには、経済的な観点のデータを示すことも必要だ。…
基礎的なデータや資料を発掘して報じるという一次情報を追いかける新聞記者にふさわしい仕事があるのではないか。
…マスメディアは一次情報を伝えるのが役割と言いながら、報じていない重要情報がまだまだあるように思う。政治部、経済部、外信部が、セクション横断的に徹底的に掘り下げて紙面を作れば、「給付金は意味がある」「ない」という各政党の不毛な水掛け論争を伝えるよりもずっと深みのある記事になるのではないか。…
(2009.2.12 あらたにす)
民主党HP 【2/20衆院予算委】高速道路無料化による経済効果を強調 馬淵議員
http://www.dpj.or.jp/news/?num=15288
…麻生首相は、「基本的にタダにすれば効果あるでしょう」と述べ、高速料金無料化により便宜を受ける者と受けない者とに分かれ、平等性に欠けるのではないかと反論。馬淵議員は、高速料金無料化による経済効果は、単に使用者の料金負担が減るだけでなく、地域間の格差是正、地域の活性化、物流コストおよび物品の値段が下がるとして経済効果は大きいと主張。政府が進めようとする政策は3割引で5200億円の効用があると判断しているが、無料化により2兆3000億円に相当する利益が出ると算定されるとその効果の違いを指摘した。…
無料化検討
http://mabuti-sumio.cocolog-nifty.com/blog/2009/02/post-2588.html
(2009.2.23 まぶちすみおの「不易塾」日記)