連休中に元外務官僚の岡村行夫著『危機の外交』を読んだ。同書は、外務省退官後に構想を抱き、日米での出版を目指し長年描き続けていたものをまとめたものである。

 

本人は2年前に新型コロナで亡くなられ、最終章を書き終える前に絶筆となったそうだが、意志を継いだ関係者の努力でまとめられた。

 

先月の偲ぶ会に合わせ出版され、読む機会を得た。岡本氏の長年の経験や考えがまとめられており、日本外交の機微がわかる名著だ。タイトル通り、危機の外交という言葉がすぐに浮かんだ。

 

岡本氏とはそれほど接点はなかったが、深い洞察力で物事の核心をついた行動ができる、胆力のある外務省では珍しいタイプの人物であったとの印象が強い。

 

湾岸戦争では、水面下で様々な交渉をまとめていたことを知る人は多い。海部首相に決断力があったら、日本の評価は異なるものになっただろうと思うと残念でならない。首相の優柔不断な対応が、日本外交のトラウマとなってしまった。

 

国際情勢はかつてないほど危機的な状況だ。過ちを繰り返さないためにも、岸田首相には本書を参考にして危機を乗り越える外交を進めてほしいと願う。