- 神さまは僕を捨ててしまった 生れた時にはもう遅かった 何日か愉(たの)しい季節が来るだろうと、僕はそれだけを頼りにしていた けれど神さまはどうも頼って行く人間を邪慳に振払ってしまうようだ おまえの朝夕のお祈りはきっと《神さまお守り下さい》だろう だが おまえは守って戴くことを心の底から必要とした日は無かったろう 僕はよく知っている
僕は反対なのだ《若(も)しお守りがなければ今にも死んでしまいます神さま》僕の祈りは何時もこんなに苦しかった けれど一度だって僕は救われたろうか たった十六歳 僕は自分を考えるといつも世界の中で一番不幸な星の下に生れたように思われる 僕は外の少年たちのように無邪気なことは一度も考えられなくなった 何時も死のうとばかりしている
ミリカよ 僕はおまえを愛している イザベル先生よりももっと -
- 吉本隆明『エリアンの手記と詩』(部分)より。


