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- 神さまは僕を捨ててしまった 生れた時にはもう遅かった 何日か愉(たの)しい季節が来るだろうと、僕はそれだけを頼りにしていた けれど神さまはどうも頼って行く人間を邪慳に振払ってしまうようだ おまえの朝夕のお祈りはきっと《神さまお守り下さい》だろう だが おまえは守って戴くことを心の底から必要とした日は無かったろう 僕はよく知っている
僕は反対なのだ《若(も)しお守りがなければ今にも死んでしまいます神さま》僕の祈りは何時もこんなに苦しかった けれど一度だって僕は救われたろうか たった十六歳 僕は自分を考えるといつも世界の中で一番不幸な星の下に生れたように思われる 僕は外の少年たちのように無邪気なことは一度も考えられなくなった 何時も死のうとばかりしている
ミリカよ 僕はおまえを愛している イザベル先生よりももっと -
- 吉本隆明『エリアンの手記と詩』(部分)より。
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- あなたには傷の跡はないのか
足 脇 手にも 隠れた傷の跡はないのか
わたしは聞いた 世の人があなたの力をほめるのを
わたしは聞いた 上る明けの明星があなたをたたえるのを
しかし どうしてあなたには傷の跡がないのか
あなたには痛む傷はないのか
わたしは天より離れ 傷ついて死ぬために木の上にかけられた
獰猛な狼が囲んで 私を裂き 衰えさせた
しかし どうしてあなたには傷がないのか
しもべは主人のようになれば十分なのに
わたしのあとに従う者は足を刺されるはずなのに
あなたは健やかで 傷もない
傷も 傷の跡もない者が どうしてわたしに従えよう
- エミー・カーマイケル『傷の跡はないのか』より。
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- ちひさなやさしい群よ
昨日までかなしかった
昨日までうれしかったひとびとよ
…(中略)…
ぼくはでてゆく
冬の圧力の真むかう(真向こう)へ
ひとりっきりで耐えられないから
たくさんのひとと手をつなぐといふのは嘘だから
ひとりっきりで抗争できないから
たくさんのひとと手をつなぐといふのは卑怯だから
ぼくはでてゆく
すべての時刻がむかふかは(向こう側)に加担しても
ぼくたちがしはらった(支払った)ものを
ずっと以前のぶんまでとりかへすために
すでにいらなくなったものはそれを思ひしらせるために
- 吉本隆明『ちひさな群への挨拶』(部分)より。