ろごすの泉-ファイル0165.jpg

- 砕け散ったバラが鮮血のなかに横たわっている
真紅に凍結した心魂(こころ)が
そのときガランと震えた

ナシトゲラレタ…

曇天(どんてん)の空が十字を切って崩れる刹那(せつな)
その間隙(かんげき)をぬうように
最期の破片が
美しい個をえがいて
わたしの中心に突き刺さり
孤絶の嵐吹きすさぶ
荒涼(こうりょう)とした静寂(せいじゃく)のなかに
厳粛なる完結と蘇生(そせい)に向かって立った
- いえす『ゴルゴタのよる』
ろごすの泉-ファイル0164.jpg

- 自分が 書きちがえたのでもないが いそいそと けす
自分が書いた ウソでもないが いそいそと けす
そして けすたびにけっきょく
自分がちびていってきえて なくなってしまう
いそいそと いそいそと
正しいと 思ったことだけを
ほんとうと 思ったことだけを
自分のかわりのように のこしておいて
- まどみちお『消しゴム』より。
ろごすの泉-ファイル0163.jpg

- まっくろけの猫が二匹
なやましいよるの屋根のうへ(上)で
ぴんとたてた尻尾(しっぽ)のさきから
糸のやうな(ような)みかづきがかすんでいる
『おわあ こんばんは』
『おわあ こんばんは』
『おぎゃあ おぎゃあ おぎゃあ』
『おわああ ここの家の主人は病気です』
- 萩原朔太郎『猫』より。

面白いですよね。大好きな詩です。たまにはこんな詩をゆるりと楽しんでみるのもいかがでしょうか。