第二章:静寂の小屋
盗賊団を壊滅させたその日、レンは村人たちに一言だけ告げた。
「街に行き、カイトという騎士にこのことを話してくれ。『レンに頼まれて盗賊を捕らえた』と。それで通じるはずだ。」
村人たちは何度も頭を下げ、感謝の言葉を重ねながら見送った。レンは何も言わず、小屋へと戻っていった。
数日後、レンの小屋をノックする音が響いた。
「レン!いるか!」
扉を開けると、そこには銀色の鎧をまとった男――カイトが立っていた。レンの数少ない理解者、そしてかつての戦友でもある。
「助かったよ、レン!お前が倒した盗賊団、ずっと探してた連中だったんだ。」
カイトは笑顔で言ったが、レンの表情は変わらなかった。
「そうか……それなら良かった。」
「それより街に来いよ。歓迎されるぞ。お前の腕を知ってる奴らは、ちゃんと感謝してる。」
だが、レンは首を振った。
「……俺が街にいると、嫌な思いをする人が多い。魔剣を狙って騒ぎを起こす連中も現れるだろう。」
レンは魔剣の柄に手を当て、静かに言葉を続けた。
「だから、街から離れている。ここは静かで、慣れれば悪くない。」
しばし沈黙のあと、カイトは肩をすくめて笑った。
「らしいな、お前らしいよ。なら、気が向いたらでいい。いつでも待ってる。」
そう言って、腰の袋から革袋を取り出し、机の上に置いた。
「盗賊団の懸賞金だ。ちゃんと受け取れよ。」
「……気持ちだけ、受け取っておく。」
レンの答えに、カイトはもう一度だけ笑った。
「じゃあな。また会おう、レン。」
その背中が山道に消えていくまで、レンは静かに見送っていた。
風が小屋の隙間から吹き込み、木々のざわめきが優しく響く。
「……やっぱり、ここがいい。」
レンは独りごちると、椅子に座り、ゆっくりと目を閉じた。