〔69〕奇跡の騎士と天駆ける闘士 | 星流の二番目のたな

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デジモンフロンティアおよびデジモンアドベンチャー02の二次創作(小説)中心に稼働します。たまに検証や物理的な制作もします。
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 究極体二体を前に、デーモンはわずかに動揺を見せた。
 が、すぐに笑みを浮かべる。
「仲間の残りかすをかき集めて進化したか。だが、もうじきお前達が消えることに変わりはない」
 デーモンの言葉通り、アルフォースブイドラモンとスサノオモンの体は徐々に透けていく。進化しても消滅までの時間を延ばすのが精いっぱいらしい。
 それでも二体と一人は力強くこぶしを握り、前を向く。
「仲間がくれた奇跡の進化を無駄にはしない」
「みんなのスピリットがつどったこの姿で、負けるはずがない!」
  二体の究極体が地面を蹴った。
 デーモンが右手を掲げ、赤黒い火球を生みだす。
「《フレイムインフェルノ》!」
 デーモンの放った炎は壁のように高く燃え上がり、二体に迫る。
 スサノオモンのかぶとからバイザーが下りた。
 スサノオモンが両手を突き出す。鎧を模した両手持ちのキャノンが現れる。
「さっきの俺達と、同じだと思うな!」
 キャノンを右脇に引く。砲口から光の刃が伸びた。それを、勢いよく前方に振る。
「《天羽々斬あまのはばきり》!」
 光の刃は、炎の壁を真っ二つに叩き切った。勢いを失った炎の壁はスサノオモンの前で崩壊し、消えていく。
 技を破られたことに対し、デーモンが、ほう、とつぶやく。が、すぐにあることに気づいて怪訝な顔になる。
 スサノオモンの横に、アルフォースブイドラモンがいない。
 姿を探して、周囲に視線を巡らす。
 狭い谷を抜ける風のような、甲高い音がした。
 「《アルフォースセイバー》!」
 デーモンの肩を、青いビームソードが裂いた。
 デーモンが痛みに顔をゆがめながら、アルフォースブイドラモンを握りつぶそうと手を伸ばす。
 が、アルフォースブイドラモンは素早く距離を取る。
 デーモンが改めて二体の敵を見やる。
「わしの炎を単体で破るデジモンに、見切れない速度で動くデジモン。死の恐怖という感情で、進化の伸びしろが大きくなったか」
「違う!」
 大輔が声を張る。
「この進化は、恐さなんかで起きたものじゃない! お前のせいでこの世界から消えても、それでも仲間を救いたいと思う絆の力だ!」
「ならば、お前が地獄の炎に焼かれても絆とやらが守ってくれるか試してやろう!」
 デーモンが一瞬のうちに火炎弾を放った。
 小さいが、子ども一人を焼くには十分な火力。
 だが、大輔は目をそらさず火炎弾と対峙する。
 
 着弾。火柱が上がる。

 しかし、火柱が消えてもなお、大輔は無傷で立っていた。
 大輔の前にはアルフォースブイドラモンが割り込んでいた。
 大輔を守れるよう片膝をついている。ブレスレットから展開した縦長の青いエネルギーシールドは、火炎弾をはじいた名残で微かにノイズが走っている。
 アルフォースブイドラモンがシールドを消し、立ち上がる。
「俺に力をくれたみんなに誓って、大輔には傷一つつけさせない!」
 大輔は、仲間が自分を守ってくれることも、自分達が勝つことも確信していた。
 その気持ちを伝えるために、全身に力を入れて、腹の底から叫ぶ。
「いっっけえええぇっ!」
 スサノオモンが両手を天に掲げた。暗い空に、白い渦状の雲が巻き起こる。
「《八雷神やくさのいかづち》!」
 雲から白光の雷が降り注いだ。
 デーモンは頭上に魔方陣を出して雷を防ぐ。
 が、幾多も落ちる雷は魔方陣にひびを入れ、破壊する。
 頭部や腹、両手足を貫かれ、デーモンが苦悶の声を上げる。
 すかさず、二体が敵をめがけて駆ける。
 アルフォースブイドラモンがビームソードを伸ばす。
 スサノオモンがキャノンから細身の剣を抜く。
「これで――」
「――終わりだ!」

 二振りの剣が、デーモンの胸を貫いた。



 二体が剣を抜くと、傷口からデータの崩壊が始まった。
 死にゆく敵に、スサノオモンが冷静に告げる。
「お前の企みもここまでだ」
「いや、この時間軸のわしが滅びるに過ぎない」
 自らの死を目前にしても、デーモンは余裕を保っていた。
「このわしが滅びても、世界が本来の物語に戻るだけだ。半年後に選ばれし子ども達はわしと戦い、倒せず暗黒の海に封印する。その物語は変わらない。わしは脅威であり続ける」
「来るなら来い。俺達は何度でも戦う。人間とデジモンと、仲間全員の力で絶対に勝つ!」
 大輔は力強く言い返した。
 デーモンはくく、と笑い声をこぼした。
「なるほど、お前が最後まで生き延びるわけだ……」
 その言葉を最後に、デーモンの身は砕け散った。



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ついにラスボス・デーモン撃破。
5年近く書いてきた「デジモンユナイト」。次の〔70〕が最終話です。