第172話 ユピテルモンの狙いとは!? 手がかりから導かれるもの | 星流の二番目のたな

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デジモンフロンティアおよびデジモンアドベンチャー02の二次創作(小説)中心に稼働します。たまに検証や物理的な制作もします。
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 輝二と拓也が城に突入してすぐ、俺達は城門から離れた。ユウレイ達はまだ俺達を見張っている。万が一にでも城の外に出てこられたら、今の俺達は戦えない。

 町の跡を歩いて戻り、200メートルくらい戻ったところで待つことにした。ここからなら城の様子も見守れる。

 みんな適当ながれきや地面に座る。

 座っても、ネーモンが落ち着かずに城を何度も見る。

「大丈夫かな、二人とも」

「心配ないよ。カイゼルグレイモンとマグナガルルモンは強いんだから。ユウレイなんか敵じゃないって」

 友樹が力強い声で元気づける。

 純平がふと気づいたという顔で俺を見た。

「そういえば、輝一はスピリット渡しても良かったのか? 氷のエリアで敵が結界のデータの欠片を持ってただろ。もしかしたら、城の中に闇の闘士のデータを持ってるやつがいたかもしれないぜ」

「まあね。俺も考えてなかったわけじゃないんだけど」

 俺は苦笑して答えた。ポケットの上からデジヴァイスに触れて、小さく息を吐く。

 今までのことを考えれば、破壊された結界のデータを持っている敵がいるはずだ。俺の相棒のデータ、取り返せるならもちろん、自分の手で取り返したい。

「でも、このエリアに来た目的はエリアの奪還だけじゃない。信也を見つけて、ユピテルモンから守るためだ。信也が近くにいるのなら、そこにたどり着くのに一番いい方法を使って当然だ。俺は自分の手でデータを取り返せなくてもかまわない」

「そっか。輝一が気にしてないならいいんだ」

 純平がほっと頬を緩めた。でもすぐに難しい顔になって考え込む。

「それにしても、ユピテルモンは何を企んでるんだ? ユピテルモン本人の動きが全然ない。自分を裏切ったディアナモン達の船を落としたり、俺達がここに来るまでに部下を送り込んだりはしてきたけどさ」

 純平の疑問に、ボコモンがうなずく。

「わしらはまだ一度も姿を見ておらん。十二神族の城に捕まっていた拓也はんと輝二はんでさえ、ユピテルモンに会ったのは一度きりだったそうじゃハラ」

「まるで、何かを待ってるみたい」

 泉の言葉に友樹が首を傾げる。

「何かって、何を?」

「それは分からないけど……」

「一度、今分かっていることを整理してみないか」

 俺はみんなを見回して提案した。黙って座っていても意味がない。待っている間に、敵の企みの断片でもつかんでおきたい。



「そもそもの始まりは、オリンポス十二神族がこの世界に攻め込んできたことじゃった」

 ボコモンの言葉に、純平が補足する。

「オリンポス十二神族はこことは違うデジタルワールドを治めていたデジモンで、昔の古代十闘士にも戦いのアドバイスをくれたんだったよな」

「そうじゃマキ。じゃが、彼らの世界の大地が突然崩壊してしまった。修復するには十闘士のスピリットが必要で、そのために攻め込んできたんじゃハラ」

「でも、それってユピテルモンの嘘だったんだよね」

 ネーモンが口を挟む。俺はトゥルイエモンに教えてもらったことを思い返す。

「ユピテルモンは大地を崩壊させるウイルスを作って、十二神族や部下のデジモンに埋め込んでいたんだ。理由は不明だけど、ユピテルモンは自分から世界を崩壊させた。同じように、十闘士のデジタルワールドも破壊しようとして、ウイルス持ちの十二神族を送り込んできた」

「でも、こっちの世界はウイルスに強くて、全然効果なかったんだよね」

 友樹が座っている地面を手の平で叩いた。

 純平が腕組みする。

「だから、ユピテルモンはウイルス以外の方法でこの世界を壊そうと考えているはずだ。ここまでいいよな」


「前にトゥルイエモンと話した時は、ユピテルモンは世界の破壊に信也を使おうとしてるんじゃないかって話になった」

 言ったそばから信也がいなくなった日のことを思い出して、気分が沈む。

「信也はスピリットのエネルギーデータだけじゃなくて、構成データさえも消費してエネルギーに変える特性を持っている。そうだったよね、ボコモン」

「そうじゃハラ。デジコードを取り込んで強くなるのに似ているんじゃが、違うのは取り込んだデータを消化してしまうところじゃ」

「一時的に強くなれるけど、使ったデータは戻ってこない。ドーピング剤みたいなもんなんだな」

 ボコモンの説明に、純平がうなずく。

 泉が口を挟む。

「確かに、信也の特性を上手く使えばすごい闘士が生み出せるかもしれない。ユピテルモンはそれを狙ってるのかしら」

 友樹が顔をしかめて反論する。

「でも、信也はユピテルモンに協力なんてしないよ」

「そうだな。そう考えていくと、今信也のそばにいるっていう人間の少年が怪しい」

 俺は言いながら考える。ユピテルモンが信也を狙っている段階で、俺達の知らない人間が出てくるのは偶然とは思えない。ユピテルモンが計画のために送り込んだんじゃないか?

「ユピテルモンが生み出そうとしている闘士とその少年には関係があるはずだ。少年を使って、信也が気づかないうちに力を与えてる、とか」


「しかし、いくら異世界の神とはいえ、スピリットに匹敵する力を簡単に作れるかのう」

 ボコモンが自分の本をパラパラとめくって考え込む。

 スピリットは古代十闘士が後世のために残した、文字通り魂そのもの。ただのエネルギーの固まりじゃない。

「スピリットと心を通い合わせたからこそ、俺達はルーチェモンからこの世界を救えたんだ。そんなすごい力をほいほい作れるのなら、とっくにユピテルモン本人が攻めてきてるぜ」

 純平の言うことももっともだ。

 友樹も身を乗り出す。

「それに、僕達が強いってことはユピテルモンも知ってるはずだよ。部下のデジモンはもちろん、拓也お兄ちゃんと輝二さんの記憶から作った敵デジモンだって、みーんなやっつけちゃったんだもん」

「そーいえばそんなのもいたねえ」

 ネーモンが遠い目をする。

「私はあんまり戦わなかったけど、強かったって印象もなかったわね。オリジナルに比べたら、やっぱり弱くなってたのかしら」

 泉も肩をすくめる。

 記憶から作られたデジモン。俺が最後に戦ったのはデュナスモンだった。確かに強かったけれど、異世界のロードナイトモンに助けられて撃破した。

「……あれ」

 そこで気づいた。ユピテルモンはあの後、ロードナイトモンとルーチェモンの記憶を使っていない。輝二達がデジモンの製造装置を破壊したとは言ってたけど……。

「輝二達から取り出した記憶データは製造装置と一緒に壊れてなくなった。本当にそうか?」

 俺のひとりごとに、みんなの視線が集まる。

 証拠があるわけじゃないけど、と言ってから、俺は自分の考えを口にする。

「俺がユピテルモンなら、切り札になりそうなデータは製造装置から回収する。十闘士が一番苦戦した相手のデータなら、なおさら。デジモンを作る以外にも使い道はあるはずだ」




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いわゆる(?)おさらい回です。「今までどんな物語だっけ?」って振り返るあれです。特撮だと恒例イベントなのですが、アニメだとどうなんでしょう。デジモンにはおさらい回らしいおさらい回がないですが。

今までに張った伏線のうち、輝一視点で出せるものはほぼ出しました。あとは信也視点のスーリヤモンと、ノゾムの記憶ですね。(……誰だこんな量の伏線まき散らしたの……自分だよ……)

次回、第173話でいよいよ謎が明かされます。ちゃんと伏線回収しますよっ。



あと8/1ですが、仕事に忙殺されてたせいで、8/1の存在すら7月半ばに思い出した体たらく(汗)準備なんにもできてません。

そこで、7/31のイベントに行きますので、8/1にイベントリポートを載せようと思います。

ごまかしで申し訳ないですが、ご勘弁ください(汗)