「スピリット・エボリューション!」
「ヴリトラモン!」
「ガルムモン!」
「ダブルスピリット・エボリューション!」
「フロストモン!」
「ライノカブテリモン!」
ボコモンとネーモンを引っつかんで、SOSの上がった方向に飛ぶ。
数分もしないうちに、森が途切れた。切り立った崖の下に、盆地が広がっている。見渡す限りの荒野だ。
ライヒモンとジェットシルフィーモンはすぐに見つかった。荒野に背中合わせで立ち、四十体近いデジモンに囲まれている。
「あれは、ユピテルモンが送り込んだデジモンか!?」
「いっぱいいる~」
俺の手の中で、ボコモンとネーモンが身動きする。
「二人はここにいてくれ!」
その場にボコモン達を下ろして、戦いの場に駆ける。
「《コロナブラスター》!」
両腕のルードリー・タルパナから熱線を放つ。
「《ソーラーレーザー》!」
「《ロードオブグローリー》!」
「《サンダーレーザー》!」
闘士達の連続攻撃に、敵がひるんだ。
「距離を取れ!」
戦場に、低い声が朗々と響いた。ライヒモン達の周りにいたデジモン達が素早く離れた。
退いたスペースを狙って、二人の横に滑り込む。
「ジェットシルフィーモン、待たせたな!」
「本当。遅すぎ」
ライノカブテリモンの力強い言葉が一蹴される。だが、声色にほっとした響きがある。
「まさかSOSが来るとはな。ダブルスピリットしても数で押されるのはきつかったか」
「これでも半分は倒したんだ」
ガルムモンに対して、ライヒモンが言い返す。油断なく槍を構えているが、肩で息をしている。
俺は取り囲んでいるデジモンを見回した。種族も大小も様々だ。戦い慣れていないデジモンもいる。構え方を見ればすぐ分かる。
数は多くても、ダブルスピリット二体なら十分に対処できる相手のはずだ。
「兵士は前へ出ろ! その他は三メートル下がって援護の用意!」
さっきの低い声がまた響いた。声の主を探し、視線を走らせる。
黒い壁? いや、デジモンだ。ヴリトラモンでもまだ見上げなきゃならないほど大きい。ライノカブテリモンが立ち上がったらこれくらいになるだろうか。城砦のようなレンガ模様の胴体に、ロボットみたいに四角い手足。威圧感のある目が戦場を見回している。
「あいつが親玉か?」
「ええ。みんなあの指示で動いてる」
俺が聞くと、ジェットシルフィーモンが早口に答える。その言葉通り、デジモン達は素早く陣形を整えた。
「ルークチェスモン。防御と素早さに優れたデジモン。必殺技は敵に突進する《ストロングフォールド》と、腕の砲門から放つ《ルークガトリング》」
フロストモンがデジヴァイスで情報を読み取る。
「一斉攻撃!」
ルークチェスモンの指示で、デジモン達が同時に動いた。
「《ハープーンバルカン》!」
「《ジャスティスブリット》!」
「《ホーンバスター》!」
「《ブレイジングアイス》!」
「《ロイヤルナッツ》!」
「《ハイパーヒート》!」
四方八方からデジモンと射撃攻撃が迫る。
「みんな、俺の近くに!」
ライノカブテリモンが叫び、角を振り上げる。磁場がミサイルや弱いデジモンを弾き飛ばした。
磁場を突破してきたデジモン達と、十闘士が武器を交える。
俺の周りにもデジモンが群がってくる。鎧の間から炎を吹き出し、敵をまとめて炎の渦に巻き込む。
「《フレイムストーム》!」
敵に次々とデジコードが浮かぶ。飛んで戦場を離れ、デジコードをスキャンする。
顔を上げると、戦況を見守るルークチェスモンと目が合った。
「手の空いている者は上空の炎の闘士を狙え!」
その指示に、地上から一斉に弾丸やミサイルが飛んでくる。俺は高度を上げ、複雑に動いて回避した。避けきれなかった攻撃が羽や鎧を削る。
「ぐっ」
動きが鈍った俺に、ルークチェスモンが腕の砲門を向ける。
「《ルークガトリング》!」
弾丸の嵐が鎧を突き抜ける。痛みに息が止まり、頭がぐらついた。
あ、と思った時には地面に体を打ちつけていた。起き上がる暇もなく、腹を蹴り飛ばされる。耐えきれずに、進化が解けた。
「ごほっ……」
腹を押さえて、どうにか上半身を起こす。的確な攻撃の大元はルークチェスモンだ。こいつさえ倒せば十分勝てる。分かっているのに相手に振り回されて、思うように動けない。
進化の解けた俺に対しても、ルークチェスモンは攻撃の手を緩めなかった。
敵の巨体がまっしぐらに突進してくる。
「《ストロングフォールド》!」
ダメだ、動けない!
「拓也!」
横からガルムモンが飛び込んできた。俺の上着を引っつかみ、力強く跳ぶ。
が、一歩足りずに下半身を突き飛ばされた。無茶苦茶な回転をしながら、俺もろとも地面を転がる。俺が起き上がった時には、輝二に戻ってしまっていた。
フロストモン達は乱闘の場から抜け出せないでいる。ルークチェスモンが、文字通りそびえる塔のように立ちはだかった。右腕の砲門が目の前に突きつけられた。
「ユピテルモン様の命により、ここで始末する」
やっぱりユピテルモンの命令か。
「ディアナモンが、お前達の世界から逃げたのは知ってるだろ? どうしてお前達はまだユピテルモンに従っているんだ!」
「お前達の世界が滅びたのは、ユピテルモンが土地を破壊するウイルスを使ったからだ。俺達はその証拠をつかんでいる」
俺が大声を上げて、輝二が冷静に説得しようとする。
砲門の狙いが少しだけ揺れた。
けど、ルークチェスモンの表情は変わらなかった。
「軟弱者の神や敵の言うことなど信じはせん。ユピテルモン様は八百年以上も世界を治めてきたお方だ。天地が崩れても、あの方が間違うはずがない」
その発言を補強するように、左腕の砲門も突きつけてきた。
俺は奥歯を食いしばって、デジヴァイスを握りしめた。
ここでやられるわけにはいかないんだ。
信也のためにも、
このデジタルワールドのみんなのためにも、
ネプトゥーンモン、
ユニモン、
アポロモン、
ディアナモン、
二つの世界の平和を願ったデジモン達のためにも。
「負けるかあっ!」
「うおあああっ!」
「《ルークガトリング》!」
俺と輝二の叫び声は、砲撃の重低音にかき消された。
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拓也サイドは絶賛修羅場です。ダブルスピリットを得た十闘士が少数精鋭なので、苦戦させるために物量で攻めてみました。
途中は「技名でデジモン分かるかなクイズ」です←
敵を一体一体分析している暇はないけど、色んなデジモンがいるということを伝えたい、と迷った結果こうなりました。
リンクスはいまだに進化素材が集められず、成熟期止まりです(汗)年度末で忙しくて、リアルの方のスタミナが足りない……。
明日から新年度ですね。新生活を始められる方もいらっしゃると思います。慣れない事も多いでしょうが、頑張ってください。星流もデジモンと特撮を励みに(笑)東京2年目頑張ります。
【追記】tri第参章のビジュアルがホームページ公開されましたね。いやあ、タノシミダナー(笑)