第165話 ディノビーモンの苦悩! やまない不和 | 星流の二番目のたな

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デジモンフロンティアおよびデジモンアドベンチャー02の二次創作(小説)中心に稼働します。たまに検証や物理的な制作もします。
続き物、二次創作の苦手な方はご注意くださいませ。

 左側の建物は、塔の折れていた右側よりはましだった。壁や天井にあちこち穴が開いてるけど、少なくとも道がふさがってないし、足の踏み場がある。

 二階建てのうち一階は食堂と調理室だった。

 広い食堂に、木製の長テーブルとイスがいくつも散乱している。ここでも戦闘があったみたいだ。

調理室から外に通じるドアは開いたままで、ちょうつがいはさびついて動かなくなっている。外へ必死に逃げていくデジモンのユウレイが、一瞬見えた。

「ここは、はっきりしたユウレイ現象は出ないみたいだな。何か思い出すか?」

 ノゾムに聞くと、顔をしかめて食堂を見回す。

「あんまり。この部屋の印象は残っていないんだ。僕がご飯を食べていたの、ここじゃないのかも」

「ふうん。ここは働いているデジモンの食べるところで、人間のノゾムは別の場所で食べてたってことか?」

「多分」

 言ってから、首を傾げつつ天井を指さす。

「上の階に、食事をする小さな部屋があった気がする」

 こことは別にか。

「よし、行ってみよう」

 調理場から二階に階段が伸びている。土ぼこりが厚く積もっていて、俺達が歩くとはっきり足跡が残る。

 上った先には短い廊下があって、小部屋につながっている。

 俺達が部屋に入った途端、過去の記憶が押しよせてきた。




 僕が昼ご飯を食べ終わっても、ディノビーモンはまだ執務室にこもったままだった。

「あの、ディノビーモン様のお食事はいかがしましょうか」

 通用口から、給仕のバクモンが遠慮がちに聞いてくる。冷めた料理を出すわけにはいかないけれど、ディノビーモンの執務室に入れる立場ではない。

 困っているバクモンに、僕は優しく笑いかける。

「僕が聞いてくるよ」

 席を立って、執務室につながるドアをノックする。

「ディノビーモン、入ってもいい?」

「……ああ」

 ドアの向こうから気の抜けた返事が聞こえる。僕はノブをひねって開けた。

 突き当たりの執務机に、ディノビーモンはいつもの猫背でうずくまっていた。書類や本が積み上がっているのと、窓が背中側にあるのとで、表情が暗く見える。

「バクモンが、食事はどうするかって。早くしないと冷めちゃうよ」

「そうだな」

 返事をするわりに、ディノビーモンは立ち上がろうとしない。

 僕はその横に歩み寄った。

「さっきの話し合いのこと、考えてるの?」

 午前中この城で、人型デジモンの指導者グレイドモンと獣型デジモンの指導者ガルダモンの会談があった。

 全面的な戦争は終わったけど、まだあちこちで小競り合いが起きている。それを止めるために、ようやく実現した代表者同士の話し合いだった。

 けれど、話し合いは怒鳴り合いに発展してしまった。大声が部屋の外にまで響き渡った。

 ディノビーモンの制止がなかったら、乱闘になっていたかもしれない。

 ディノビーモンの複眼が上目遣いに天井を見る。

「ルーチェモンも私も二つの種族を平等に扱おうとしているのに、彼らは少しでも自分達の利益を増やそうとする。完全な平和はまだ遠いようだ」

「どうして自分の種族のことばかり考えるんだろう。争っても傷つくデジモンや壊れた町が増えるだけなのに」

 僕の疑問に、ディノビーモンはぽつりとつぶやく。

「怖い、んだろうな」

「?」

 僕は首を傾げる。

「人型デジモンには知略と武具を扱う技能がある。獣型デジモンには意志と刃に耐える肉体がある。お互いが自分達にないものを、知らない力を持っている。それに、文化も違う。何を考えているのか分からない。何をしてくるか分からない。だから怖くて、相手を潰してしまいたくなる」

「……よく分からないよ。知らないと、怖いの?」

 悩む僕に、ディノビーモンはふふっと笑って頭をなでてくれた。

「今度ケンタルモンに聞いてみるといい。私より教え方が上手いから」
 さて、とディノビーモンが立ち上がる。

「バクモンや料理人を待たせてはいけないな。デザートを用意できるか聞いてみよう。私が食事をする間、食べているといい」

「やった! あ、そうだ、バドモンがもうすぐ進化しそうって話したっけ?」

 ディノビーモンの手を引いて、口も忙しく動かしながら、バクモンの待つ部屋に戻った。




 小部屋には、二人が食事に使っていた机とイスがそのまま残っていた。人間の少年にちょうど良さそうなイスの向かいに、ディノビーモン用の大きなイス。

「ノゾムは、いつもここでディノビーモンと食べてたのか?」

「うん。僕がバドモンと何を勉強したか聞いてくれたり、最近の世界の話をしてくれたりしたんだ。忙しいのに、僕のこと気にしてくれてた」

 ノゾムは懐かしそうに、自分の座っていた小さいイスをなでた。

 奥のディノビーモンの執務室は、机はそのままになっていた。だけど引き出しは残らず開けられて、中身は空っぽだった。本棚も同じだ。誰かが持ち去ったらしい。

「ノゾムのこと書いてある紙でもあればよかったんだけどな」

 俺が顔をしかめると、ノゾムは落ち着いた表情で首を横に振った。

「いいよ。ディノビーモンとこの部屋で話したこと、楽しかったこと思い出せた。それだけで嬉しい」

 執務室には、もう一つドアがあった。

 開けると体育館くらいの広い部屋だった。机やイスが向かい合って並んでいる。他に目立った家具もないし、会議室ってところか。

「この階はこれでだいたい全部だね」

「後は真ん中の建物か。大丈夫か? 疲れてないか?」

 俺が気をつかうと、ノゾムは元気よくうなずいた。

「僕は平気。信也こそ辛くない?」

「ったく。お前に心配されるほどへばってないっての」

 俺が頭を小突いてやると、ノゾムは小さく笑い声を立てて肩をすくめた。俺より体力ないくせに。




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廃墟探索中の二人は平和です。まだ。


信也「ネクストオーダーにかまけてないでさっさと続き書けよ」


なっ、ゲーム内でもひねくれっぷりを発揮しているのはどこの誰よ!


信也「え、初代からちゃんと究極体のカオスデュークモンになったじゃん」


嬉しいけど……店舗オリジナル特典でせっかく手に入れたこの混沌核どうしてくれるのっ!

いきなり特典の使い道を潰すんじゃない!


信也「星流がそういうルートに育てたからだろ」


そーだけど、そーだけどさあっ!

……もう、名は体を表し過ぎてて笑えてきます(笑)ふきだしのセリフまでツン系だし。


さて、今週末のニチアサは戦隊の「大和」とライダーの「タケル」が出会うスーパー兄弟タイム(笑)無印の彼らとは全然性格違いますけど、奇妙な一致にちょっとほっこりしています。

ではっ。