第160話 闇のエリアへの突入! それぞれに城を目指して | 星流の二番目のたな

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デジモンフロンティアおよびデジモンアドベンチャー02の二次創作(小説)中心に稼働します。たまに検証や物理的な制作もします。
続き物、二次創作の苦手な方はご注意くださいませ。

 闇のエリアの境界に着いたのは、丸一日経ってからだった。
 本当はトゥルイエモンの城の近くから入ることもできた。けれどわざわざ木のエリアから入る道を選んだ。回り道してきたのは、エンジェモンからの提案があったからだ。

 海の上に敷かれた線路の上で、トレイルモンのワームが止まる。闇のエリアを覆っている暗いドームは目の前だ。

 ここまで送ってくれたトレイルモンにお礼を言って見送る。

 それと入れ違いに汽笛の音がした。地平線の向こうからトレイルモンのケトルが走ってくる。

 そして、後ろの客車から手を振っているデジモンが二人。

「お~い、拓也はーん!」

「みんな~!」

 こっちからも泉が大きく手を振って、声を張り上げる。

「ボコモン、ネーモン!」

 ケトルが止まると、ボコモンとネーモンがすぐさま降りてきた。

「古代の資料の分析が終わったって本当か?」

 純平が聞くと、ボコモンが嬉しそうに胸を張った。

「テイルモンの城にあった文献は、元・三大天使の協力もあって解読できたハラ! これから闇のエリアを動くのに便利な情報も手に入ったんでこうしてやってきたんじゃマキ」

「オレ、お城のベッドがよかったな……」

 ぐちるネーモンはいつも通りゴムパッチンで黙らされる。

 俺はいつもと変わらないそのやりとりに安心した。

「二人が一緒に来てくれると心強いよ。闇のエリアは昔通ったけど、分からないことだらけだし」

「早く信也を見つけるためにも、道案内は必要だ」

 輝二も俺の言葉に賛成してくれた。

 ケトルを見送ったところで、輝一が闇のエリアを覆うドームに向き直る。ポケットからデジヴァイスを取り出した。

「行こう。まずはこの壁を破る」

「ああ。ここは輝一に任せるよ」

 俺は出しかけていた自分のデジヴァイスをしまった。俺と輝二はダブルスピリットができない。前に使っていたセラフィモンの力は、最初のデジヴァイスと一緒に消えた。補助してくれるスピリットもない。

 前は俺と輝二が一番強かったのに、ちょっと変な気分だ。いや、悪い気はしないんだけどさ。


「ダブルスピリット・エボリューション!」

「ライヒモン!」


 ライヒモンが腰の位置で槍を構える。

「はあっ!」

 ドームに槍が突き刺さる。見る間にひびが入った。

 槍を引き抜き、蹴りを入れる。

 ドームの一部が砕け散り、俺達の入れそうな穴が開いた。

「行くぞ!」

 また塞がる前に、俺達は闇のエリアに駆け込んだ。



 外見から想像のついてたことだけど、エリアの中は夜のように暗かった。空を見上げても、太陽や星は見えない。

 それ以外には、目立った異変はなかった。嵐も超低温もない。前から陰気なエリアだったから、結界を壊されても気候に影響が出なかったのか。

「それで、ここからどこに行くの?」

 友樹の疑問に、ボコモンが素早く本を取り出した。ぱらぱらとめくって、地図のページを開く。

「ここからじゃと永遠の城が近いぞい。昔ディノビーモンというデジモンが住んでいた城ハラ。わしらも前に行ったことがある場所じゃマキ」

「私達が、前に闇のエリアで行ったお城って」

「もしかして、俺達がメルキューレモンとラーナモンに捕まって拷問受けたあそこか?」

「うわあ……」

 泉、純平、友樹がそろってげんなりする。輝二も渋い顔をしている。俺が駆けつけるまで二対一で戦っていたんだから、あまりいい思い出じゃないはずだ。

 俺にしてみれば、自分が本当の意味で炎の闘士になれた場所なんだけど。またあそこに行きたいかと聞かれると微妙だ。

「とにかく、信也の手がかりを探すんなら目立った建物を当たった方がいいだろ。その、永遠の城だっけ? 行ってみようぜ」

「うん。ボコモン、道案内頼むよ」

 俺がまとめると、輝一もボコモンに顔を向けた。

「おう! みんな、わしについてこーい!」

「あっ、待ってー」

 元気よく出発するボコモンの後を、ネーモンと一緒に歩き出した。




―――




 光の城に着いたのは、追っ手の襲撃から半日経ってからだった。

 本当は一時間足らずの距離だった。でも、光の城に行った奴は誰も帰ってこないだなんて嫌な話も聞いている。

 だから野宿で一晩明かして、少しでも体力を回復させてから行くことにしたんだ。スーリヤモンは強いけど、戦いの疲れを抱えたまま城に入りたくはない。

 城は堀と外壁に囲まれていた。

 近くで見るとひどい状態だ。元は真っ白な石で作られた城や外壁だったんだろう。だけど、今はススと砂ぼこりにまみれている。デジモンの攻撃でえぐれたり崩れたりしている所も多い。

 全体を見回してみる。俺の学校と同じくらい大きな建物だ。中央の建物に、左右に張り出した建物がついていて、コの字の形になっている。中央が三階建てで、左右は二階建て。それぞれの建物の中心から塔が一本ずつそびえている。

 昔は立派な建物だったんだろうな、と思う。ただし、今はボロボロで、見ていると変に威圧感がある。

「ノゾム、本当にここなのか?」

 旅の相棒に確認してみる。白くて横に長い建物には間違いない。

 ノゾムはじっと廃墟を見つめた。自分の記憶を引き出そうと顔をしかめている。

「うん。間違いない。まだ具体的には思い出せないけど、確かに僕はここにいた」

「そっか」

 おっさんの情報は正しかったってわけだ。

「なら、中に入ってみようぜ。もっと色々思い出せるかもしれない」

「そうだね。でも、気をつけて」

「ああ」

 城に何が待ってるのかは知らないけど、ここで死んだんじゃ何にもならない。

 正門の前に跳ね橋が降りているのが見えた。あそこから中に入れそうだ。

 俺はノゾムの一歩先を歩いて、跳ね橋へと進んでいった。




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ここ数日何の予定もなかったので小説執筆に心血を注いでいたら、一本書きあがりました。ちょっと複雑な気分です(苦笑)

城の中に入ると双方長くなるので、年内はここで切ります。

裏で正月小説も進めています。今年こそは早くUPしようと前倒しで書き始めたんですが、またしても長くなる病を発症してしまい……な、なんとか松の内にはUPできるように頑張ります。


これが年内最後の更新です。ぼちぼち毎年恒例の忙殺期間に入ってしまうので(汗)コメント等反応が遅れてもご容赦ください。

ではみなさま、良いお年をっ。