第158話 探し物を探して! 荒れ地に散らばるもの | 星流の二番目のたな

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デジモンフロンティアおよびデジモンアドベンチャー02の二次創作(小説)中心に稼働します。たまに検証や物理的な制作もします。
続き物、二次創作の苦手な方はご注意くださいませ。

 俺と友樹、純平、輝一は城近くの線路で時間をつぶしていた。そばではトレイルモンのワームがいびきをかいている。これから闇のエリアまで俺達を運んでくれる。

「お待たせ~!」

 大きな声に振り返ると、泉が手を振りながら走ってくるところだった。

「泉ちゃん!」

「もうケガ大丈夫なのか?」

 俺が聞くと、泉はにっこり笑って胸を張った。

「うん! バクモン達がくれたアンブロシアのおかげね。すっかり良くなったわ」

 本人はそう言うけど、久しぶりに見る泉は、少し元気がなかった。多分、ディアナモンのこと引きずってるんだ。アンブロシアは万能だけど、心の傷は治せない。

 それから五分もしないうちに、輝二も城から歩いてきた。

 待ちくたびれていた友樹が唇をとがらせる。

「遅いよ、輝二さん」

「悪い。ほとんどのデジモンが、避難するのに精いっぱいだったらしい。知ってるって奴を探すのに時間がかかった」

 輝二が肩をすくめる。

「見つかったのか!」

 俺が一歩踏み出すと、輝二が俺を見て頷いた。
「ユニモンは船が出向する直前、どこかに飛び去ったそうだ」

「そっか。それだけでも分かって良かった」

 避難民達が来た時点で、ユニモンがうまくやったんだとは分かってた。そのままネプトゥーンモン探しに行くことも知っていた。でも、無事にやってるって情報をつかんでおきたかったんだ。

 横で聞いていた純平が腕組みして口を開いた。

「大丈夫なのか? 城にいた住民も逃げてきて、あっちの世界にはもう、ユピテルモンとその手下しかいないんだぜ」

「俺から見ても、ユニモンは戦いに強いデジモンには見えなかったな。敵に見つかったら抵抗できない」

 輝一も真剣な顔で主張してきた。気持ちは分かるけど。

「あいつなら心配ないさ。空も飛べるし時空も越えられる。逃げ足だったら最速だ」

「俺達二人を乗せた状態でもユピテルモンの攻撃から逃げられたからな」

 俺と輝二が保証する。戦闘力はゴミくずだけど、生き延びる力なら十分ある。

「信頼……してるんだよね?」

 友樹の言い方に全員が吹きだした。確かにこんな言い方じゃ、ほめてるんだか、けなしてるんだか分からないな。

 ユニモンのことはあいつ自身がなんとかする。俺達はこっちでできることをやろう。

「よし、トレイルモン起きろ! 闇のエリアに出発だ!」

 トレイルモンのボディを叩いて、俺は声を張り上げた。




―――




 さびれた永遠の城を出て二日。俺とノゾムは暗い森を抜けた。

 抜けてすぐが切り立った崖になっている。その向こうは、見渡す限りの荒れ地だった。ところどころに岩の転がっている他は、何もない。乾いた茶色の地面が広がっているだけだ。生き物の気配さえない。

「道を間違えたわけじゃないよな? こんな場所に光の城が――ルーチェモンのいた城があるのか?」

 歩いてきた道を振り返る。前にノゾムが見つけたのと同じ、古いタイルの残る道だ。おっさんの教えてくれた方角に伸びているこの道をまっすぐ歩いてきた。間違えるわけがないんだけど。

「あるよ」

 ノゾムのはっきりした声。ノゾムは荒れ地の向こう、一点を指さした。

「地平線の辺りに、白い塔が見えるの分かる?」

「ああ、言われてみれば……塔っぽいのが見えなくもないな」

「あれが光の城の左右の塔のうちの一本。本当ならもう一本と中心の城も見えるはずなんだけど、一本しか見えない」

 ここからはほとんど見えない城の構造を、ノゾムはすらすらと答えた。

「よし、なら行こうぜ」

 俺達は荷物を背負い直して、崖を削って作られた道を下った。

 荒れ地に降りると、タイルの道はほとんど分からなくなった。五分に一回くらい、タイルの破片が見つかるだけだ。何か大きなデジモンに踏まれたようなタイルや、焼け焦げたタイルもあった。

 ふと近くの岩に目が止まった。

「これ……家の跡か?」

 遠目に岩に見えたそれは、レンガの積まれた壁だった。タイルと同じように、破壊されて風にさらされて、だいぶ傷んでいる。

 もしかして。他の岩にも駆け寄ってみる。そっちは井戸だった。暗い中に、石を投げこんでみる。カラン、とさみしい音がした。

「昔、デジモンが住んでたのか」

 ノゾムに言葉を投げかける。ノゾムはぼうっとした目で荒れ地を見回して、あいまいに頷いた。

「僕が覚えているここは、城下町なんだ。水が豊かで、草原が広がっていた。世界中からデジモンや商品が集まって、毎日にぎやかな音であふれていたんだ」

 ノゾムが辛そうに目を細める。

「どうして何もなくなっているんだろう。一体何が」

「それはきっと、光の城に行けば分かるさ」

 ノゾムの肩に手を置いてやる。

「光の城に近づくにつれて、お前の記憶も少しずつ戻ってきてる。住んでた城を見たら、もっと色々思い出すよ」

「うん、そうだね」

 俺の励ましに、ノゾムの表情が少し緩んだ。


 直後、その顔がこわばった。

「後ろ!」

 振り向く。黒い空から、同じ色のデジモンが急降下してくる。

「っ!」

 ノゾムの肩を抱えてその場に伏せた。すぐ上を風が吹き過ぎる。左手首がカッと熱くなった。

 少しだけ体を起こす。デジモンは離れた場所に着地して振り向いた。

 今まで襲ってきた緑や青のと同じ。黒の追っ手だ。髪と肩と下半身の毛は闇の色。角と顔の半分を覆う仮面は濃い紺色。背中に生えた翼もだ。両ひじとしっぽには長い鎌がついている。

 思わず舌打ちした。ここは隠れる場所もほとんどない荒れ地。待ち伏せにはぴったりだ。先回りしてたんだな。

「信也、血が」

 ノゾムに言われて、左手首を見た。手首の外側に浅い切り傷があって、血がこぼれている。俺は右手で手首を押さえた。

「これくらい心配ない。それより、銃使えるか」

 ノゾムが腰に手をやって、硬い表情で頷いた。

 敵が地面を蹴り、俺達目がけて駆け出した。ノゾムが銃を引き抜いて、三発連続で撃った。

 一発が足をとらえた。力が抜け、地面に倒れこむ。

「今だ、走れ!」

 俺達は立ち上がって全力で駆けだした。滅びた町の中を、光の城に向かって。
 途中ではっとして、左手首を押さえ直した。

 つけていたはずの通信機がない。さっきの攻撃でベルトが切れたんだ。

 せっかく異世界でもらったものだったけど……ダメだ、取りには戻れない。

 傷を押さえる手に力をこめる。俺はそのまま走り続けた。


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tri方面にかまけていてすみませんでした。ここから通常運転に戻ります。「明日更新する」と言った割にてっぺん越えてしまった(泣)


今回の敵は、名前は本編に出しませんが読者のみなさん的にはバレバレなので容赦なくデータを載せますね↓


今回初登場のデジモン

アイギオテュースモン:ダーク