第152話 帆船を巡る攻防! 凛然と立つ最後の女神 | 星流の二番目のたな

星流の二番目のたな

デジモンフロンティアおよびデジモンアドベンチャー02の二次創作(小説)中心に稼働します。たまに検証や物理的な制作もします。
続き物、二次創作の苦手な方はご注意くださいませ。

 フランケンが緩やかにブレーキをかけて止まった。私達は開いたドアから次々に飛び降りる。氷の地面に足が着くと同時に、左手にデジコードを浮かべた。


「スピリット・エボリューション!」

「フェアリモン!」


「ダブルスピリット・エボリューション!」

「フロストモン!」

「ライノカブテリモン!」


 私は少し上空に飛んで、改めて戦況を見た。

「海竜デジモンは帆船にしっかり絡みついてる。そう簡単には離れそうにないわ」

「メガシードラモン。必殺技は頭部のブレードからの雷撃《サンダージャベリン》か」

 ライノカブテリモンが磁場でデジヴァイスを操作し、敵の情報を読み取った。

 とにかく帆船から引きはがさないと、全力で攻撃できない。

「二人とも、メガシードラモンだけ狙って攻撃できる?」

 下の仲間に聞く。まずフロストモンが首を横に振った。

「僕の斧じゃあそこまで届かないよ。高度がありすぎる。ライノカブテリモンの《サンダーレーザー》なら届くかも」

「届きはするが、《サンダーレーザー》は威力が強すぎる。船ごと貫いてしまうかもしれない」

 ライノカブテリモンにも言われて、私は考えこんだ。攻撃しようにも、空では手が出せない。仲間二人は大きすぎて、私が運ぶこともできないし。

 私が何とかして、帆船を地上に下ろすしかない。

「船を不時着させられるかやってみる。二人は狙えそうな高度になったら攻撃して」

「うん、分かった!」

「フェアリモン、気をつけて」
 私は背中の翅をはばたかせて、帆船目指して飛んだ。


 近づくと、船の乗員達の戦っているのが見えた。サイボーグ型だったり恐竜型だったり、見た目もばらばらのデジモン達だ。でも全員が協力して、必死にメガシードラモンと戦っている。

 メガシードラモンの頭は船首にあって、乗っているデジモン達に雷撃を落としている。

 船は長い体で締め上げられ、ひびが入り始めている。三本あるマストのうち、二本はもうへし折られていた。

 まずはメガシードラモンを引きつけて、乗員達が船を下ろすのに集中できるようにしないと。

 両手に竜巻を生み出し、敵の頭めがけて投げつける。

「《ブレッザ・ペタロ》!」

 でもその攻撃は、頭を覆う外殻に弾かれた。メガシードラモンは一瞬だけ私を見て、すぐに船に注意を戻してしまった。

 頭への攻撃がダメなら、弱い胴体の部分を。

 私は船の横に移動して、長い胴体に連続蹴りを叩き込んだ。

「《ロゼオ・テンポラーレ》!」

 私の息が上がるまで蹴り飛ばしても、胴体はびくともしなかった。このデジモン、強い。

 ううん、私の方が弱いのかもしれない。他の仲間の攻撃が届きさえすれば、簡単にやっつけられるのかも。

 駄目よ、弱気になっちゃ。私は自分を叱った。まだ取れる手段はある。全部やりつくすまで、諦めてたまるもんですか。

 私は一度距離を取った。体の向きを変えて、勢いよく胴体へと飛ぶ。

「《カリーノ・アンカ》!」

 敵に混乱を与えるヒップドロップ。直後、船の上で猛威を振るっていた雷が止まった。船を締めつけていた力も少し緩んだ。

 私はすぐさま甲板に飛んで、乗員達に叫んだ。

「さあ、今のうちに船を下ろして!」

 乗員達は急いで舵やマストに駆け寄った。帆船が少しずつ地上に向かって下りはじめる。
 地上を見ると、フロストモンとライノカブテリモンも着陸の予測地点を目指して移動してくれている。


 その様子に気を取られて、背後でメガシードラモンが頭をもたげたのに気づかなかった。

 振り向いた時にはぎらつく角が目の前にあった。体をひねって避けようとしたけど、間に合わない。

「くっ……!」

 左肩に角が突き刺さった。痛みに一瞬気が遠くなる。息ができない。

「《アロー・オブ・アルテミス》!」

 凛とした声と共に、きらめく氷の矢が飛び込んできた。狙いすました一撃が、メガシードラモンの角を根元から折った。

 肩に角が刺さったまま、私はその場に倒れた。走る音と一緒に、凛とした声も近づいてきた。

「非戦闘員は闘士の救護に回れ! 船員は制御に専念せよ!」

 視界に入ったのは、白い鎧をまとった人型デジモンだった。頭部には兎の耳のように長い突起が二本。両肩には青い三日月、両膝にも白い三日月がついている。得物は棒の両端にとりつけられた、薄く鋭い刃。
 走る勢いのまま、デジモンが刃を振り上げる。

「《クレセントハーケン》!」

 メガシードラモンの頭は、甲殻ごと真っ二つになった。

 デジモンが武器についたデータ片を払う。メガシードラモンはデジコードに包まれ消えていった。


 その間に、私のそばにデジモンが駆け寄ってきた。ゴブリモンが二人がかりで角を引きぬき、バクモンが茶色い粉を傷に塗りつけた。不思議と、粉を塗られたそばから痛みが消えていく。

 体を起こすと、まだ危険は去っていなかった。船の傾きがひどくなり、進路もふらついている。墜落しかかっているんだ。

 さっきのデジモンが私を見た。

「立てるか」

「ええ。下から船を支えるわ」

 私は再度飛んだ。船の下に回って、船底に風をぶつける。

「《ブレッザ・ペタロ》!」

 船の傾きがわずかに修正される。

「フェアリモン! 俺も手助けする!」

 ライノカブテリモンの声。目に見えない力が更に船を支えた。ライノカブテリモンの磁場だ。高度が下がって、地上からの技が届くようになったんだ。

「《アイスプラント》!」

 フロストモンのロープが船首や船尾に絡みついた。フロストモンがロープの先を握って、凧のように向きを調整してくれる。

 地上が迫ってきたところで、私は風を止めて船底から離れた。船と地面が当たって、ガリガリと激しい音を立てる。ライノカブテリモンとフロストモンが、踏ん張ってそのスピードを殺す。

 やがて左斜めに傾ぎながらも、帆船は静止した。


 中から木製のタラップがかけられた。その階段を降りてきたのは、さっきメガシードラモンにとどめを刺したデジモンだ。

 私達の前まで来ると、デジモンは得物を足元に置いた。背筋を伸ばして立ち、私達をまっすぐに見る。

「先程の援護感謝する。私はオリンポス十二神族が一柱、ディアナモン。この世界を守護する十闘士よ。其方達に民の保護を願いたい」

 ディアナモン。これまで表舞台に出てこなかった、最後の十二神族。




☆★☆★☆★




はい、名前だけは話に出てきていたディアナモンの登場回でした。氷、女性型、ということで、気づけば性格やしゃべり方が一次創作の誰かさんにそっくりです(汗)



今回初登場のデジモン

メガシードラモン

ディアナモン