〔34〕己の仲間を守れ | 星流の二番目のたな

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デジモンフロンティアおよびデジモンアドベンチャー02の二次創作(小説)中心に稼働します。たまに検証や物理的な制作もします。
続き物、二次創作の苦手な方はご注意くださいませ。

 赤鎧のデジモンが両拳を突き合せる。籠手の穴から炎が吹き上がった。

 パートナーデジモン二人が同時に振り向く。

「大輔、進化させて!」

「ヒカリ、一度おとなしくさせないと、話を聞いてくれそうにない」

 子ども二人は迷ってから、うなずいた。話をするにしろ、身を守るにしろ、このままでは無理だ。


「デジメンタル・アップ!」

「ブイモン、アーマー進化!」


「燃え上がる勇気、フレイドラモン!」



「デジメンタル・アップ!」

「テイルモン、アーマー進化!」


 テイルモンの背から白い翼が伸び、古代エジプトを思わせるマスクを身につける。


「微笑みの光、ネフェルティモン!」


 相手は吹きあげた炎を両腕にまとわせ、二発の火炎弾として撃ち出した。

「《バーニングサラマンダー》!」

「《ナックルファイア》!」

「《ロゼッタストーン》!」

 フレイドラモンが火炎で相殺し、ネフェルティモンが石板で誘爆させる。

 その間に大輔達は木陰に逃げ込んだ。そこから声を張り上げる。

「お前、誰なんだ!? どうして俺達を攻撃するんだよ!」

「どうして!? お前達だけ逃げておいて、よくそんなことが言えるな!」

 大輔の声には、叩きつけるような答えが返ってきた。

 それを聞いて、大輔は一つだけ確信した。やっぱり、相手は大輔のことを知っている。それに、どこか聞き覚えのある声だ。

 相手がネフェルティモンに向かって駆けた。勢いに乗せて体を回転させ、回し蹴りの構え。

「させるか! 《ファイアロケット》!」

 フレイドラモンも全身を炎に包み、相手の懐に飛び込む。

「《サラマンダーブレイク》!」

 二つの技がぶつかり、炎の渦が巻き起こった。

「うわあっ!」

 弾き出されたのはフレイドラモンの方だった。大輔達が隠れるそばに叩きつけられる。

「しっかりしろ!」

 大輔が駆け寄ると、アーマー進化が解けた。相手は容赦なく、再び炎を腕にまとう。


「やめて、アグニモン!」

 そう叫んだのはヒカリでも、ネフェルティモンでもなかった。

 妖精型デジモンが飛び込んできて、大輔達と相手の間に割り込んだ。アグニモン、と呼んだデジモンに向かって両手を広げる。

「フェアリモン――泉!」

 声を上げた大輔に、フェアリモンは小さく振り返ってうなずいた。すぐにアグニモンに視線を戻す。

「大輔達は悪くないわ。たまたまあの時に、みんなのそばにいられなかっただけ。私達も。そうでしょ?」

「フェアリモン、大輔達の肩を持つのか?」

 アグニモンが不機嫌な声で聞いた。フェアリモンは首を横に振る。

「ごめん言ってる意味が言葉的に分からない。でも私が言いたいのは、今ここで大輔達を攻撃しても何の解決にもならないってこと。ボコモンがこんなアグニモンを見たら、間違ったスピリットの使い方だって怒るわよ」

 アグニモンはふと押し黙った。

「……もう分かんねえよ、今更そんなこと」

 ぽつりと言って、燃えていたこぶしを下ろした。

 フェアリモンとアグニモンの体がデジコードに包まれる。

 デジコードが消えた時、そこには泉と拓也が立っていた。

「アグニモンって、拓也だったのか」

「じゃあ、あの後スピリットを見つけたの?」

 大輔が目を丸くして、回復したブイモンも質問を投げた。

 拓也はばつが悪そうに肩をすくめた。

「まあな。でも、その後色々あって……とりあえず、いきなり殴りかかったりしてごめん。俺の中で、まだ気持ちの整理がついてなくて」

 そう言う拓也の表情は苦しげだった。

 拓也達が進化を解いたのを見て、ヒカリと、進化を解いたテイルモンが近寄ってきた。

「拓也くんと泉さん、でしたよね。大輔くんから話は聞いています。私は大輔くんのクラスメイトで、八神ヒカリです。こっちは私のパートナーデジモンのテイルモン」

「よろしく」

 テイルモンも手短にあいさつした。泉がそれに答える。

「初めまして。織本泉よ。さっきのは風の闘士フェアリモン。で、初対面の相手に殴りかかったこのバカが神原拓也」

「バカは余計だ」

「で、さっきのが炎の闘士アグニモン。よろしくね」

 拓也の文句を笑顔で聞き流し、泉が話を終えた。


「ところで、何があったんだ?」

 大輔が聞くと、拓也達の表情が暗くなった。

「俺達にも、まだ詳しいことは分からない。大輔達と別れた後、俺と泉は炎の町まで戻って、そこでアグニモンのスピリットを見つけたんだ。それからは、大輔達を追ってレール沿いにきたんだけど」

 拓也が珍しく口ごもる。

「……俺達が見つけた時には、めちゃくちゃになった戦場の跡に、ボコモンしかいなかった。ボコモンも傷だらけで、手当てのしようもない状態で」

 大輔は、心臓に氷を押し当てられたような気がした。短い間でも、大事な仲間だったのに。

 泉は黙ったまま、こぶしを握りしめている。

「ボコモンが教えてくれたのは、大輔達がいなくなった後に謎のデジモンが一体襲ってきて、誰もかなわなかったってこと。輝二も、友樹も純平も。ボコモンとネーモンが体を張って、なんとか三人を逃がしてくれたんだ」

「でも、二週間経っても誰も見つけられない」

 泉がぽつりと言った。

「そう、だったの」

 何か思うところがあるのか、ヒカリは拓也達に同情の目を向けた。

「しかし、その襲ってきたデジモンは何者だったんだ? 拓也達が戦っていた敵か?」

 テイルモンが問いかけると、泉が首を横に振る。

「分からない。そっちも手がかりなくて。ボコモンとも……あまり長く話せなかったから」

「大輔達はどうなんだ? 肝心な時にいなくなって、何やってたんだよ」

 拓也の声に少しつっけんどんな調子が戻った。

 大輔は言葉に困って頬を掻く。

「話せば長くなるんだけど、何から話せばいいかなー」

 言いながらヒカリを見る。

「まず、私達選ばれし子どもについて話すね」

 自然な流れでヒカリが話を引き取り、ひそかに安心する大輔であった。




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何はともあれ合流です。


ボコモン、ネーモン、ごめん。まじごめん。フロ02でもレギュラー扱いできてないからユナイトではもう少し活躍させようと思ってたんだけど……ひとつはキャラを減らさないと処理しきれなくなること、ふたつは状況の深刻さを出すため、こうなりました。きっとかっこよく散った。