第137話 そびえる壁を越えて! 氷のエリア突入 | 星流の二番目のたな

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デジモンフロンティアおよびデジモンアドベンチャー02の二次創作(小説)中心に稼働します。たまに検証や物理的な制作もします。
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 早くに目が覚めた俺は、ぼうっとしながら体を起こし、窓の外を見た。

 海の上に敷かれたレールをトレイルモンが突き進んでいる。夜明けの光を浴びて、海は色を取り戻し始めていた。

 雷と風のエリアが二つとも解放されていない状況で、氷のエリアに直接向かえるのはこのルートだけだ。

 本当なら雷か風のエリアの方が陸伝いで行きやすい。エリアを一つ取り戻すのなら、どちらかに行った方がルート的にはよかった。

 それでも一番遠い氷のエリアを選んだのは純平だ。信也が行方不明になって不安な友樹に、モチベーションを持たせるため。俺も泉も賛成だった。誰が見ても分かるくらいに、友樹は落ち着きを失っていた。

 ドアの滑る音がして振り向くと、隣の客車から友樹が入ってくるところだった。俺が起きているのに気づいて、目が合う。友樹は申し訳なさそうな顔をした。

「ごめんなさい、起こしちゃったかな」

「いや、友樹のせいじゃないよ」

 微笑んで首を横に振る。

「そう。アングラーに聞いたら、あと一時間くらいでエリアの境に着くって」

「分かった。着くまでもう少し寝てたらどうだ? 氷のエリアに入ったら、いつまた休憩を取れるか分からないし」

「うん、でも何かしてないと落ち着かなくて」

 俺は座席に座り直した。友樹が近づいてきて、俺の横に腰を下ろした。

 お互いが話し出さないまま、時間が流れる。窓の外を景色が流れる。車輪がレールを踏む規則的な音が聞こえる。

「輝一さんってすごいね」

「え?」

 急に思いがけないことを言われて、友樹の顔を見た。友樹は窓の外を見たまま続ける。

「輝一さんだけじゃなくて、泉さんも純平さんも、なんだけど。仲間の半分がどこかにいなくなっても、すごく落ち着いてて。僕だって5年生になったのに、全然かなわないや。輝一さん達が5年生だった時はもっとしっかりしてたのに」

「そんなことないさ」

 俺は苦笑した。

「前の冒険の時は3年生だったから、俺達がしっかりして見えただけだよ。みんな友樹に負けないくらい落ち込んだり失敗したりしてた。俺だって信也みたいに色々抱え込んでた時期があったし。今の友樹はあの頃の俺達よりたくましいよ。自信を持っていい」

「そ、そうかなあ」

 面と向かって言われたせいか、友樹は照れ臭そうに肩をすくめた。

 トレイルモンの力強い汽笛が響いた。

「あ、そうだ。氷のエリアに入る前に朝ごはん食べといた方がいいよね。僕準備してくる!」

 思いつくやいなや、友樹は座席から跳んで立ち上がり、前の車両に駆けていった。せわしないけど、その方が友樹も落ち着くんだろう。

 俺はポケットからデジヴァイスを取り出した。俺と輝二のスピリットが詰まったデジヴァイス。

 今も無事でいるのか分からないけど。俺は俺にできることを頑張るから。だから輝二も。お互いに、再び会えると信じて。




 純平と泉が起きてきて、四人で朝ごはんを済ませた。その間もトレイルモンは走り、陸地が目の前まで来たところで停車した。

「送ってくれてありがとう」

 アングラーにお礼を言って、列車を降りる。

 陸と海の境は、木と氷のエリアの境でもある。今そこには高い氷の壁がそびえ立っていた。エンジェモンの話では、この壁が氷のエリア全体をドームのように囲い込んでいるらしい。壁は白く曇っていて、中の様子は見通せない。

 純平が氷の壁を叩いた。

「どうやって破る?」

「私の《ウィンドオブペイン》じゃ力不足かしら」

 泉もノックのように叩いて硬さを確かめ、顔をしかめる。俺も真似てみるけど、コンクリートでも叩いてるような感触だ。

「僕にやらせて」

 友樹が力強く言った。

「氷の壁になんて邪魔させない」

「分かった。任せる」

 俺が頷いて、純平と泉も友樹に顔を向けた。

「頼むぜ」

「頑張って、友樹!」

 友樹は一度レールを逆走し、壁から距離を取った。左手に何輪ものデジコードを浮かべる。


「ダブルスピリット・エボリューション!」

「フロストモン!」


 体から噴き出す冷気で、フロストモンの周囲の地面が凍りつく。
「みんな、壁から離れて!」

 線路上から離れるために、純平と泉もデジヴァイスを取り出した。


「スピリット・エボリューション!」

「ブリッツモン!」

「フェアリモン!」


 一度飛んで海の上に移る。飛べない俺は進化しないまま、ブリッツモンに抱えてもらった。

 俺達が避けたのを確認して、フロストモンが両手を地面につく。

 次々凍り付いていく地面を、四足で駆け加速。壁の目前で腰の斧を引き抜いた。

「《ロードオブグローリー》!」

 甲高い音と共に氷の壁が砕け、破片が水晶のように輝いて舞った。

 フロストモンの開けた穴から、寒風が打ち寄せてきた。ガンガンに効かせた冷房を直に浴びているような、数秒で体の芯まで冷え切る寒さだ。

「突入するぞ!」

 ブリッツモンの掛け声で、俺達もフロストモンに続いて穴に飛び込んだ。




 実際に目にするまで、俺は猛吹雪を予想していた。

 だけど、そこは舞う雪の一片ひとひらもない世界だった。地面の雪はでこぼこのアイスバーンになって凍りついている。空は晴天。ただし、色は青でなく灰色。太陽は出ているのに一面灰色の空だ。

 一番おかしいのは気温だった。ブリッツモンに抱えられているのに、靴の裏から冷たさが這い上がってくるのを感じる。一分と経たないのに、既に指先の感覚はなかった。

 風が吹いてきた。そんなに強い風じゃない。そよ風と言ってもいいくらいだ。なのに服を通り抜け、皮膚の内側まで食らいついてくる。息を吸おうとすると鼻の奥が詰まり、せき込んだ。

「寒い……」

 フェアリモンがむき出しのおなかを腕でかばった。目に見える危機感はないのに、低温の空気そのものが体の動きを鈍らせていく。

「おいあれ、見覚えないか!?」

 ブリッツモンが指さした向こうには、巨大なダルマストーブがそびえていた。そうだ、アキバマーケットの中心にあるストーブだ。ということは、そばに町もあるはず。

「よし、あそこに行ってみよう。みんな僕の背中につかまって!」

 フロストモンが四足の姿勢になった。俺達三人は進化を解いてその背に登った。こうしていれば、深い毛が低温から守ってくれる。

 フロストモンは足場の悪い地面を器用に踏みしめて、町へと急いだ。




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久しぶりの四人組です。16話ぶり半年越しですね。拓也達と信也達の話を進めていたらかなりの時間放置してしまいました(汗)今回は状況のおさらいという面が強いです。

氷のエリアの気候は、吹雪は書きあきt……順当な感じになってしまうので、あえて放射冷却&アイスバーンの低気温にしました。場合によってはこっちの方が怖いですし。吹雪の風は強風でなければ怖くないけど、低気温の日は弱風でも凶器です。厚手の上着着てるのに背中に冷気を感じたりしますから……。


あ、サイバースルゥース予約してきましたよ! ついでにドラクエヒーローズも(笑)