第134話 二人に課せられた謎! 灯台からの出立 | 星流の二番目のたな

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デジモンフロンティアおよびデジモンアドベンチャー02の二次創作(小説)中心に稼働します。たまに検証や物理的な制作もします。
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 少年は女神の導きにより悲しき定めを知った。

 少年は男神の導きにより地上に降り立った。

 二人は会うべくして草原で出会う。

 新たな、最期の力は争いの中で生まれねばならない。

 神の望む結末の為に。



 気がついた時には、冷たい床にうつぶせに倒れていた。進化も解けている。

「何だったんだ、今の」

 手をついて体を起こす。確か、敵が残したデジコードをスキャンして、まぶしい光に包まれて……。あれは声、いや、誰かの思考?

「よく分からない言葉だったね」

 振り返るとノゾムと目が合った。

「ノゾムにも聞こえた? のか」

 半分確認で聞いてみると、うんと頷いた。それから顔をしかめる。

「分からない。けど、身に覚えがあるとも思う」

「そうだな。なんとなく察しが付く」

 俺もノゾムと同じように顔をしかめた。

 「女神」と言われてすぐ思い浮かぶのがユノモンだ。あいつが予言した通り、俺はスピリットを壊す自分の特性を知った。

「最初の『少年』は俺のことだな」

「三つ目にでてくる草原で会う二人は僕達だよね」

「ああ」

 ノゾムの推測に相づちを打つ。鞭のデジモンがノゾムを追っていたところに、俺が割り込んで助けた。

 いや、それで正しいのか? あいつをスキャンして流れ込んできたのがさっきの思考だ。風の闘士の記憶とは思えないし、あいつの記憶のはずだ。もしかして。

「鞭のあいつは、俺達が会うようにわざとノゾムを追いかけていたんじゃないか?」

 俺の思いつきに、ノゾムが目を見開く。

 ノゾムを痛めつけ、逃げさせる。それを追い立てて誘導する。

 俺がいると「予測」されている場所へ。

 前にも食らったそのやり口に、俺は無性に腹が立った。床にこぶしを打ちつける。

「あの野郎! まだ俺に干渉してくるのかよ!」

「だ、誰のこと?」

 俺の気迫に身を引きながら、ノゾムが聞いてくる。俺は一度肩の力を抜いた。

「悪い、大声出したりして。ユノモンってデジモンのことだよ。俺が仲間と離れるきっかけみたいな奴で、情報から未来を予測するのが得意だったんだ。やり方がそいつっぽいなって。ノゾムと俺が会うように仕向けたり、こうやって惑わせるメッセージを受け取らせたり。もうデジタマに戻ってるんだけどな」

「デジタマに戻ってるのに、僕達に干渉してきてるの?」

「うーん、多分、今動いてるのはユノモン本人じゃない」

 誰かがユノモンの予測を使って動いている。彼女が死ぬ間際に送ったデジコードから記憶を読み取って。

 そう、確かユノモンはこう言っていた。


『我が伴侶ユピテルモンよ! この身を情報に代え、あなたの元に送ります!』


「ユピテルモン、か」

 ノゾムをデジタルワールドに連れてきたのも、鞭使いの分身を作ったのもユピテルモンだとすれば、説明がつく。さっきの言葉の中にあった「地上に降り立った」「少年」――ノゾムを導いたとかいう「男神」もきっとユピテルモンだろう。

「じゃあ残りの言葉もユピテルモンのものなんだね」

 ノゾムに言われて、俺は謎の言葉に意識を戻した。

「『新たな、最期の力』か。あいまい過ぎていまいち何言ってるか分からないな」

「……信也、新しい力なら」

「うん。分かってた。言いたくなかっただけだ」

 新しい力なら今手に入れたばかりだ。スピリットもないのに進化できる、スーリヤモンの力。

 スピリットに負荷をかけてしまう俺に見合った力で、初戦闘でも面白いように上手く扱えた。

 まるで俺の為に用意されたみたいに、よくできた力。

「『新たな』力っていうのがスーリヤモンのことなら、ユノモンは俺が進化するのを予測していたことになる。分身が襲ってきたのも『争いの中で』進化させるためだったのかも」

「しかもそれは『最期の力』。最後の、じゃなくて最期のって感じが伝わってきたんだ。嫌だな、誰か死ぬみたいで」

 ノゾムが身震いした。俺は握っていたままのデジヴァイスに目を落とす。あれだけ熱かったのに、今は変に冷たく感じる。さっきまでのエネルギーの気配はなかった。

 俺が使ってしまったあの力の正体は何だったんだろう。

 少なくとも分かっているのは、ノゾムと俺が出会ったのも、俺が進化したのも『神の望む結末の為に』用意されたシナリオだということ。


「これからどうするの」

 ノゾムに聞かれて、俺は腕を組んだ。

「そうだな。このまま最初の予定通りノゾムの記憶探しをするか。それとも、俺の仲間の所に戻って事情を洗いざらい話してみるか」

「でも、もしかしたらどっちを選んでも敵の思うつぼなのかもしれない」

 ノゾムの不安はもっともだった。この灯台での出来事と同じように、いつの間にか敵の思い通りに誘導されていくんじゃないか、って。

「それでも俺は、お前の記憶探しを続けたい」

 結論から先に言うと、ノゾムが不思議そうにまばたきした。

「敵がなぜ俺とお前を会わせたがったのか、その目的を探らなきゃ誘導からは逃げられない。だから、お前がどこにいた人間でどうして俺と会わなきゃならなかったのか、それを突き止めよう」

 この決断が敵の思い通りだったとしても構わない。俺が決めたのなら、それは誰かの敷いた道じゃなくて俺の道だと思うから。

 ノゾムも少し考えて、前より引き締まった顔で頷いた。

「分かった。僕も早く自分のこと思い出せるように頑張る」


 二人の結論が揃った時、俺のデジヴァイスが光を放った。

 デジコードが流れ出し、天井の明り取りの窓を抜け、曇天の空へ昇っていく。俺達は思わず立ち上がってそれを見上げた。

 デジコードが全て雲の中に消え、次の瞬間、風で雲が吹き飛んだ。

 部屋の中にも光が差し、久しぶりの青空が見える。結界がエリアを修復しているのか。ただ、完全にはいかず雲が半分くらい残っている。

 それでもデジコードが地上に戻ってくる頃には、あれほどうるさく唸っていた暴風が嘘のようにやんでいた。結界のデジコードは、床の上でまた球の形に戻った。

 結界を置いたまま、俺達は灯台を出た。風のエリアが解放されたことはすぐにエンジェモン達に伝わるだろうし、後処理はやってくれるはずだ。

 海は波も収まり、静かにきらめいている。これなら次の大陸に渡れそうだ。ハンドルを取り付け、跳ね橋を下ろす。橋の床へと一歩踏み出す。

 自分達の足で、この道が進むべき道だと信じて。




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ご予想にもあった通り、鞭使いのあいつはユピテルモンの分身でした。そろそろ疑惑で真っ黒になってしまいそう(苦笑)

スーリヤモンの力とは一体。ノゾムの出自は。二人の謎を解く旅はまだ続きます。


次は拓也視点になります。


※お気に入りブログはいじったり調べたりしてみたんですがいまだに原因が分かりません……。プレビューだと表示されるのに。次回UPするまでに直らなかったら、お気に入りブログの情報を全部ブックマークに移行しようと思います。

(12/8追記 なんだかよく分からないけど直りました(笑)本当に何だったんでしょう……)